スノウチニュース<№240> 令和6年10月


【建築関連統計】
9月の鉄骨系需要量は32万9,400トン(前年同月比1.3%増)
24年度(4~9月)上期の需要量192万5,900トン(前年同期比1.4%減)

国土交通省が10月31日発表した「建築物着工統計調査」による2024年9月着工総面積は8,901千平方メ―トル(前年同月比3.2%減)となり、前年同月比では11ヵ月連続減となった。都市部再開発や物流施設などの需要もあるものの、オフィスビルや商業施設の需要減もあって着工面積の低水準が続いている。
建築主別は、▽公共建築物が376千平方メートル(同14.6%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽民間建築物は8,525千平方メートル(同2.7%減)となり、同11ヵ月連続減となった。
用途別は、▽居住建築物は5,421千平方メートル(同2.9%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,480千平方メートル(同3.8%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が3,279千平方メートル(同2.4%増)の微増となり、同1ヵ月で増加となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が30千平方メートル(同70.9%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,601千平方メートル(同7.8%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽木造(W造)が3,898千平方メートル(同2.4%減)となり、同33ヵ月連続減となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は32万7,900トン(前年同月比2.4%増)の微増となり、同1ヵ月で増加となった。▽SRC造は1,500トン(同70.9%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。鉄骨系合計での前月比16.1%増の32万9,400トン(同1.3%増)の微増となった。
24暦年(1~9月)の鉄骨需要量は、▽S造が282万4,500トン(前年同期比0.5%増)、▽SRC造が4万3,500トン(同51.2%減)となり、鉄骨系合計では286万8,000トン(同1.0%減)になった。
24年度(4~9月)上期の鉄骨需要量は、▽S造が189万2,400トン(前年同期比0.5%減)、▽SRC造が3万3,500トン(同33.8%減)となり、鉄骨系合計では192万5,900トン(同1.4%減)となった。

23年9月-24年9月 鉄骨系需要量の推移

年/月 S造
(TON)
前年比
(%)
SRC造
(TON)
前年比
(%)
鉄骨造計
(TON)
前年比
(%)
2023年9月 320,100 -0.7 5,200 40.6 325,300 0.0
10月 401,550 16.3 8,050 -24.8 409,600 15.1
11月 277,400 -19.7 3,950 -50.8 281,350 -20.4
12月 320,600 0.6 4,100 -42.5 324,700 0.3
2024年1月 317,500 6.2 3,200 -84.1 320,700 0.5
2月 297,200 -13.4 2,750 -5.4 299,950 -13.3
3月 317,300 18.7 4,050 -63.9 321,350 15.4
2024年度4月 379,900 -2.9 7,700 -2.5 387,600 -2.9
5月 275,900 -4.0 6,750 -10.1 28,260 -4.2
6月 313,800 4.9 4,900 -56.0 318,700 2.7
7月 321,600 2.5 2,450 -77.4 324,050 -0.2
8月 273,400 -5.9 10,200 27.6 283,600 -5.0
9月 327,900 2.4 1,500 -70.9 329,400 1.3
24暦年(24年1月-9月) 2,824,500 0.5 43,500 -51.2 2,868,000 -1.0
24年度(24年4月-9月) 1,892,400 -0.5 33,500 -33.8 1,925,900 -1.4

 

(国土交通省調べ)

 

日建連の9月総受注額1兆6,844億円(前年同月比21.9%減)
民間工事は1兆1,845億0,100万円(同25.4%減)

日本建設業連合会(日建連)が10月28日に発表した会員企業92社の2024年9月分の受注工事総額は1兆6,843億9,600万円(前年同月比21.9%減)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりの減少となった。国内工事が1兆6,883億8,900万円(同19.7%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。
民間工事が1兆1,845億0,100万円(同25.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。官公庁工事が4,973億5,600万円(同1.0%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。▽海外工事がマイナス39億9,300万円(同107.5%減)の超大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。
民間工事の1兆1,845億0,100万円のうち、▽製造業が2,594億5,800万円(同3.4%増)の微増となり、同1ヵ月で増加。▽非製造業9,250億4,300万円(同30.8%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少なった。官公庁工事の4,973億5,600万円のうち、▽国の機関が3,782億4,700万円(同36.9%増)となり、同2ヵ月連続増。▽地方の機関が1,191億0,900万円(同44.8%減)の大幅減となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽その他が65億3,200万円(同71.5%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。
2024年度(4~9月)の受注総工事額が8兆1,607億2,900万円(前年上期比3.2%増)となった。▽民間工事が5兆8,923億9,500万円(同3.6%増)、▽官公庁工事が1兆9,367億7,500万円(同0.7%増)、▽海外工事が2,842億3,500万円(同13.1%増)となった。
なお、2024暦年(1~9月)の受注総工事額が14兆2,696億4,000万円(前年同期比6.8%増)となった。▽民間工事が9兆7,691億円(同5.3%増)、▽官公庁工事が3兆9,375億9,000万円(同7.9%増)、▽海外工事が5,086億8,100万円(同36.9%増)となった。
9月の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道が969億0,600万円(前年同月比52.4%増)となり、前年同月比では2ヵ月連続増。▽東北が1,105億5,000万円(同5.4%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少。▽関東が8,698億7,600万円(同28.4%減)となり、同2ヵ月連続減。▽北陸が753億3,800万円(同58.1%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。
▽中部が1,076億6,600万円(同4.4%増)の微増となり、同3ヵ月連続増。▽近畿が1,976億2,200万円(同30.6%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少。▽中国が858億1,500万円(同13.1%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少。▽四国が268億3,200万円(同31.2%増)となり、同5ヵ月連続増。▽九州が1,177億7,500万円(同22.8%減)となり、同5ヵ月連続減となった。



9月の粗鋼生産量は662万トン(前年同月比5.8%減)
8月の普通鋼建築用受注量36.5万トン(前年同月比12.0%減)

日本鉄鋼連盟は10月22日に発表した2024年9月の銑鉄生産は480.2万トン(前年同月比5.6%減)となり、前年同月比では7ヵ月連続減。粗鋼生産は662.3万トン(同5.8%減)となり、同7ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が479.4万トン(同6.8%減)となり、同7ヵ月連続減少。▽電炉鋼が182.9万トン(同3.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が509.8万トン(同5.2%減)となり、同7ヵ月連続減。▽特殊鋼が152.5万トン(同7.7%減)となり、同7ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は596.6万トン(同6.0%減)となり、同7ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は467.6万トン(同5.5%減)となり、同7ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は129.0万トン(同8.0%減)となり、同7ヵ月連続少となった。
なお、8月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が36万5,308トン(前年同月比12.0%減)。うち▽非住宅が25万7,108トン(同15.7%減)となり、▽住宅が10万8,199トン(同1.8%減)となった。
24年度(4~8月)の用途別受注量では、▽建築用が200万7,297トン(前年同期比5.9%減)。うち▽非住宅が139万8,025トン(同9.3%減)。▽住宅が60万9,272トン(同3.1%増)となった。
23暦年(1~8月)の用途別受注量では、▽建築用が327万0,050トン(前年同期比6.1%減)。うち▽非住宅が226万6,066トン(同7.2%減)。▽住宅が100万3,984トン((同3.5%減)なった。



8月の溶接材料出荷量1万3,163トン(前年同月比21.3%減)
24年度(4~8月)の総出荷量7万5,702トン(前年同期比10.0%減)

日本溶接材料工業会が発表した2024年8月の溶接材料出荷量が1万3,163トン(前年同月比21.3%減)のとなり、前年同月比では5ヵ月連続減となった。
出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が5,275トン(同26.7%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が4,831トン(同9.4%減)となり、同1ヵ月で減少。▽被覆溶接棒が1,200トン(同37.2%減)の大幅減となり、同13ヵ月連続減。その他を含む出荷量計では1万3,163トン(同21.3%減)となった。
24年度(4月~8月)の出荷量は、▽SWが3万2,853トン(前年同期比6.9%減)、▽FCWが2万6,418トン(同5.2%減)、▽溶接棒が7,036トン(同29.1%減)となり、総出荷量は7万5,702トン(同10.0%減)となった。24暦年(1月~8月)の出荷量は、▽SWが5万4,580トン(前年同期比2.2%減)、▽FCWが4万3,882トン(同1.6%減)、▽溶接棒が1万2,242トン(同27.7%減)となり、総出荷量は12万6,344トン(同6.3%減)となった。
財務省の貿易統計による8月の▽輸出量は2,266トン(同18.6%減)となり、同3ヵ月連続減。▽輸入量は4,295トン(同17.8%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
24年度(4~8月)の輸出量は8,806トン(同19.0%減)、輸入量は1万8,915トン(同7.4%減)となった。24暦年(1~8月)の輸出量は1万6,554トン(前年同期比14.2%減)、輸入量3万3,178トン(同12.4%減)となった。

23年8月-24年8月 溶接材料月別実績表

出荷量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆
溶接棒
前年比
合 計 前年比
2023年度 8 7199 13.2 5331 ▼3.1 1910 ▼11.3 16726 1.4
9 7608 ▼5.0 5906 ▼0.7 2085 ▼12.1 17802 ▼6.3
10 7443 1.5 5639 ▼1.5 1723 ▼21.2 17083 ▼4.7
11 7416 ▼2.8 5782 ▼0.7 1738 ▼26.9 17071 ▼6.5
12 7395 4.6 5702 6.1 1712 ▼22.3 16722 ▼2.0
2024年 1 6643 5.7 5348 0.8 1698 ▼28.7 16020 ▼1.0
2 7228 1.0 5816 9.1 1779 ▼24.0 16746 ▼1.3
3 7856 10.8 6300 3.3 1729 ▼24.2 17876 1.7
4 6410 ▼4.7 5464 ▼3.5 1503 ▼17.0 15384 ▼6.0
5 6605 2.1 5397 ▼3.7 1773 ▼10.0 15780 ▼2.1
6 7546 ▼0.1 5156 ▼12.2 1290 ▼38.5 15363 ▼13.4
7 7017 ▼4.2 5570 3.1 1270 ▼40.4 16012 ▼6.6
8 5275 ▼26.7 4831 ▼9.4 1200 ▼37.2 13163 ▼21.3
2024暦年(1~8月) 54580 ▼2.2 43882 ▼1.6 12242 ▼27.7 126344 ▼6.3
2024年度(4~8月) 32853 ▼6.9 26418 ▼5.2 7036 ▼29.1 75702 ▼10.0

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
「東京海上ビルディング計画」は竹中・大林・清水・鹿島・戸田JV
S造・W・SRC造、地下3階・地上20階、延床12.4万平米

東京海上HDと東京海上日動火災保険は、「東京海上ビルディング計画」の概要をまとめた。同ビル計画地(千代田区丸の内1-6-1)は、新丸ビル西側に隣接し、行幸通りに面した敷地面積1万0,147平方メートル(高さ107メートル)の新・本店ビルとなる。
建築規模は、S造・W造(地上部)・SRC造(地下部)、地下3階・地上20階・塔屋2層建て、延べ床面積約12万4,454平方メートルのハイブリット構造である。地上柱の52本のうち、W造が40本(約77%を占める)使用する国内最大級の木質高層ビルになる。
設計をレンゾ・ピアノ氏が主宰するRPBW社(レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ)と三菱地所設計が担当している。施工は竹中工務店・大林組・清水建設・鹿島・大成建設・戸田建設JVが担当。2025年3月に着工し、28年8月の竣工を目指す。
 レンゾ・ピアノ氏は、1998年にプリツカー賞を受賞した世界的な建築家で、日本では関西国際空港第1ターミナルビルなどを担当している。新・本店ビルは、木の柱と梁でできたビルをガラスのカーテンウオールで覆ったような外観が特徴。床の構造材にCLT(直交集成板)を採用するなど、可能な限り多くの木材を利用する。
 木材利用により、建設での二酸化炭素(CO2)排出量を同規模のビルと比べて3割程度の削減。高効率設備や地域冷暖房、再生可能エネルギーも導入して省エネルギー化に貢献する。屋上には緑豊かな庭園を整備する。
旧本館ビルは、建築家・前川國男氏が設計し、1974年に完成した唯一の超高層ビル。当時、皇居を望む立地の景観問題もあり、計画段階から「美観論争」が起こった建物だった。


【時論・公論】
輸入鉄骨の実態調査実施

2023度の鉄骨需要量は14年ぶりに400万トンを下回った。24年度4~8月累計では159.6万トンベースで、今年度も同水準になると思われる。そうした中、輸入鉄骨の増加は鉄骨ファブ業界に少なからず影響を及ぼす。
かつての輸入鉄骨問題は、1988年度の鉄骨需要1,000万トン超辺りから韓国の輸入鉄骨から始まり、90年代では大手ゼネコンが韓国や中国・タイなどの鉄骨を積極的に輸入する一方、国内商社や鉄骨ファブによる韓国・中国の現地企業との合弁工場で製作した鉄骨輸入も含め、一時期<輸入鉄骨問題>として議論が沸騰した。
鉄骨需要量が年ごとに減少するとともに輸入鉄骨も鈍化し、国内需要に影響を及ぼすこともなく推移してきたが、さる9月24日付「鉄鋼新聞」1面トップの大見出しに<広がる輸入鉄骨への〝警戒感〟>とし、サブタイトルには<コストメリットで採用拡大、サプライチェーン毀損のおそれ、実態把握が急務>と、輸入鉄骨の報道が躍った。
同紙によれば、<鉄骨の輸入量は数十万トン規模ともされるが、明確な通関統計がなく実態を把握しにくいことも不安感をあおる要因となっている>と指摘する。一方、鋼材流通界でも大阪市内の大手鋼材加工Y社が<鉄骨ファブの保護と育成に向け、輸入鉄骨への対抗策を打ち出す>とし、Y社が鉄鋼メーカー、鉄骨ファブと連携してコスト競争力などを強化し、「国内のサプライチェーン全体で輸入の対抗に取り組みたい」(Y社社長)と語っている。
鉄鋼新聞の報道や鋼材加工Y社の対応策などから輸入鉄骨が国内ファブの影響を受けている。粗鋼生産量世界1位中国(23年は10億1,908万トン)、3位日本(同8,699万トン)、6位韓国(同6,667万トン)は、いずれも鉄骨生産の多い国。特に中国は世界の粗鋼生産の半分以上を占めており、鉄鋼製品の輸出には積極的である。
中国や韓国など海外ファブでも国土交通省の工場認定Hグレードを取得しているが、今まではショッピングセンターなど低層建築向けで、高層建築向けの実績は乏しかった。大手ファブM社のF役員は「(海外ファブは)これからは高層・超高層向けにも積極的に輸出してくることも考慮する必要がある。だが、鋼材・加工単価は大幅に安価だが、品質と精度が問題だ。手直しを国内ファブに依存すれば、一概にメリットがあるとは言えない」と語っている。
日本建築業連合会(日建連)は10月16日、<木造・木質建築プロジェクト一覧>を発表した。建築基準法改正以降に建設された298物件で、木造建築の進化と高層化の実態が分かる貴重な資料である。財務省の貿易統計に輸入鉄骨統計がないなら実態把握のため、日建連による<海外鉄骨導入の実態調査>がほしいものである。

【加藤 敏雄】