スノウチニュース<№242> 令和6年12月


【建築関連統計】
10月の鉄骨系需要量は31万2,650トン(前年同月比23.7%減)
24年度(4~10月)の需要量223万8,550トン(前年同期比5.2%減)

国土交通省が11月29日に発表した「建築物着工統計調査」による2024年10月着工総面積は9,095千平方メ―トル(前年同月比16.2%減)となり、前年同月比では12ヵ月連続減となった。建設費の高騰などから潜在需要が多くあっても、建築着工需要の低水準が続いている。
建築主別は、▽公共建築物が427千平方メートル(同23.6%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽民間建築物は8,668千平方メートル(同15.8%減)となり、同12ヵ月連続減となった。
用途別は、▽居住建築物は5,734千平方メートル(同8.0%減)となり、同6ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,361千平方メートル(同27.3%減)となり、同4ヵ月連続減となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が2,956千平方メートル(同26.4%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が341千平方メートル(同111.7%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,720千平方メートル(同36.9%減)の大幅減となり、同6ヵ月連続減となった。▽木造(W造)が3,986千平方メートル(同2.7%増)の微増となり、同34ヵ月ぶりの増加となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は29万5,600トン(前年同月比26.4%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少となった。▽SRC造は1万7,050トン(同111.7%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。鉄骨系合計では前月比5.1%減の31万2,650トン(同23.7%減)の大幅減となった。
24暦年(1~10月)の鉄骨需要量は、▽S造が312万0,100トン(前年同期比2.9%減)、▽SRC造が6万0,550トン(同34.1%減)となり、鉄骨系合計では318万0,650トン(同3.8%減)になった。
24年度(4~10月)の鉄骨需要量は、▽S造が218万8,000トン(前年同期比5.0%減)、▽SRC造が5万0,550トン(同13.8%減)となり、鉄骨系合計では223万8,550トン(同5.2%減)となった。

23年10月-24年10月 鉄骨系需要量の推移

年/月 S造
(TON)
前年比
(%)
SRC造
(TON)
前年比
(%)
鉄骨造計
(TON)
前年比
(%)
2023年10月 401,550 16.3 8,050 -24.8 409,600 15.1
11月 277,400 -19.7 3,950 -50.8 281,350 -20.4
12月 320,600 0.6 4,100 -42.5 324,700 0.3
2024年1月 317,500 6.2 3,200 -84.1 320,700 0.5
2月 297,200 -13.4 2,750 -5.4 299,950 -13.3
3月 317,300 18.7 4,050 -63.9 321,350 15.4
2024年度4月 379,900 -2.9 7,700 -2.5 387,600 -2.9
5月 275,900 -4.0 6,750 -10.1 28,260 -4.2
6月 313,800 4.9 4,900 -56.0 318,700 2.7
7月 321,600 2.5 2,450 -77.4 324,050 -0.2
8月 273,400 -5.9 10,200 27.6 283,600 -5.0
9月 327,900 2.4 1,500 -70.9 329,400 1.3
10月 295,600 -26.4 17,050 111.7 312,650 -23.7
24暦年(24年1月-10月) 3,120,100 -2.9 60,550 -34.1 3,180,650 -3.8
24年度(24年4月-10月) 2,188,000 -5.0 50,550 -13.8 2,238,550 -5.2

 

(国土交通省調べ)

 

日建連の10月総受注額1兆5,898億円(前年同月比42.8%増)
民間工事は1兆2,073億1,800万円(同44.9%増)

日本建設業連合会(日建連)が11月28日に発表した会員企業92社の2024年10月分の受注工事総額は1兆5,898億4,600万円(前年同月比42.8%増)の大幅増となり、前年同月比では1ヵ月で増加となった。国内工事が1兆5,061億7,800万円(同36.4%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。
民間工事が1兆2,073億1,800万円(同44.9%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。官公庁工事が2,929億8,500万円(同8.5%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽海外工事が836億6,800万円(同852.9%増)の超大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。
民間工事の1兆2,073億1,800万円のうち、▽製造業が2,473億4,400万円(同3.3%増)の微増となり、同2ヵ月連続増。▽非製造業9,599億7,400万円(同61.6%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加なった。官公庁工事の2,929億8,500万円のうち、▽国の機関が1,920億3,100万円(同12.2%増)となり、同3ヵ月連続増。▽地方の機関が1,009億5,400万円(同2.0%増)の微増となり、同1ヵ月で増加となった。▽その他が58億7,500万円(同522.4%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。
2024年度(4~10月)の受注総工事額が9兆7,505億7,500万円(前年同期比8.1%増)となった。▽民間工事が7兆0,997億1,300万円(同8.9%増)、▽官公庁工事が2兆2,297億6,000万円(同1.6%増)、▽海外工事が3,679億0,300万円(同41.5%増)となった。
なお、2024暦年(1~10月)の受注総工事額が15兆8,594億8,600万円(前年同期比10.9%増)となった。▽民間工事が10兆9,764億1,800万円(同8.6%増)、▽官公庁工事が4兆2,305億7,500万円(同7.9%増)、▽海外工事が5,523億4,900万円(同45.4%増)となった。
10月の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道が857億0,500万円(前年同月比26.7%増)となり、前年同月比では3ヵ月連続増。▽東北が356億3,300万円(同28.3%減)となり、同2ヵ月連続減。▽関東が8,152億4,200万円(同90.9%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加。▽北陸が538億0,200万円(同340.3%増)の超大幅増となり、同4ヵ月連続増となった。
▽中部が1,217億6,700万円(同3.9%増)の微増となり、同4ヵ月連続増。▽近畿が2,245億3,700万円(同15.7%減)となり、同2ヵ月連続減。▽中国が649億9,200万円(同84.4%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽四国が125億4,400万円(同61.4%減)の大幅減となり、同6ヵ月ぶりの減少。▽九州が919億4,200万円(同4.5%減)の微減となり、同6ヵ月連続減となった。



10月の粗鋼生産量は692.5万トン(前年同月比7.5%減)
9月の普通鋼建築用受注量36.9万トン(前年同月比13.4%減)

日本鉄鋼連盟は11月21日に発表した2024年10月の銑鉄生産は507.5万トン(前年同月比6.1%減)となり、前年同月比では8ヵ月連続減。粗鋼生産は692.5万トン(同7.8%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が510.1万トン(同6.8%減)となり、同8ヵ月連続減。▽電炉鋼が182.4万トン(同10.5%減)となり、同3ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、 ▽普通鋼が532.8万トン(同8.0%減)となり、同8ヵ月連続減。▽特殊鋼が159.7万トン(同7.1%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は599.5万トン(同8.3%減)となり、同8ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は473.8万トン(同8.9%減)となり、同8ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間延鋼材の生産は125.7万トン(同6.0%減)となり、同8ヵ月連続減となった。
なお、9月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が36万9,843トン(前年同月比13.4%減)。うち▽非住宅が26万1,846トン(同11.5%減)となり、▽住宅が10万7,997トン(同17.6%減)となった。
24年度(4~9月)の用途別受注量では、▽建築用が237万7,140トン(前年同期比7.1%減)。うち▽非住宅が165万9,871トン(同9.7%減)。▽住宅が71万7,269トン(同0.6%減)となった。23暦年(1~9月)の用途別受注量では、▽建築用が363万9,893トン(前年同期比6.9%減)。うち▽非住宅が252万7,912トン(同7.7%減)。▽住宅が111万1,981トン((同5.1%減)なった。



9月の溶接材料出荷量1万5,888トン(前年同月比10.8%減)
24年度(4~9月)上期の総出荷量9万1,590トン(前年同期比10.1%減)

日本溶接材料工業会が発表した2024年9月の溶接材料出荷量が1万5,888トン(前年同月比10.8%減)のとなり、前年同月比では6ヵ月連続減となった。
出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6,982トン(同8.2%減)となり、同4ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,225トン(同11.5%減)となり、同2ヵ月連続減。▽被覆溶接棒が1,737トン(同16.7%減)となり、同14ヵ月連続減。その他を含む出荷量計では1万5,888トン(同10.8%減)となった。
24年度(4月~9月)上半期の出荷量は、▽SWが3万9,835トン(前年同期比7.1%減)、▽FCWが3万1,643トン(同6.3%減)、▽溶接棒が8,773トン(同26.9%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は9万1,590トン(同10.1%減)となった。
24暦年(1月~9月)の出荷量は、▽SWが6万1,562トン(前年同期比2.8%減)、▽FCWが4万9,107トン(同2.8%減)、▽溶接棒が1万3,979トン(同26.5%減)となり、その他を含む出荷量計での総出荷量は14万2,232トン(同6.8%減)となった。
財務省の貿易統計による9月の▽輸出量は2,359トン(同5.6%減)となり、同5ヵ月連続減。▽輸入量は4,911トン(同4.4%増)の微増となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。
24暦年(1~9月)の輸出量は2万0,907トン(前年同期比13.1%減)、輸入量4万2,593トン(同12.4%)となった。なお、24年度(4~9月)上半期の輸出量は1万3,159トン(同15.9%減)、
輸入量は2万3,619トン(同24.3%減)となった。

23年9月-24年9月 溶接材料月別実績表

出荷量 単位/トン
2023年度 9 7608 ▼5.0 5906 ▼0.7 2085 ▼12.1 17802 ▼6.3
10 7443 1.5 5639 ▼1.5 1723 ▼21.2 17083 ▼4.7
11 7416 ▼2.8 5782 ▼0.7 1738 ▼26.9 17071 ▼6.5
12 7395 4.6 5702 6.1 1712 ▼22.3 16722 ▼2.0
2024年 1 6643 5.7 5348 0.8 1698 ▼28.7 16020 ▼1.0
2 7228 1.0 5816 9.1 1779 ▼24.0 16746 ▼1.3
3 7856 10.8 6300 3.3 1729 ▼24.2 17876 1.7
4 6410 ▼4.7 5464 ▼3.5 1503 ▼17.0 15384 ▼6.0
5 6605 2.1 5397 ▼3.7 1773 ▼10.0 15780 ▼2.1
6 7546 ▼0.1 5156 ▼12.2 1290 ▼38.5 15363 ▼13.4
7 7017 ▼4.2 5570 3.1 1270 ▼40.4 16012 ▼6.6
8 5275 ▼26.7 4831 ▼9.4 1200 ▼37.2 13163 ▼21.3
9 6982 ▼8.2 5225 ▼11.5 1737 ▼16.7 15888 ▼10.8
2024暦年(1~9月) 61562 ▼2.8 49107 ▼2.8 13979 ▼26.5 142232 ▼6.8
2024年度(4~9月) 39835 ▼7.1 31643 ▼6.3 8773 ▼26.9 91590 ▼10.1

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
「大阪マルビル建替プロジェクト」はフジタが今冬着工
S造・一部SRC造・RC造、地下4階・地上40階、延床7.4万平米

大和ハウス工業と大阪マルビルは「大阪マルビル建替プロジェクト」(北区梅田1-9-20)の概要を発表した。1976年に大阪駅前に複合ビルとして建設された円筒形超高層建築の「大阪マルビル」は大阪のランドマークとして親しまれてきた。同ビルの建て替えは、円筒形の意匠を継承しつつ、延べ床面積はおよそ倍の広さとなる。
新大阪マルビルの規模は、敷地面積3246平方メートルにSRC造・一部S造・RC造の地下4階、S造の地上40階建て、延べ床面積約7万4,000平方メートル(高さ192メートル)の計画となる。梅田エリアでは最高の超高層ビルの一つとなる。設計は日建設計・フジタJV、施工はフジタが担当し、2024年冬着工、30年竣工をめざす。
新ビルにはイノベーションオフィスや、都市型ホテルとラグジュアリーホテル(約280室)のほか、コンサートホール・舞台や球体のエンターテインメント施設も設ける。大阪駅前に新たなシンボル的ビルとして誕生する。同ビルの最も特徴的なのが地下から低層部までを貫く「球体デジタルアトリウム」となる。球体の内面にLEDディスプレーを張り巡らせ、全面に映像が投映される。
旧大阪マルビルの頂部には回る電光掲示板があり、梅田エリアの風景の一つとして親しまれた。特徴的なスカイラインを形成するよう検討を進めている。球体の空間は大阪駅周辺の地下街ともつながり、新たな結節点としても機能する。
都市基盤整備の面では、大阪メトロ四つ橋線西梅田駅に接続する地下通路を新設。新たな改札口も設置する。低層部の壁面や外構部は積極的に緑化する計画。


【時論・公論】
再開発と超高層のハイブリット考察

かつての高層ビルはリベット接合構造のため、鉄骨(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)の何れかであった。現在は超高層ビルの増加に伴い技術革新から構造混合(ハイブリット構造)が進んできた。市街地再開発事業(再開発事業)が1969年に制定され、オフィスやマンション、ホテル、商業・公益施設などの複合用途による超高層ビルが主体の開発になる。2017年度までの約58年間で1,077地区が計画され、うち919地区が完成している。
再開発事業とは、「都市再開発事業法」の法律に基づき、低層建築や老朽建築、空き地など権利者資産をデベロッパーや再開発組合に権利変換し、建て替えを実施する事業である。再開発条件には、▽高度利用地区など法律で定められた区域▽法律で定める耐火建築物の割合が概ね3分の1以下▽公共施設がなく土地が細分化され、土地利用が不合理である▽土地の高度利用を図ることで都市機能が更新される。そのため潜在的需要が多い。
再開発地区のメリットは、▽容積率の割り増し、国・地方公共団体の補助金交付▽税制上の優遇処置▽補償費の充当▽デベロッパー参画による効果などである。完成した建物に対して、権利者は「権利床」を取得し、デベロッパーなどは「保留床」を取得。また地方公共団体は「公共施設」などを取得する。ますます増えていく事業である。
超高層ビルの定義は高さ60メートル以上の建築物であり、設計段階で建築基準法に基づく性能評価を「日本建築センター」の構造計算適合性の事前審査を受け、基準適合しなければ着手できない。現在、全国の超高層ビルは2,686棟あり、うち東京都内1,256棟(占有率46.8%)が建っている(資料:BLUE STYLE COM調べ)。
1995年1月の<阪神淡路大震災>以後、鉄筋コンクリート(RC造)の「鉄筋構造基準」が改正され、以来大きく変化している。再開発事業は、地権者が多いため共同住宅や商業・公益施設などの複合用途となり、RC造ハイブリット構造で超高層ビルとなる。<タワーマンション>と称されている超高層マンションも同じ構造体である。
250メートル以上の超高層ビルは、1993年に完成した「横浜ランドマークタワー」、95年には「大阪府咲州庁舎」、14年の「あべのハルカス」と「麻布ヒルズ森タワー」、23年には「虎ノ門ヒルズステーションタワー」と「麻布台森JPタワー」である。28年に完成する「トーチタワー」(同385メートル)を含め、全てS造ハイブリット構造である。
構造のハイブリット化が進むことによりS造系需要減につながり、S造を主体に他の構造体と組み合わせる技術が複雑かつ多岐にわたる。S造ハイブリット構造の超高層ビル建設需要増には新たなる構造技術が求められる。

【加藤 敏雄】