スノウチニュース<№190> 令和2年8月


【鉄骨需要月別統計】
6月鉄骨需要量36万9,050トン(前年同月比14.6%減)
20年上期(1~6月)鉄骨造204万8,200トン(前年同月比11.9%減)

国土交通省が7月31日発表した「建築物着工統計調査」の2020年6月着工総面積は9,925千平方メ―トル(前年同月比16.0%減)となり、前年同月対比で10ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル割れは6ヵ月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が553千平方メートル(同4.5%増)となり、同1ヵ月で増加となった。▽民間建築物は9,373千平方メートル(同16.9%減)となり、同10ヵ月連続減となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,128千平方メートル(同14.5%減)となり、同10ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,798千平方メートル(同18.2%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造は3,648千平方メートル(同14.8%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽SRC造は85千平方メートル(同12.9%増)となった。
一方、▽RC造は1,682千平方メートル(同21.4%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽W造は4,441千平方メートル(同15.3%減)となり、同11ヵ月連続減となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は36万4,800トン(前年同比14.8%減)と30万トン台の低水準となっている。SRC造は4,250トン(同12.9%増)となった。鉄骨造計では前月比0.9%増となり、前年同月比14.6%減の36万9,050トンとなった。
20暦年上期(1~6月)のS造は199万9,500トン(前年同期比12.6減)、SRC造は4万8,700トン(同37.0%増)、鉄骨造計204万8,200トン(同11.9%減)となった。コロナ禍による需要減が秋以降も厳しさを増す傾向となる。

19年6月-20年6月 鉄骨需要量の推移

年/月 S造(TON) 前年比(%) SRC造(TON) 前年比(%) 鉄骨造計(TON) 前年比(%)
2019/6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050 -8.7
7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150 -0.7
8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600 -3.7
9 348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900 -17.5
10 367,900 -16.4 5,500 -44.5 373,400 -17.1
11 351,000 -14.8 4,650 12.4 355,650 -14.6
12 402,700 2.6 5,400 -29.7 408,100 2.0
2020/1 266,100 -296 5,350 65.9 271,450 -28.8
2 300,000 -20.2 10,400 56.6 310,400 -18.9
363,800 7.5 4,950 7.7 368,750 7.5
352,800 -10.0 9,950 0.0 362,750 -10.0
352,000 -6.4 13,800 88.2 365,800 -4.6
6 364,800 -14.8 4,250 12.9 369,050 -14.6
暦年計(20/1~6) 1,999,500 -12.6 48,700 37.0 2,048,200 -11.9
年度計(20/4~20/6) 1,069,600 -10.6 2,800 33.3 1,097,600 -9.8

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の6月総受注額約1兆0,198億円(前年同月比12.9%減)
民間工事は6,710億1,500万円(同22.4%減)

日本建設業連合会(日建連)が7月28日に発表した会員企業95社の2020年6月受注工事総額は1兆0,198億0,400万円(前年同月比12.9%減)となり、前年同月比では4ヵ月連続大幅減となった。うち民間工事は6,710億1,500万円(同22.4%減)となり、同6ヵ月連続大幅減となった。官公庁工事は3,323億3,500万円(同17.7%増)の増加となり、同3ヵ月連続増となった。
国内工事は1兆0,040億5,400万円(同12.8%減)となり、同4ヵ月連続減となった。民間工事の6,710億1,500万円のうち、▽製造業が863億4,300万円(同72.0%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。▽非製造業は5,846億7,200万円(同5.2%増)の微増となり、同6ヵ月ぶりの増加となった。
官公庁工事の3,323億3,500万円のうち、▽国の機関が1,850億5,000万円(同13.2%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽地方の機関は1,472億8,500万円(同23.8%増)の大幅増となり、同7ヵ月連続増となった。▽その他が7億0,400万円(同82.2%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽海外工事は157億5,000万円(同21.2%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。
20年度4~6月の受注総計は2兆3,476億8,900万円と(前年同期比13.3%減)となった。2年連続で3兆円台を割り込んだ。このうち民間工事は1兆5,526億5,100万円(同21.4%減)となり、官庁工事7,523億9,800万円(同15.4%増)となった。大幅減の要因は新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴い、民間事業者が工事発注の申請手続きを控えたことが大きく影響した。
一方、6月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道640億4,200万円(前年同月比14.0%増)のとなり、前年同期比では3ヵ月ぶりの増加。▽東北1,163億1,700万円(同2.5%減)となり、同4ヵ月連続減。▽関東4,432億8,200万円(同18.8%減)となり、同4ヵ月連続大幅減。▽北陸482億円4,600万円(同84.8%増)の大幅増となり、同2ヵ月で増加となった。
▽中部870億5,900万円(同16.1%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少。▽近畿1,056億2,000万円(同43.3%減)となり、同2ヵ月連続減。▽中国443億9,100万円(同28.7%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽四国180億2,200万円(同90.8%増)となり、同3ヵ月ぶりの大幅増。▽九州770億8,500万円(同11.0%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。


6月粗鋼生産559.8万トン(前年同月比36.3%減)
1~6月粗鋼4,221万トン(前年同期比17.4%減)
5月普通鋼建築用41.9万トン(前年同月比14.4%減)

日本鉄鋼連盟が7月22日に発表した2020年6月の銑鉄生産は418.7万トン(前年同月比36.3%減)となり、前年同月比では4ヵ月連続減となった。1~6月では3,191.5万トン(同15.8%減)。粗鋼生産は559.8万トン(同36.3%減)となり、同4ヵ月連続減となった。1~6月では4,220.9万トン(同17.4%減)となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が407.3万トン(同38.3%減)となり、同4ヵ月連続減。▽電炉鋼が152.5万トン(同30.4%減)となり、同16ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が458.3万トン(同31.3%減)となり、同4ヵ月連続減。▽特殊鋼が101.5万トン(同52.2%減)となり、同19ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は505.0万トン(同33.9%減)となり、同24ヵ月連続減となった。1~6月では3,714.9万トン(同17.5%減)となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は423.0万トン(同29.4%減)となり、同4ヵ月連続減となった。 1~6月では2,995.7万トン(同14.5%減)となった。
▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は82.1万トン(同50.2%減)となり、同18ヵ月連続減となった。 1~6月では719.2万トン(同27.9%減)となった。
5月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は41万8,692トン(同14.4%減)となった。うち▽非住宅用が29万9,348トン(同12.4%減)、▽住宅用が11万9,344トン(同18.9%減)となった。


5月溶接材料の出荷量1万5,949トン(前年同月比23.5%減)
生産量1万4,746トン(前年同月比28.7%減)

日本溶接材料工業会が発表した2020年5月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)は、生産量は1万4,746トン(前年同月比28.7%減)となり、前年同期比では5ヵ月連続減となった。出荷量は1万5,949トン(同23.5%減)となり、同5ヵ月連続減となった。在庫量は2万0,888トン(同19.7%増)となり、同5ヵ月連続増となった。
生産量の主品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が5,519トン(前年同月比29.1%減)となり、前年同月比では5ヵ月連続減となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,340トン(同28.0%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽被覆アーク溶接棒が1,726トン(同28.7%減)となり、同4ヵ月連続減となった。その他を含む生産量計は1万4,746トン(同28.7%減)となった。
出荷量の主品種は▽SWが5,569トン(同33.1%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽FCWが6,037トン(同17.5%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽被覆アーク溶接棒が2,024トン(同13.0%減)となり、同5ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計は1万5,949トン(同23.5%減)となった。生産・出荷量の大幅減は、新型コロナウイルス感染拡大による需要減が響いている。
在庫量の主品種は▽SWが7,844トン(同89.6%増)となり、同5ヵ月連続増となった。▽FCWが6,933トン(同1.1%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽被覆アーク溶接棒が3,188トン(同5.5%増)となり、同3ヵ月連続増となった。その他を含む在庫量計は2万0,888トン(同19.7%増)となった。
なお、20年度(4~5月)の生産量は3万3,470トン(前年同期比20.2%減)となり、出荷量は3万3,440トン(同20.9%減)の大幅減となった。

19年5月-20年5月 溶接材料月別実績表

単位/トン

生産量
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被覆溶接棒 前年比 合 計 前年比
2019年度 5 7,783 11.5 7,418 4.4 2,422 15.2 20,686 5.7
(令和元年) 6 9,033 9.2 7,013 20.9 2,483 12.8 21,003 8.1
7 9,917 17.5 8,397 15.9 2,314 24.5 23,626 15.4
8 7,378 1.5 5,974 ▼14.6 2,141 ▼3.3 18,338 ▼4.9
9 9,015 9.4 7,963 17.8 2,421 ▼1.2 22,364 9.4
10 9,078 ▼4.6 8,090 ▼1.1 2,322 9.8 22,375 ▼2.5
11 9,024 ▼0.6 7,343 ▼6.2 2,033 ▼18.8 21,212 ▼5.3
12 8,743 10.3 7,263 2.1 2,370 13.8 21,431 8.7
1 7,398 ▼6.7 6,637 ▼3.3 2,085 10.7 18,771 ▼7.2
2 7,379 ▼13.6 6,788 ▼8.0 1,940 ▼20.7 18,359 ▼14.2
3 7,645 ▼18.6 7,251 ▼2.4 2,320 ▼1.1 19,613 ▼11.5
2019年度 100,944 0.8 87,472 1.7 27,283 ▼1.0 249,012 ▼0.5
2020年度 4 7,398 ▼16.6 6,773 ▼7.7 2,146 ▼11.8 18,724 ▼11.8
(令和2年) 5 5,519 ▼29.1 5,340 ▼28.0 1,726 ▼28.7 14,746 ▼28.7
2020年度計 12,917 ▼20.9 12,113 ▼17.9 3,872 ▼20.2 33,470 ▼20.2

 

年/年度 ソリッドワイヤ 前年比 フラックス入りワイヤ 前年比 被覆溶接棒 前年比 合 計 前年比
2019年度 5 8,326 14.7 7,314 7.4 2,326 20.1 20,851 8.4
(令和元年) 6 8,630 5.5 7,439 16.7 2,425 17.5 21,134 7.3
7 9,544 14.1 8,137 16.1 2,300 2.2 23,101 12.4
8 7,767 2.6 6,512 ▼7.4 2,164 ▼3.0 19,448 ▼1.1
9 8,885 13.8 7,560 10.2 2,367 ▼6.1 21,597 7.2
10 8,512 ▼11.1 7,792 3.7 2,136 ▼11.1 21,348 ▼6.5
11 8,012 ▼10.8 7,315 ▼3.2 2,054 ▼13.4 20,246 ▼7.9
12 8,596 8.9 7,498 4.1 2,519 31.1 21,619 9.5
1 7,000 ▼8.4 6,941 ▼6.7 2,224 ▼8.4 18,758 ▼11.9
2 6,925 ▼18.4 6,517 ▼8.7 2,032 ▼8.6 17,821 ▼13.9
3 7,379 ▼17.3 6,910 ▼7.1 2,128 ▼12.7 18,771 ▼13.6
2019年度 98,044 ▼2.2 87346 1.7 27,183 ▼2.3 246,093 ▼1.6
2020年度 4 6,627 ▼21.7 6,470 ▼24.8 1,885 ▼24.8 17,491 ▼18.3
(令和2年) 5 5,569 ▼33.1 6,037 ▼17.5 2,024 ▼13.0 15,949 ▼23.5
2020年度計 12,196 ▼27.4 12,507 ▼15.1 3,909 ▼19.1 33,440 ▼20.9

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
志木市新庁舎建設は鹿島が担当
SRC造・S造4階、延床面積約1.1万平米

埼玉県志木市は「志木市新庁舎建設工事」を総合評価一般競争入札(建築・電気設備・機械設備・昇降機設備の各工事)した結果、鹿島に決定。受注金額は50億1,410万円(税別、落札率92%)で予定価格は54億5,000万円(同)だった。市議会承認後、本契約した上で9月に着工し、工期は22年4月28日まで。
新庁舎は現地(中宗岡1-1-1)で建て替えとなる。敷地立地は県道36号線に面し、東側は新河岸川、西側は県道266号線となる。敷地面積約9,039平方メートル。建築面積約2,532平方メートル。敷地中央に新庁舎棟、北側に駐車場、南側に地上部が広場、地下が駐車場の人工地盤棟(グランドテラス)を整備する。
新庁舎棟の規模は、SRC造・S造(免震構造)、地上4階・塔屋1層建て、延べ床面積約1万0,965平方メートル。人工地盤棟がS造(耐震構造)1,732平方メートル。建築確認申請上の階数は新庁舎棟が5階建て塔屋1層、人工地盤棟が地下1階建てとなる。設計は佐藤総合計画が担当。
新庁舎建設の基本理念は、小さなまちの特徴と市民力が活かせる、充実した機能が確保された「スマート」で「コンパクト」な市民に親しまれる庁舎としている。そして庁舎建設のコンセプトは▽市民が利用しやすい▽市民力のステージとなる▽市民の安全を守る▽志木市の環境と共生する――としている。
新庁舎棟の1-3階が執務スペース、4階が議会機能となる。このほか、1階には市民ホール、3階に市長・副市長室、災害対策本部室、4階に展望ロビー、市民ギャラリーを整備する。駐車場は敷地北側、各棟地下を合わせて152台確保する。人工地盤棟の工事は21年度に別途発注する。


連載/あの人、この人(3)
あるアウトサイダー経営者

40年前の春、私は溶接専門紙のW新聞・東京から大阪本社に赴任し、溶接需要の最大マーケットの建築鉄骨ファブ業界を担当していた。特に近畿圏・中部圏の府県の鉄構協同組合(鉄構組)に出入りし、理事長や事務局関係者とも親しく交流し、理事会・支部会などコマメに取材していた。当時の鉄構組では事業のひとつに「アウトサイダー(非組合員)の実態調査と加入促進」をテーマにしていた。
高圧ガスや溶接機材を多く消費する鉄骨ファブではアウトサイダーを取材となることもある。そんな時、どこのファブも開口一番に「専門新聞社、あんたは鉄構組の回し者か。新聞は読まない。何も言うこともない」となど門前払いされることが多い。それでも地域特集や溶接機メーカー特集ではユーザー訪問などでファブを取材する。特集主旨を説明し、地域溶材市況を聞きたいと言えば、渋々対応する経営者もいた。
兵庫県央部のF鉄工所の60歳代のF社長との出会い。この時も業界紙記者と名乗っただけでF社長は「話すことは何もねえ~」と、けんもほろろで取り付く暇もなかったが、事前に同業者からの「あのオヤジは偏屈だから~気を付けろ!」と聞いていたので、ここではひとつ辛抱強く粘った。「あんたの粘りには負けたよ」といって社長室に招き入れてくれた。ガス・溶材市況が一段落し、県内ファブの話題から鉄骨需給状況や受注単価、さらに鉄構組事業などに言及すると、あれほど警戒していたF社長の態度が徐々に変わりだした。
この時代のファブ(知事許可の鋼構造物工事業)は、門扉や物置小屋から軽量鉄骨住宅・店舗や低層建築までを手掛け、地元設計事務所の図面・指示で現寸を引き、製作していた。大方のファブは設計図面を理解するも施工図や工作図などを起こさず、現寸場もないところがあった。ましてや建築基準法や鉄骨製作規準、JIS規格などを精通していなかった。戦後復興の建築ブームで起業した独立独歩派が多く、同業者で鉄構組をつくることなどは思いもよらなかった。元請・下請けの関係は工期・単価で結ばれ、鉄骨の規準・品質は設計事務所の「先生」に従うことで、ほぼ成り立っていた。
F鉄工所は野鍛冶屋から続く老舗で、F社長は2代目。長男(工場長)が造船溶接工(技能資格を保有)を辞め家業に入ってから工場建屋や低層ビル鉄骨を手掛けてから業容が拡大し、加工設備も充実しつつあった。兵庫県鉄構組の設立時、同業者から組合加入の呼びかけにも無視し、「うちのところは取引する先(建設会社)が決まっているし、組合活動する暇もない」と鉄構組事務局の再三の入会にも拒否した。だがファブ業界は日増しに変貌し、鉄構組の活動も活発化し、工場認定制度も定着。今さら頭を下げ、「鉄構組に入会します」とは、職人気質のF社長は口が裂けても言えないのだろう。
鉄構組定款は都道府県によって、それぞれ異なるものの、一般的には入会には、地域支部組合員2社の推薦・承認、理事会で承認となる。鉄構組の出資金と賦課金などを納めなくてはならない。F社長は加工能力増と長男が稼業継いだこともあり、鉄構組加入を軟化するものの、鍛冶屋職人のメンツもあり、特に地域同業者2社推薦に拘っているようだった。
そんな出会いもあって、F鉄工所には何度か訪問し、その都度鉄骨ファブ業界の現況と将来についてF社長と子息の工場長と親しくなった。F工場長は「うちよりも小規模な鉄工所が認定工場になった。この制度を取得するには鉄構組入会が条件だというなら、おたくから組合幹部に話して入会できるようにしてほしい」とF社長に代わって頼まれ、橋渡し役をすることになった。
工場認定制度は、東京五輪(1974年)の前年7月任意団体の全国鉄構工業連合会(全構連)を創設。構成会員数4,678社を数えたが、組織未加入は1万8,000とも2万社以上とも言われていた。この時代「鉄は国家なり」といわれ、建築物も鉄筋コンクリート造から鉄骨造へと変革する創世記だった。81年に大臣認定制度が施行されると、さすがに中規模のアウトサイダーも慌てだした。
F鉄工所のF工場長とは神戸市内で逢って鉄構組入会の相談をする。私は兵庫県鉄構組の専務理事とはF鉄工所加入の善後策を協議していた。頑固なF社長対策として「工場長を専務に就任させ、専務が組合本部に挨拶に行き、本部の事務局から地域支部長に根回してもらう」とのことで進めたいがと念を押すと、さすがのF社長も業界事情を知るに従い、ここは若いものに任せた方がいいと判断したか、深々と頭を下げ「是非よろしく頼みます」と懇願された。
業界紙記者が仲介役に敬意を称し、専務理事の根回しが良く進めてくれた。F鉄工所は数社と同時に組合員となった。後に、F専務が私に「あの時、工場に来てくれなかったら、今も『井の中の蛙』のまま。オヤジとは話し合ったがなかなか噛み合わなかったが、おたくの話にはよく聴いてくれた。不思議に思っていたが、おたくのお父さんも製缶職人で、苦労話をオヤジが聴いておたくを信用した。あのオヤジが感謝していますよ」。F鉄工所は2年後、晴れて大臣認定工場のRグレードを取得した。

【中井 勇】