スノウチニュース<№216> 令和4年10月
【鉄骨需要月別統計】
8月鉄骨需要量は35万6,450トン(前年同月比9.3%増)
22年度(4~8月)は200万9,550トン(前年同期比5.2%増)
国土交通省が9月30日発表した「建築物着工統計調査」の2022年8月着工総面積は10,418千平方メ―トル(前年同月比9.2%増)となり、前年同月比では3ヵ月連続増となった。10,000千平方メートル超えも同3ヵ月連続になった。
▽建築主別は、▽公共建築物が319千平方メートル(同32.9%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽民間建築物は10,099千平方メートル(同11.5%増)となり、同3ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,447千平方メートル(同0.6%増)の微増となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。▽非居住建築物は3,971千平方メートル(同27.0%増)となり、同3ヵ月連続増となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が3,501千平方メートル(同8.6%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽SRC造が127千平方メートル(同73.0%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
一方、▽RC造が2,320千平方メートル(同51.3%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。▽W造が4,373千平方メートル(同5.4%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は35万0,100トン(前年同月比8.6%増)となり、同3ヵ月連続増となった。SRC造は6,350トン(同73.0%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。鉄骨造の合計では前月比20.3%減の35万6,450トン(前年同月比19.3%増)となった。
22暦年(1~8月)の需要量は、S造が298万4,600トン(前年同期比3.5%増)、SRC造が7万8,700トン(同67.8%増)となり、鉄骨造の合計では306万3,300トン(同4.5%増)となった。
なお、22年度(4~8月)の需要量は、S造が195万4,500トン(前年同期比4.0%増)、SRC造が5万5,050トン(同87.9%増)となり、鉄骨造の合計では200万9,550トン(同5.2%増)となった。
21年8月-22年8月 鉄骨需要量の推移
年/月 | S造(TON) | 前年比(%) | SRC造(TON) | 前年比(%) | 鉄骨造計(TON) | 前年比(%) |
8 | 322,500 | 10.7 | 3,700 | 37.0 | 326,200 | 11.9 |
9 | 342,700 | 1.7 | 8,950 | -29.0 | 351,650 | 0.7 |
10 | 530,900 | 61.7 | 11,000 | 105.3 | 541,900 | 65.7 |
11 | 346,400 | 15.4 | 7,050 | -50.5 | 353,450 | 12.5 |
12 | 427,400 | 26.5 | 18,200 | 61.4 | 445,600 | 27.6 |
2022/1 | 347,700 | 9.2 | 7,250 | 50.6 | 354,950 | 9.9 |
2 | 331,400 | 7.5 | 11,500 | 15.9 | 342,900 | 7.8 |
3 | 351,300 | -6.7 | 5,050 | 73.2 | 356,350 | -6.1 |
4 | 403,100 | 4.0 | 14,700 | 144.8 | 417,800 | 6.1 |
5 | 341,400 | -11.9 | 15,050 | 178.2 | 356,450 | -9.3 |
6 | 424,700 | 3.0 | 6,500 | -25.6 | 431,200 | 2.4 |
7 | 434,900 | 17.5 | 12,300 | 126.0 | 447,200 | 19.1 |
8 | 350,100 | 8.6 | 6,350 | 73 | 356,450 | 9.3 |
暦年計(22/1~8) | 2,984,600 | 3.5 | 78,700 | 67.8 | 3,063,300 | 4.5 |
年度計(22/4~8) | 1,954,500 | 4.0 | 55,050 | 87.9 | 2,009,550 | 5.2 |
(国土交通省調べ)
【建築関連統計】
日建連8月総受注額1兆0,482.5億円(前年同月比21.1%増)
民間工事8,371億1,600万円(前年同月比36.0%増)
日本建設業連合会(日建連)が9月28日に発表した会員企業94社の2022年8月受注工事総額は1兆0,482億5,100万円(前年同月比21.1%増)となり、1ヵ月で1兆円台に戻り、前年同月比では5ヵ月連続増となった。うち民間工事が8,371億1,600万円(同36.0%増)の大幅増となり、同5ヵ月連続増となった。官公庁工事が1,884億0,400万円(同13.1%減)となり、同4ヵ月連続減となった。
国内工事が1兆0,262億9,100万円(同22.8%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。民間工事の8,371億1,600万円のうち、▽製造業が3,005億0,900万円(同61.8%増)の大幅増となり、同8ヵ月連続増になった。▽非製造業が5,366億0,700万円(同24.8%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
官公庁工事の1,884億0,400万円のうち、▽国の機関が1,291億1,200万円(同13.4%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽地方の機関が592億9,200万円(同12.6%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽その他が7億7,100万円(同76.3%減)の大幅減となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽海外工事が219億6,000万円(同26.8%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。
22年度(4~8月)の受注工事総額が5兆4,068億1,500万円(前年同期比16.8%増)となり、うち▽民間工事額が3兆9,549億5,400万円(同26.7%増)、▽官公庁工事が11,352億7,000万円(同18.1%減)、▽海外工事が3,043億0,400万円(同175.5%増)となった。
一方、22暦年(1~8月)の受注工事総額10兆7,965億4,800万円(前年同期比1.1%増)となり、うち▽民間工事額が7兆8,902億3,700万円(同9.7%増)、▽官公庁工事が2兆4,312億0,400万円(同23.2%減)、▽海外工事が4,551億9,300万円(同54.2%増)となった。
8月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が586億5,500万円(前年同月比73.1%増)の大幅増となり、前年同期比では3ヵ月ぶりの増加となった。▽東北が1,576億0,200万円(同342.6%増)の3倍超の増加となり、同4ヵ月連続増となった。▽関東が4,424億2,400万円(同15.1%増)となり、同1ヵ月で増加となった。▽北陸が231億0,500万円(同12.1%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
▽中部が889億9,900万円(同2.2%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽近畿が1,470億1,300万円(同5.3%減)の微減となり、同1ヵ月で減少となった。▽中国が343億9,500万円(同50.6%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。▽四国が115億9,700万円(同43.7%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽九州が625億0,200万円(同12.7%減)となり、同4ヵ月連続減となった。
*
8月粗鋼生産733.9万トン(前年同月比7.4%減)
7月普通鋼建築用46.5万トン(前年同月比4.0%減)
日本鉄鋼連盟は9月22日に発表した2022年8月の銑鉄生産は541.8万トン(前年同月比8.5%減)となり、前年同月比では8ヵ月連続減となった。粗鋼生産は733.9万トン(同7.4%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が557.7万トン(同8.6%減)となり、同8ヵ月連続減。▽電炉鋼が176.2万トン(同3.5%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が561.0万トン(同7.1%減)となり、同8ヵ月連続減。▽特殊鋼が172.9万トン(同8.4%減)となり、同7ヵ月連続減少となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は638.0万トン(同8.9%減)となり、同8ヵ月連続減。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は498.4万トン(同8.4%減)となり、同3ヵ月連続減。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は139.5万トン(同10.5%減)となり、同7ヵ月連続減となった。
一方、7月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用が46万5,124トン(前年同月比4.0%減)。うち▽非住宅が34万3,756トン(同1.1%減)、▽住宅が12万1,357トン(同11.4%減)となった。
なお、22年度4~7月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用が198万4,957トン(前年同期比3.1%減)。うち▽非住宅が148万3,284トン(同3.0%減)となり、▽住宅が50万1,673トン(同3.3%減)となった。
*
7月溶接材料の出荷量1万7,498トン(前年同月比1.9%増)
22年度(4~7月)総出荷量6万8,593トン(前年同期比5.9%減)
日本溶接材料工業会が発表した2022年7月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、▽生産量は1万7,444トン(前年同月比3.0%減)の前年同月比で4ヵ月連続減。▽出荷量は1万7,498トン(同1.9%増)の微増となり、同4ヵ月ぶりの増加。▽在庫量は1万7,583トン(同5.9%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,347トン(同4.4%減)の同4ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,451トン(同7.0%減)となり、同4ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が1,994トン(同10.1%減)となり、同4ヵ月連続減。その他を含む生産量計では1万7,444トン(同3.0%減)となった。
出荷量の主な品種は▽SWが6,903トン(同6.1%減)の同4ヵ月連続減。▽FCWが5,984トン(同7.7%減)の同4ヵ月ぶりの増加。▽溶接棒が1,977トン(同5.9%減)の同1ヵ月で減少。その他を含む出荷量計では1万7,498トン(同1.9%増)の微増となった。
在庫量の主な品種は▽SWが6,794トン(同14.9%増)となり、同6ヵ月連続増。▽FCWが5,792トン(同2.3%減)の同4ヵ月ぶりの減少。▽溶接棒が2,946トン(同21.9%増)の同10ヵ月連続増。その他を含む在庫量計では1万7,583トン(同5.9%増)となった。
22年度(4~7月)の総生産量は6万8,753トン(前年同期比5.1%減)となり、総出荷量では6万8,593トン(同5.9%減)となった。一方、22暦年(1~7月)の総生産量は12万3,762トン(前年同期比1.0%増)となり、総出荷量は12万1,788トン(同1.8%減)となった。
なお、財務省の貿易統計による6月の輸出量は3,364トン(前年同月比21.9%増)となり、輸入量は5,988トン(同4.5%減)となった。
21年7月-22年7月 溶接材料月別実績表
生産量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
2021年度 | 7 | 7,688 | 51.0 | 5,861 | ▼5.7 | 2,217 | ▼0.4 | 17,975 | 11.1 |
8 | 6,372 | 25.8 | 4,586 | ▼6.8 | 2,406 | 49.0 | 15,365 | 11.1 | |
9 | 7,512 | 31.4 | 6,133 | ▼0.8 | 2,404 | 35.4 | 18,148 | 15.3 | |
10 | 7,822 | 11.8 | 6,430 | 10.3 | 2,471 | 43.0 | 18,810 | 9.9 | |
11 | 7,922 | 5.2 | 6,390 | 9.1 | 2,419 | 31.1 | 19,137 | 9.8 | |
12 | 7,490 | 12.9 | 6,017 | 13.6 | 2,396 | 44.3 | 18,249 | 14.0 | |
2022年 | 1 | 7,060 | 17.1 | 4,866 | ▼9.0 | 2,141 | 18.7 | 16,564 | 7.4 |
2 | 7,592 | 12.0 | 6,011 | 6.5 | 2,236 | 12.8 | 18,387 | 8.9 | |
3 | 8,376 | 13.6 | 7,162 | 23.7 | 2,339 | 8.4 | 20,053 | 12.6 | |
2022年度 | 4 | 7,017 | ▼5.5 | 5,910 | ▼2.3 | 1,839 | ▼14.3 | 16,997 | ▼7.1 |
5 | 7,022 | ▼4.2 | 5,245 | ▼1.1 | 1,648 | ▼17.4 | 16,178 | ▼4.4 | |
6 | 7,432 | ▼6.5 | 6,208 | ▼4.3 | 1,894 | ▼22.1 | 18,139 | ▼5.9 | |
7 | 7,347 | ▼4.4 | 5,451 | ▼7.0 | 1,994 | ▼10.1 | 17,444 | ▼3.0 | |
2022年度 (4~7月) |
計 | 28,818 | ▼5.2 | 22,814 | ▼3.7 | 7,375 | ▼16.1 | 68,758 | ▼5.1 |
2022暦年 (1~7月) |
計 | 51,846 | 2.5 | 40,853 | 0.9 | 14,091 | ▼4.3 | 123,762 | 1.0 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
出荷量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
2021年度 | 7 | 7,353 | 48.6 | 5,557 | ▼6.6 | 2,101 | 2.8 | 17,173 | 7.8 |
8 | 6,834 | 28.8 | 5,535 | 3.2 | 2,345 | 22.5 | 16,871 | 12.3 | |
9 | 8,231 | 29.1 | 6,063 | ▼0.4 | 2,154 | 6.2 | 18,815 | 13.5 | |
10 | 7,377 | 9.9 | 6,320 | 9.8 | 2,373 | 24.9 | 18,118 | 7.2 | |
11 | 7,460 | 4.0 | 5,935 | 0.1 | 2,295 | 26.5 | 18,290 | 6.3 | |
12 | 7,738 | 8.3 | 6,220 | 10.8 | 2,348 | 22.4 | 18,614 | 9.4 | |
2022暦年 | 1 | 7,271 | 4.9 | 5,540 | ▼5.8 | 2,069 | 12.6 | 17,387 | 2.0 |
2 | 7,039 | 2.8 | 5,951 | 4.6 | 2,121 | 6.7 | 17,544 | 4.1 | |
3 | 7,915 | 8.9 | 6,149 | 13.8 | 1,845 | ▼3.3 | 18,264 | 5.7 | |
2022年度 | 4 | 7,190 | ▼20.1 | 5,633 | ▼14.1 | 1,883 | ▼24.6 | 16,806 | ▼14.7 |
5 | 6,796 | ▼2.0 | 5,521 | ▼5.9 | 1,881 | ▼12.3 | 16,289 | ▼4.3 | |
6 | 7,330 | ▼8.2 | 5,693 | ▼10.2 | 2,366 | 6.8 | 18,000 | ▼5.2 | |
7 | 6,903 | ▼6.1 | 5,984 | 7.7 | 1,977 | ▼5.9 | 17,498 | 1.9 | |
2022年度 (4~7月) |
計 | 28,219 | ▼6.8 | 22,831 | ▼6.1 | 8,107 | ▼9.5 | 68,593 | ▼5.9 |
2022暦年 (1~7月) |
計 | 50,444 | ▼1.7 | 40,471 | ▼2.0 | 14,142 | ▼3.8 | 121,788 | ▼1.8 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
三菱地所「天神1-7計画(複合ビル)」
S・SRC造20階建て、延床7.4万平米
三菱地所は、昨年8月に閉館した商業施設「イムズ跡地」(福岡市中央区天神1-326-1)に計画している「天神1-7計画」 (敷地面積約4,640平方メートル)は、福岡市の容積率緩和制度<天神ビッグバンボーナス>の認定を受け、オフィスやホテル、商業施設などで構成する複合ビルを建設する。
複合ビル規模は、S造・SRC造、地下4階・地上20階・塔屋1層建て、延べ床面積約7万4,020メートル。地上高さ91メートル。地下3、4階が駐車場と機械室、地下2階~地上2階が商業施設、地上1~3階がホテル、3~5階がオフィス、6階が機械室、7~15階がオフィス、16~20階がホテルとなる。
設計は三菱地所設計が担当。既存施設の解体工事は大成建設によって進めており、23年7月の着工、26年3月の完成を予定している。
デザイン性に優れた複合ビルとして都市と自然が調和した都市空間をめざし、建物外装は三菱地所も出資する総合木材会社の「MEC Industry」の九州産材のCLTパネルと植栽を有機的に配置したデザインとする。CLT使用量は450立方メートル以上を想定する。
渡辺通りに面する敷地南西側のビル低層部にV字の柱と吹き抜け空間を設ける。敷地南側の地上と敷地西側の地下にそれぞれ広場を設け、敷地北東側にはシンボリックな緑化柱を配した地上広場を整備し、敷地南側に500平方メートルの地上広場、敷地西側に300平方メートルの地下広場を設ける。
【時論・公論】
企業は誰のものか!
新型コロナの感染拡大は鉄骨ファブリケーターにおいても厳しい状況が続いている。鉄骨ファブ業界が幾度も体験した不況とは異なり、コロナ禍で大臣認定工場の倒産は皆無だ。これは鉄骨ファブ業界が成熟した証でもある。
昨年11月、東日本地区のSグレード・ファブのF社がM&AによってICT(情報通信技術)ソリューションの大手N社に株式の3分の2を売却し子会社化した。創業95年の有力な鉄骨ファブがなぜN社の傘下に入ったのか。かねてからF社のK社長は「モノ言う株主か、企業維持・発展に寄与する社員かと言えば、答えは社員」と言っていた。
K社長は、鉄鋼新聞のインタビューで「これまで経営と資本の分離を図ってきた。株主政策は企業にとって重要事項だ。数年前から株主サイドと将来の経営と資本のあり方を協議してきた」と語り、M&Aにより企業の長期にわたる経営維持や成長への体制づくりと「デジタル推進へのIT技術ノウハウと人材活用」への布石のようだった。
F社は初代社長から銀行マンの娘婿社長を経て、3代目はプロパー社員のN社長に代わって組織刷新・業容拡大する。2015年3月に同じくプロパーのK氏が4代目社長に就任。K社長は同族経営の中で培われながらも管理職・東京支店長・役員を経る中で、前N社長のオープンな経営手腕を継承しながらも創業家(株主)と従業員とのバランスを保ちながら新たな模索をしていた結果が、N社の傘下でK社長にとっての経営戦略を見出したようだ。
そこで、<企業とは誰のものか!>を考察。企業とは株主・経営者・社員の構成だが、中小規模企業の多くは株主イコール経営者である。F社は大株主の創業家に後継者が居なく経営にタッチしなくなった。K社長のモットは、株主・経営者・社員<三位一体>と言い「経営者と社員は両輪だが、業績を上げる原動力は社員」と断言する。
昨今、大企業の経営者に問われているのは、利益分配を社員待遇や投資ではなく、株主に重点還元するといった<株主資本主義>が蔓延しつつある。かつて中小企業社長が<会社の天井裏の鼠の糞もワシのもの>といった企業を私物化する人はさすがに居ないが、利益が上がれば<株主還元>が優先し、経営状態が悪化すれば社員の待遇に及び、さらに赤字経営になれば給与減額や人員整理につながる。これが株主資本主義なのである。
非上場A社・O会長が日刊工業新聞で「株主、経営者、社員が一体になっている会社が強い。上場すると株主は経営者に任せ、経営者は株主の代理人の構図が強まり、社員との関係が弱まる。(中略)モノづくりが強くなったのは経営者と社員が一体になったからだ」と語っている。鉄骨ファブF社・K社長の<社員のもの>は正解である。
【加藤 文雄】