スノウチニュース<№181> 令和元年11月

【鉄骨需要月別統計】
9月鉄骨需要量35万5,900トン(前年同月比17.5%減)
19年度上期(4~9月)248万トン(前年同期比8.3%減)

国土交通省が10月31日発表した「建築物着工統計調査」の2019年9月着工総面積は10,316千平方メ―トル(前年同月比7.6%減)の前年同月比では4ヵ月ぶりの減少となり、10,000千平方メートル超えでは6ヵ月連続のとなった。

▽建築主別は、公共建築物が422千平方メートル(同8.9%減)となり、同1ヵ月で減少となった。民間建築物は9,894千平方メートル(同7.5%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。10,000千平方メートル超えは4ヵ月ぶり割れた。

▽用途別は、居住建築物は6,707千平方メートル(同0.5%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。非居住建築物は3,609千平方メートル(同18.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

▽構造別は、鉄骨建築のS造は3,483千平方メートル(同18.1%減)となり、同2ヵ月連続減となった。SRC造は152千平方メートル(同29.7%増)となり、同2ヵ月連続増となった。RC造は1,835千平方メートル(同4.1%増)となり、同2ヵ月連続増となった。W造は4,724千平方メートル(同4.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

▽鉄骨需要換算では、S造は34万8,300トンとなり、4ヵ月ぶりに40万トン割れとなった。SRC造は7,600トンとなった。鉄骨造計は前月比で16.1%減、前年同月比では17.5%減の35万5,900トンとなった。

19年上期計では247万9,050万トン(前年同期比8.3%減)と厳しい状況になっている。業界筋では「ハイテンションボルトやコラムBCPの納期遅延などが影響を及ぼしている」と言われている。

18年9月-19年9月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
18/9 425,300 -3.6 5,900 -33.2 431,200
10 440,200 7.3 9,950 -19.1 450,150
11 412,200 -8.9 4,100 -68.1 416,300
12 392,600 7.5 7,650 20.9 400,250
19/1 377,900 -4.6 3,200 -45.4 381,100
2 376,200 1.8 6,650 -80.5 382,850
3 338,500 -18.6 4,600 -56.5 343,100
4 391,900 -9.3 10,000 49.9 401,900
5 376,100 -12.0 7,350 -10.7 383,450
6 428,300 -9.1 3,750 109.3 432,050
7 475,600 0.7 6,550 -49.9 482,150
8 421,100 -4.0 2,500 64.5 423,600
348,300 -18.1 7,600 29.7 355,900

(国土交通省調べ)

 

【建築関連統計】
日建連の9月総受注約7,229億円(前年同月比29.3%減)
民間工事1兆,0382億円(前年同期比9.3%減)
19年度上期総受注量6兆1,069億円(前年同期比10.0%減)

日本建設業連合会(日建連)が10月28日に発表した会員企業96社の2019年9月受注工事総額は1兆3,746億3,800万円(前年同月比7.6%減)となり、前年同月比では2ヵ月連続減となった。うち民間工事は1兆0,381億8,700万円(同9.3%減)となり、同2ヵ月連続減となった。官公庁工事は2,954億6,400万円(同4.9%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。

国内工事は1兆3,383億2,300万円(同6.5%減)となり、同2ヵ月連続減となった。民間工事の1兆0,381億8,700万円のうち、▽製造業が1,664億0,900万円(同25.7%減)となり、同2ヵ月連続大幅減となった。▽非製造業は8,717億7,800万円(同5.4%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

官公庁工事の2,954億6,400万円のうち、▽国の機関が1,886億3,600万円(同9.9%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽地方の機関は1,068億2,800万円(同2.9%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽その他が46億7,200万円(同2.3%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽海外工事は363億1,500万円(同36.0%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。

19年度上期(4~9月)の▽総受注工事は6兆1,068億6,700万円(前年同期比10.0%減)▽民間工事は4兆4,266億0,300万円(同9.3%減)▽官公庁工事は1兆4,197億9,900万円(同11.5%減)▽海外工事は2,299億3,500万円(同18.4%減)となった。

9月分の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道342億9,300万円(前年同月比28.1%減)の大幅減となり、前年同期比では1ヵ月で減少となる。▽東北525億4,300万円(同59.7%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となる。▽関東6,541億8,000万円(同2.4%減)となり、同2ヵ月連続減となる。▽北陸463億0,700万円(同25.6%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。

▽中部1,090億9,100万円(同12.1%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となる。▽近畿2,373億6,500万円(同14.5%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となる。▽中国722億3,200万円(同27.2%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増となる。▽四国272億5,400万円(同88.8%増)の大幅増となり、同6ヵ月ぶりの増加となる。▽九州1,050億5,800万円(同27.4%減)となり、同2ヵ月連続の大幅減となる。

9月粗鋼生産は804.5万トン(前年同月比4.5減)
上期(4~9月)5,067万トン(前年同期比3.0%減)
8月普通鋼鋼材建築用45.6万トン(前年同月比21.0%減)

日本鉄鋼連盟が10月23日に発表した2019年9月の鉄鋼生産は、銑鉄生産は611.4万トン(前年同月比2.4%)減となり、前年同月比で2ヵ月連続減となった。19年度上期(4~9月)では3,865.5万トン(前年同期比0.4%減)となった。粗鋼生産は804.5万トン(同4.5%減)となり、同3ヵ月連続減となった。19年度上期では5,066.9万トン(同3.0%減)となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が606.2万トン(同4.1%減)となり、同2ヵ月連続減、▽電炉鋼が198.3万トン(同5.9%減)となり、同7ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が618.3万トン(同3.0%減)となり、同3ヵ月連続減、▽特殊鋼が186.2万トン(同9.4%減)となり、同10ヵ月連続減となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は695.9万トン(同5.2%減)となり、同15ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は546.9万トン(同3.7%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は149.0万トン(同10.3%減)となり、同9カ月連続減となった。

一方、8月の普通鋼鋼材用途別受注量による▽建築用が45万6,456トン(同21.0%減)となった。うち▽非住宅用が30万6,825トン(同23.0%減)となり、▽住宅用が14万9,613トン(同16.6%減)と、それぞれ大幅減となった。19年度4~8月の累計では、▽建築用が244万1,100トン(前年同期比12.7%減)、▽非住宅用が169万2,676トン(同15.4%減)、▽住宅用が74万8,424トン(同5.9%減)となった。

8月溶接材料の出荷量1万9,448トン(前年同月比1.1%減)
19年度4~8月の出荷量10万5,933トン(前年同月比6.3%増)

日本溶接材料工業会が発表した2019年8月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)によると、生産量は1万8,338トン(前年同月比4.9%減)となり、7月の4年ぶり高水準から一転し11ヵ月ぶりの減少となった。出荷量は1万9,448トン(同1.1%減)となり、微減ながら同11ヵ月ぶりの減少となった。在庫量は1万6,735トン(同2.2%減)となり、同1ヵ月で減少に転じた。

生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤは7,378トン(前年同月比1.5%増)となり、微増ながら前年同月比11ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤは5,974トン(同14.6%減)の大幅減となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽被覆アーク溶接棒は2,141トン(同3.3%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少となった。その他を含む生産量計は1万8,338トン(同4.9%減)となる。

出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤが7,767トン(同2.6%増)となり、同11ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤは6,512トン(同7.4%減)となり、同6ヵ月ぶりの減少となった。▽被覆アーク溶接棒は2,164トン(同3.0%減)となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。その他を含む出荷量計は1万9,448トン(同1.1%減)となる。

在庫量の主な品種は▽ソリッドワイヤは4,524トン(同10.2%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤは6,315トン(同5.2%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽被覆アーク溶接棒は2,895トン(同13.3%減)となり、同11ヵ月連続減となった。その他を含む出荷量計は1万6,735トン(同2.2%減)となる。

19年度4~8月までの出荷量は10万5,933トン(前年同期比6.3%増)となった。うち、▽ソリッドワイヤは4万4,735トン(同13.7%増)、▽フラックス入りワイヤは3万6,813トン(同6.9%増)、▽被覆アーク溶接棒は1万1,723トン(同7.3%増)となる。

 

【建築プロジェクト】
「芝浦1丁目建替え計画」の施工・清水建設に決まる
SRC造・RC造・S造、45・47階建て超高層ツインタワー

野村不動産とNREG東芝不動産、JR東日本は「芝浦1丁目計画」(計画地、東京都港区芝浦1-1-1、浜松町ビルディングなどの建替計画)の超高層ツインタワーの施工を清水建設に決め、2021年9月着工し、2棟の全体完成31年度となる。

同計画は、JR浜松町駅に近い浜松町ビルディング(通称・東芝ビル、地上40階建て)と東芝浜松町ビルディング(同8階建て)敷地面積約4万0,104平方メートルのうち、建築面積約2万9,800平方メートルに総延べ床面積約約55万平方メートル、高さ235メートルの超高層ツインタワーを建設する。

計画地は、北側を首都高速2号(首都高速都心環状線)、西側をJR山手線や東海道新幹線の線路、南側を特別区道1114号、東側を芝浦運河や首都高速1号などに囲まれた一角に当たる。

建築規模は▽Ⅰ期(S棟)SRC造・RC造・一部S造、地下3階・地上45階建て、▽Ⅱ期(N棟)SRC造・RC造・一部S造、地下3階・地上45階建てとなり、2棟の共通施設は地下階に駐車場(約1,300台収容)・設備機械室などになり、地上低層階は店舗・商業、子育て支援施設などを配置することで地域との交流の場とする。中層階以上をオフィスが占める。上層階はS棟ではホテル、N棟は住宅の複合施設となる。

設計は槇総合計画事務所と清水建設が担当している。Ⅰ期工事は21年9月~23年度、Ⅱ期工事は26年度~31年度の完成を目指している。

開発方針は「基盤整備による周辺地区との回遊性強化」「 国際ビジネス・観光拠点の形成」「新たな観光スポットとなる親水空間の創出」「 防災対応力強化とエネルギーネットワーク構築などによる環境負荷の低減」となっている

 

【雑論・正論】
巨大台風とダムの運用・管理

台風15号に次ぎ大型の19号が12日19時ごろ伊豆半島に上陸。1都11県の広域で<河川氾濫><土砂崩れ>を起こし、死者88人・行方不明者7人(29日現在)と家屋倒壊・水害など5万6,753棟の甚大被害となった。

19号の予報では瞬間風速60メートルを超え、雨量も400~500ミリであったが、強風よりも記録的豪雨になった。68河川の氾濫・堤防決壊は予測以上で、政治家の「ますまずに収まった」といった程度の被害状況ではなかった。河川には多くのダムがあり、城山ダムでの<緊急放流>情報では二転三転し下流域住民に不安を与えた。

こうした混乱の中、「もし、<八ッ場ダム>が完成していなかったら~」「八ッ場ダムが首都圏を救った」「利根川が氾濫しないで済んだ」など、八ッ場ダムが河川氾濫や洪水から救ったかのような記事や声があった。それら論調はダム機能・管理を知らない人たちだ。たまたまダム水位が低かったので十分な貯水力があったためなのである。

ダムの役割は大きく分けて、利水(水道用水・農業用水、水力発電など)と、治水(河川氾濫・洪水防止など)である。利水期は満水位で、治水期は低水位の方が良いと相反するため、常に貯水位の運用・管理がカギになる。

八ッ場ダムの建設では利水・治水の役割評価の相違から先延ばしにしてきたが、民主党が政権を執って建設中止を打ち出し<すったもんだ>の末、2014年に着工・今年10月1日完成し、<試験湛水>(ダム完成後に水を貯め安全性を確認)を開始した。3、4ヵ月で満水の予定だったが、19号の豪雨によってほぼ満水状態となった。

国土交通省の八ッ場ダム概要では、平常時標高貯水位583メートル、総貯水量約1億0,750立方メートル。19号の雨量では最大毎秒2,500立方メートルの水が流入し、洪水調節容量6,500万立方メートルを大きく超えた7,500万立方メートルに達した。平時では<緊急放流>される貯水量だ。また、標高貯水位も11日時点の518.8メートルから573.2メートルに達し、約54.4メートルも上昇した。洪水期の貯水位555.2メートルである。

今回のダム緊急放流は<城山ダム>を含む6ダム。うち、元々水位が低かったダムを除く5ダムが台風前に事前放流をして大雨による流入増加に備えていたが、それでも対応は十分ではなかった。もし、八ッ場ダムも緊急放流となったらどんな影響を及ぼしていたかを想像すれば、ダムの管理がいかに重要で難しいかが分かると思う。

ダムは洪水期(7月~10月)と非洪水期(10月~6月)を基準に雨量と利水需要を勘案しての運用・管理が不可欠だ。地球温暖化で台風・豪雨が多発する。ダムは<油断や疎かな管理>であってはならない教訓となった。

【加藤 文雄】