スノウチニュース<№204> 令和3年10月


【鉄骨需要月別統計】
8月鉄骨需要量は32万6,200トン(前年同月比11.9%増)
21年1~8月は293万0,400トン(前年同期比8.6%増)

国土交通省が9月30日発表した「建築物着工統計調査」の2021年8月着工総面積は9,537千平方メ―トル(前年同月比1.3%増)の微増となり、前年同月比では6ヵ月ぶりに10,000千平方メートル割れとなった。
▽建築主別は、▽公共建築物が476千平方メートル(同5.9%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽民間建築物は9,061千平方メートル(同1.1%増)の微増ながらも同6ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,410千平方メートル(同11.4%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は3,127千平方メートル(同14.6%減)となり、同6ヵ月ぶりの減少となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が3,225千平方メートル(同10.7%増)となり、同8ヵ月連続増となった。▽SRC造が74千平方メートル(同36.4%増)となり、同3ヵ月連続増となった。
一方、▽RC造が1,534千平方メートル(同33.0%減)となり、同1ヵ月で大幅減となった。▽W造が4,624千平方メートル(同12.8%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は32万2,500トン(前年同月比10.7%増)となり、同8ヵ月連続増となった。SRC造は3,700トン(同36.4%増)となり、同3ヵ月連続増となった。鉄骨造の合計では前月比13.1%減の32万6,200トン(前年同月比11.9%増)となった。
なお、21年(1~8月)では、S造288万3,500トン(前年同期比9.0%増)、SRC造4万6,900トン(同12.3%減)となり、鉄骨造の合計では293万0,400トン(同8.6%増)となった。
21年度(4~8月)では、S造188万0,200トン(前年同期比9.3%増)、SRC造2万9,300トン(同12.5%減)となり、鉄骨造の合計では190万9,500トン(同8.9%増)となった。

20年8月-21年8月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
8 291,400 -30.8 2,700 7.8 294,100 -30.6
9 336,800 -3.3 12,550 64.8 349,350 -1.8
10 328,400 -10.7 5,350 -2.9 333,750 -1.8
11 300,000 -14.5 14,300 208.6 314,300 -11.6
12 338,000 -16.1 11,300 109.7 349,300 -14.4
2021/1 318,300 19.6 4,800 -10.0 323,100 19.0
2 308,300 2.8 9,900 -4.9 318,200 2.5
3 376,700 3.6 2,900 -41.4 379,600 2.9
4 387,600 8.3 6,000 -39.7 393,600 8.5
5 387,600 10.1 5,400 -62.6 393,000 7.4
6 412,400 13.0 8,750 106.2 421,150 14.1
7 370,100 4.5 5,450 158.8 375,550 5.4
8 322,500 10.7 3,700 36.4 326,200 11.9
暦年計(21/1~8) 2,883,500 9.0 46,900 -12.3 2,930,400 8.6
年度計(21/4~8) 1,880,200 9.3 29,300 -12.5 1,909,500 8.9

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連8月総受注額約8,657億円(前年同月比1.3%減)
民間工事は6,156億2,200万円(前年同月比6.9%減)

日本建設業連合会(日建連)が9月28日に発表した会員企業95社の2021年8月受注工事総額は8,657億4,600万円(前年同月比1.3%減)となり、前年同月比で2ヵ月連続減となった。うち民間工事が6,156億2,200万円(同6.9%減)となり、同8ヵ月ぶりの減少となった。官公庁工事が2,168億8,000万円(同6.0%増)となり、同1ヵ月で増加となった。
国内工事が8,357億5,200万円(同4.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。民間工事の6,156億2,200万円のうち、▽製造業が1,856億8,200万円(同94.2%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となった。▽非製造業が4,299億4,000万円(同24.0%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。
官公庁工事の2,168億8,000万円のうち、▽国の機関が1,490億1,800万円(同2.3%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽地方の機関が678億6,200万円(同30.2%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽その他が32億5,000万円(同38.4%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽海外工事が299億9,400万円(同364.4%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。
21年度4~8月の受注工事総額が4兆6,305億0,100万円(前年同期比10.3%増)となり、▽民間工事額が3兆1,215億4,900万円(同9.4%増)、▽官公庁工事が1兆3,862億3,600万円(同9.5%増)、▽海外工事が1,104億6,100万円(同95.7%増)となった。
一方、8月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が338億9,400万円(前年同月比39.8%増)となり、前年同期比では1ヵ月で増加となった。▽東北が356億1,200万円(同49.8%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。▽関東が3,844億8,000万円(同0.5%減)の微減となり、同8ヵ月ぶりの減少となった。▽北陸が206億1,400万円(同37.0%減)の大幅減となり、同4ヵ月連続減となった。
▽中部が910億0,400万円(同28.5%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽近畿が1,551億6,600万円(同11.8%減)となり、同2ヵ月で減少となった。▽中国が228億4,100万円(同54.2%減)の大幅減となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。▽四国が205億8,700万円(同97.5%増)の大幅増となり、同4ヵ月連続増となった。▽九州が715億5,700万円(同44.2%増)の大幅増となり、同4ヵ月連続増となった。


8月粗鋼生産792万トン(前年同月比22.9%増)
7月普通鋼建築用48.5万トン(前年同月比2.1%減)

日本鉄鋼連盟は9月22日に発表した2021年8月の銑鉄生産は591.9万トン(前年同月比24.1%増)となり、前年同月比で6ヵ月連続増となった。 粗鋼生産は792.4万トン(同22.9%増)となり、同6ヵ月連続増となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が609.9万トン(同24.6%増)となり、同6ヵ月連続増。▽電炉鋼が182.5万トン(同17.6%増)となり、同6ヵ月連続増となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が603.6万トン(同14.2%増)となり、同6ヵ月連続増。▽特殊鋼が188.8万トン(同62.3%増)となり、同6ヵ月連続増となった。
▽熱感圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は698.5万トン(同19.0%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は543.3万トン(同12.7%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽特殊鋼熱感圧延鋼材の生産は155.2万トン(同48.4%増)となり、同8ヵ月連続増となった。
一方、7月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は48万4,632トン(同2.1%減)となった。うち▽非住宅が34万7,678トン(同7.4%減)、▽住宅が13万6,954トン(同14.3%増)となった。
21年4~7月の建築用は204万8,031トン(前年同期比8.5%増)となった。うち▽非住宅が152万9,116トン(同12.7%増)となり、▽住宅が51万8,915トン(同2.4%減)となった。


7月溶接材料の出荷量1万7,173トン(前年同月比7.8%増)
21年(1~7月)の出荷量12万4,061トン(前年同期比2.0%増)

日本溶接材料工業会が発表した2021年7月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万7,975トン(前年同月比11.1%増)の前年同月比で4ヵ月連続増加となり、出荷量は1万7,173トン(同7.8%増)の同4ヵ月連続増となった。在庫量は1万6,601トン(同19.7%減)となり、同9ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,688トン(同51.0%増)の同4ヵ月連続増。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,861トン(同5.7%減)の同19ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,217トン(同0.4%減)の同4ヵ月ぶりの減少となった。その他を含む生産量計では1万7,975トン(同11.1%増)となり、同3ヵ月連続増となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,353トン(同48.6%増)となり、同4ヵ月連続増。▽FCWが5,557トン(同6.6%減)の同2ヵ月連続減。▽溶接棒が2,101トン(同2.8%増)の同4ヵ月連続増となった。その他を含む出荷量計では1万7,173トン(同7.8%増)の同4ヵ月連続増となった。
在庫量の主な品種は▽SWが5,912トン(同20.3%減)の同7ヵ月連続減。▽FCWが5,927トン(同20.1%減)の同8ヵ月連続減。▽溶接棒が2,416トン(同27.4%減)の同11ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万6,601トン(同19.7%減)の同9ヵ月連続減となった。
21年(1~7月)の生産量は12万2,587トン(前年同期比0.2%減)となり、出荷量は12万4,061トン(同2.0%増)となった。なお、財務省貿易統計による7月の溶接材料輸出量は2,758トン(前年同月比6.6%減)、輸入量は6,271トン(同35.0%増)となった。

20年7月-21年7月 溶接材料月別実績表

生産量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 % フラックス入りワイヤ 前年比 % 被 覆
溶接棒
前年比 % 合 計 前年比 %
2020年 7 5,091 ▼48.7 6,212 ▼26.0 2,227 ▼3.8 16,173 ▼31.5
8 5,064 ▼31.4 4,921 ▼17.6 1,615 ▼24.6 13,828 ▼24.6
9 57,17 ▼36.6 6180 ▼22.4 1775 ▼26.7 15,740 ▼29.6
10 6,997 ▼22.9 5,829 ▼27.9 1,728 ▼25.6 17,120 ▼23.5
11 7,528 ▼16.6 5,855 ▼20.3 1,845 ▼9.2 17,429 ▼17.8
12 6,637 ▼24.1 5,297 ▼27.1 1,660 ▼30.0 16,014 ▼25.3
2021年 1 6,028 ▼18.5 5,346 ▼20.2 1,803 ▼13.5 15,419 ▼17.9
2 6,781 ▼8.1 5,644 ▼16.9 1,982 2.2 16,888 ▼8.0
3 7,372 ▼3.6 5,788 ▼20.2 2,157 ▼7.0 17,809 ▼9.2
2021年度 4 7,426 4.2 6,047 ▼10.7 2,145 0.0 18,294 ▼2.3
5 7,329 32.8 5,302 ▼0.7 1,994 15.5 16,917 14.7
6 7,947 58.7 6,488 ▼3.8 2,432 14.7 19,285 17.5
7 7,688 51.0 5,861 ▼5.7 2,217 ▼0.4 17,975 11.1
2021年度
(4~7月)
30,390 32.0 23,698 ▼5.5 8,788 6.9 72,471 9.7
2021年
(1-7月)
50,571 11.3 40,476 ▼11.5 14,730 1.1 122,587 ▼0.2

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

生産量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 % フラックス入りワイヤ 前年比 % 被 覆
溶接棒
前年比 % 合 計 前年比 %
2020年 7 4,948 ▼48.2 5,948 ▼26.9 2,044 ▼11.1 15,937 ▼31.0
8 5,306 ▼31.7 5,363 ▼17.6 1,914 ▼11.6 15,027 ▼22.7
9 6,374 ▼28.3 6,089 ▼19.5 2,028 ▼14.3 16,579 ▼23.2
10 6,710 ▼21.2 5,757 ▼26.1 1,900 ▼11.0 16,897 ▼23.2
11 7,171 ▼10.5 5,929 ▼18.9 1,814 ▼11.7 17,209 ▼15.0
12 7,143 ▼16.9 5,615 ▼25.1 1,918 ▼23.9 17,022 ▼21.3
2021年 1 6,932 ▼1.0 5,878 ▼15.3 1,838 ▼17.4 17,053 ▼9.1
2 6,847 ▼1.1 5,689 ▼12.7 1,988 ▼2.2 16,851 ▼5.4
3 7,266 ▼1.5 5,404 ▼21.8 1,907 ▼10.4 17,271 ▼8.0
2021年度 4 7,996 20.7 6,561 1.4 2,497 32.5 19,700 12.6
5 6,937 24.6 5,865 2.8 2,146 6.0 17,016 6.7
6 7,981 43.0 6,340 ▼2.8 2,216 2.5 18,997 12.7
7 7,353 48.6 5,557 ▼6.6 2,101 2.8 17,173 7.8
2021年度
(4~7月)
30,267 33.2 24,323 ▼2.6 8,960 10.4 72,886 10.0
2021年
(1-7月)
51,312 16.5 41,294 ▼8.9 14,693 1.3 124,061 2.0

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
徳山駅前地区再開発はDBフジタ・澤田・洋林JV
S造は6階、12階など4棟1.9万平米

徳山駅前地区市街地再開発(再開発組合は周南市)は、JR徳山駅前の周南市銀座1-26-1(みなみ銀座商店街)ほかに商業棟や住宅棟、駅前棟など5棟を建設する。設計・施工は特定業務代行者のフジタ・澤田建設・洋林建設JV。8月に着工、2023年秋以降の全体完成をめざす。総事業費は約112億円。
再開発規模は、▽駅前棟がS造、地上6階建て、延べ床面積約2,530平方メートル。オフィスや店舗を配置し、4~6階には商工会議所が入居。▽ホテル棟はS造、地上12階建て、同4,120平方メートル。ホテルは117室を設け、店舗が入居。▽商業棟はS造、地上3階建て、同9,220平方メートル。
▽住宅棟はRC造、地上18階建て、同1万0,230平方メートル。店舗、住宅(約100戸)。▽駐車場棟がS造4階建て、同3,260平方メートルとなっている。
再開発対象エリアは、JR徳山駅前の旧近鉄下松百貨店周辺で、金座商店街を含む約1万2,300平方メートル。「ミッシングリンクをつなぎ直す」「来街インフラを徹底強化する」「周南、徳山にふさわしい“ライフスタイルセンター”を創出する」を事業コンセプトに再開発施設を整備し、22年春以降に駅前棟を先行オープンする。


新「銀座ソニーパーク」はD・Bの竹中工務店で22年6月着工
SRC・S造、地下4階・地上5階建、延床4,300平米

東京・銀座の数寄屋橋・交差点角の「旧ソニービル」跡地(中央区銀座5-101-1ほか)に、ソニーとソニー企業が進める「銀座ソニーパークプロジェクト」の建設計画が動き出す。ソニー企業は、9月末で閉園した「Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)」の解体工事を今月から竹中工務店で着工し、22年7月末に完了する。
新たに建設するビルは、施設名称を継承した新「銀座ソニーパーク」とし、建設規模はSRC造・一部S造、地下4階・地上5階建て、延べ床面積約4,323平方メートルを計画。物販店舗や飲食店舗、展示場が入る。設計・施工も竹中工務店が担当し、2022年6月に着工し、24年5月末の完成を目指す。
同プロジェクトはソニー創業70周年に加え、ソニービルの開業から50年目に当たる16年にスタートした。1966年から続いたソニービルを2つのステップで進化させる。 第1ステップとして、当初からのコンセプト「街に開かれた施設」の考え方を拡大した平面な実験空間の「Ginza Sony Park」を18年に開園し、さまざまなイベントに活用された。そして、第2ステップのパークの概念をさらに進化させた最終形としての新ビルを建設する。


連載/あの人、この人(18)
技術指導に尽くした古藤さん

連載を見ている知人から「歳を取ると、懐古したくなる?」と言われ、「懐古でなく、<温故知新>の回顧。あの人がこんな事をした。この人の功績で今がある。少しでも参考となれば!」と、答えた。
今回は多くの人に親しまれ、鉄骨技術指導に尽力された古藤凱生さん。1934年5月5日生まれ、東京都出身。58年に日本大学理工学部建築科卒、66年に新興産業入社、83年に弥生建設工業に転社し、技術部長。87年に那須ストラクチャー工業に転社し、工場長・常務取締役を務める。
古藤さんの知名度は鉄骨ファブ技術者の仲間でも屈指の人。全構連(全国鉄構工業連合会)の地方鉄構組合主催の技術講習の講師役を務め、独特の話しぶりの<古藤節>と壇上からフロアーに降り、ひとり一人に語りかけるため受講者は引き込まれる。また、業界紙・専門誌の技術論文・座談・対談・寄稿などの登場頻度は五指に入る。文章記述も分かりやすく、図解入りにより説得力のある内容になっている。古藤さんは「語ってよし、書いてよし」の人でした。
古藤さん(53歳)と出会いは、87年11月にK出版・大阪支社企画した「韓国鉄構視察団」に東京から参加して頂いた。この時は大手ゼネコンのT工務店・技術部のM課長も一緒だった。この時期は、大手ゼネコンや重工業の鉄構部門が韓国ファブを起用し、<海外鉄骨問題>としてにぎわし、その実態を知るタイムリーな企画だった。
視察団長を大阪府鉄構協同組合T理事長にお願いし、団員は近畿圏からの参加だったが、東京の2人の他に北海道のM氏(89年に北海道機械工業会鉄骨部会会長に就任)も参加し、総勢12名となった。視察内容はソウルでは鉄構関係者との懇談、蔚山・釜山では造船重工や鉄構工場見学となった。古藤さんは日韓の鉄骨規準・施工の違いや溶接品質や検査などを解説するコーディネーター役に徹して頂き、参加者はもとより主催者としても大いに助かった。
私は東京本社勤務となり、「T技術」誌の創刊の編集長になり、爾来、古藤さんに公私に亘って随分とお世話になった。創刊号(88年7月号)から17回連載の「実務講座:品質管理」は文章と図解・フローチャートを入れた解説で多くの品質管理者の手引きとなった。鉄骨のコストダウン・効率化が求められており、89年10月号から37回連載の「-管理技術者のための-鉄骨工作標準」を執筆。この企画は、JASS6(鉄骨工事)に沿って施工するも、各社それぞれの加工手順を最も効率性のある手引きとなる。執筆陣には古藤さんのほか数人の構造設計者や管理技術者が分担執筆し、読者の反響も大きかった。そのため連載後に単行本化し、それも好評だった。
古藤さんには巻頭座談会にも協力して頂いた。89年1月号で「コラム構造の設計・施工上の課題と展望」(参加)、91年2月号で「溶接作業の合理化-技能者不足対策のあれこれ-」(司会役)、92年10月号では古藤さんらの組織<鉄骨技術研究会(SAS)>の台湾ファブ見学報告「台湾ファブの現状と日本の今後への課題」(司会役)、93年8月で「鉄骨工作標準の重要性と課題」(参加)となった。常に核心を突く発言や体験者ならではの施工問題や解説が読者は好感を持った。
一方、講師の派遣では、愛知・岐阜県の鉄骨工業組合が主催した県内支部ごとの技術講習会の講師選定を依頼され、即座にファブ技術者の古藤さんとゼネコン技術者のM建設・M技術課長の2人を紹介。どの会場も立ち見が出るほどの盛況ぶりで、質疑応答にも熱がこもるものだった。両組合の専務理事も「こんなに真剣な講習会は今までなかった。君が推薦した講師で良かった」と高い評価が嬉しかった。私も何人かの受講者に聞くと「古藤先生もM先生も、自らの体験談や失敗談の話は参考になった」と語り、受講者目線での話し方が好評だった。
各種講習会の講師を務める傍ら、鉄骨技術研究会主宰の他にも05年5月東京鉄構工業協同組合の鉄骨研修会<東構塾>の塾長を務め、若手技術者を対象に技術伝承を目的に1期2年後の2期目は東京以外の神奈川、新潟、長野、山梨からの要望に応え、30人を超える塾生となった。
通常講義では鉄骨施工、品質管理、生産効率などに加え、JASS6改定による鉄骨材料、テープ合わせ、スカラップ、エンドタブなど変更のポイント解説であった。特別講義の講師では「塾生と同年代でも、私が本物(技術者)で、信頼する人を招いて講義をして頂く。座学だけでなく、電炉や溶接材料、溶接ロボットメーカーを見学する」と関連知識にも及んだ。塾生のひとりとして当誌・編集デスクのK君が毎回出席し、編集企画の実務に生かしてくれた。
古藤さんは、「建築鉄骨がリベット接合時代から溶接接合へと変わり、H形鋼やコラムなど建築鋼材や溶接工法などが多様化・高度化し、さらにロボット溶接全盛時代へと変わるものの、鉄骨製作には多くの技能者・技術者が必要な業種のため、常に教育・指導が必要不可欠」が持論。そのためか、自社と他社の隔たりを越え、誰にでも気さくな対応には頭が下がる。当時の塾生は、今では企業役員・工場長などで活躍し、中にはリタイア後、各種講習の講師役を継承している人もいる。
古藤さんは中国ファブの技術指導に赴任する。大臣認定取得のためのソフト・ハード面のノウハウや技能者養成のために尽力。海外ファブの感想を聞くと、「丁寧に説明・指導し、これから活かして貰うと思っても、次に行くと元のやり方に戻っている」と、国民性や風習の違いよる指導の難しさを吐露する。
その一方、鉄骨建築有志らの交流会や呑み会にも気軽に参加され、さまざまな体験談で盛り上げてくれる最も敬愛する先輩であり、よき相談者でもあった。ご自宅が千葉・内房のため、宴たけなわになる頃になると「遠いのでお先に失礼するよ」と言って一足先に帰る。このことだけは残念だった。
18年2月1日、古藤さんの訃報が届いた。1月31日に逝去(享年83歳)。この訃報は瞬く間にゼネコン・設計事務所・鉄骨ファブ・検査会社らに伝わった。2月4日の通夜は市原市の「五井斎場」で執り行われ、多くの人が弔問に駆け付けた。弔辞はゼネコン技術者の長老・元S建設・技術研究所長のF氏、元M建設で日本エンドタブ協会理事長・AWA認証機構会長のM氏、元N設計・M氏をはじめ、かつて古藤氏と共に歩んだ技術者仲間によって、ありし日の古藤氏の人柄やエピソードを偲び、<良き時代の、良き思い出>を回顧させるものだった。
通夜振る舞い(会食)は、新年会を彷彿する光景となった。長老のF氏が「これだけの面々が弔問に駆け付けるなら、私は生前葬にしたい」と言わせるほど盛大な通夜だった。これも古藤さんの人柄と功績がなせるものであり、改めて惜しい人を亡くしたと痛感した。
古藤さんの志を継ぐかのように、長男がトーネジ・営業幹部職として活躍し、長女の娘(孫)さんがスノウチ・営業企画本部に務め、三世代にわたって鉄骨建築に携わっている。

【中井 勇】