スノウチニュース<№239> 令和6年9月


【建築関連統計】
7月の鉄骨系需要量は32万4,050トン(前年同月比0.2%減)
24年度(4~7月)の需要量133万4,800トン(前年同期比0.4%増)

国土交通省が8月30日発表した「建築物着工統計調査」による2024年7月着工総面積は8,726千平方メ―トル(前年同月比5.8%減)となり、前年同月比では9ヵ月連続減となった。建設資材の高騰もあり、建築着工面積の減少傾向が続いている。
建築主別は、▽公共建築物が494千平方メートル(同6.6%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽民間建築物は8,232千平方メートル(同6.4%減)となり、同9ヵ月連続減となった。
用途別は、▽居住建築物は5,431千平方メートル(同3.8%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,294千平方メートル(同8.8%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
構造別では、▽鉄骨造(S造)が3,216千平方メートル(同2.5%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が49千平方メートル(同77.4%減)の大幅減となり、同10ヵ月連続減となった。▽鉄筋コンクリート造(RC造)が1,496千平方メートル(同16.6%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽木造(W造)が3,891千平方メートル(同3.2%減)となり、同31ヵ月連続減となった。
鉄骨系の需要換算では、▽S造は32万1,600トン(前年同月比2.5%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。▽SRC造は2,450トン(同77.4%減)の大幅減となり、同10ヵ月連続減となった。鉄骨系合計での前月比1.7%増加の32万4,050トン(同0.2%減)となった。
24暦年(1~7月)の鉄骨需要量は、▽S造が222万3,200トン(前年同期比1.0%増)、▽SRC造が31,800トン(同55.6%減)となり、鉄骨系合計では225万4,700トン(同0.8%減)になった。
24年度(4~7月)の鉄骨需要量は、▽S造が131万3,000トン(前年同期比0%)、▽SRC造が21,800トン(同41.7%減)となり、鉄骨系合計では133万4,800トン(同0.4%増)となった。

23年7月-24年7月 鉄骨系需要量の推移

年/月 S造
(TON)
前年比
(%)
SRC造
(TON)
前年比
(%)
鉄骨造計
(TON)
前年比
(%)
2023年7月 313,700 -27.9 10,900 -11.4 324,600 -27.4
8月 290,500 -17.3 8,000 26 298,500 -16.3
9月 320,100 -0.7 5,200 40.6 325,300 0.0
10月 401,550 16.3 8,050 -24.8 409,600 15.1
11月 277,400 -19.7 3,950 -50.8 281,350 -20.4
12月 320,600 0.6 4,100 -42.5 324,700 0.3
2024年1月 317,500 6.2 3,200 -84.1 320,700 0.5
2月 297,200 -13.4 2,750 -5.4 299,950 -13.3
3月 317,300 18.7 4,050 -63.9 321,350 15.4
2024年度4月 379,900 -2.9 7,700 -2.5 387,600 -2.9
5月 275,900 -4.0 6,750 -10.1 28,260 -4.2
6月 313,800 4.9 4,900 -56.0 318,700 2.7
7月 321,600 2.5 2,450 -77.4 324,050 -0.2
24暦年(24年1月-7月) 2,223,200 1.0 31,800 -55.6 2,254,700 -0.8
24年度(24年4月-7月) 1,313,000 0 21,800 -41.7 1,334,800 0.4

 

(国土交通省調べ)

 

日建連の7月総受注額1兆6,199億円(前年同月比62.7%増)
民間工事は1兆2,804億1,300万円(同115.4%増)

日本建設業連合会(日建連)が8月29日に発表した会員企業91社の2024年7月分の受注工事総額は1兆6,198億6,600万円(前年同月比62.7%増)の大幅増となり、前年同月比では1ヵ月で増加に転じた。国内工事が1兆5,621億9,400万円(同61.9%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。うち民間工事が1兆2,804億1,300万円(同115.4%増)の超大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。官公庁工事が2,812億5,300万円(同22.7%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽海外工事が576億7,200万円(同87.0%減)となり、同1ヵ月で増加となった。
民間工事の1兆2,804億1,300万円のうち、▽製造業が3,589億9,800万円(同234.5%増)の超大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽非製造業9,214億1,500万円(同89.1%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加なった。
官公庁工事の2,812億5,300万円のうち、▽国の機関が1,509億4,800万円(同40.8%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減。▽地方の機関が1,303億0,500万円(同19.9%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽その他が5億2,800万円(同92.3%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。
なお、2024暦年(1~7月)の受注総工事額が11兆5,067億0,300万円(前年度比12.8%増)となった。▽民間工事が7兆8,561億6,300万円(同13.5%増)、▽官公庁工事が3兆1,714億4,600万円(同8.0%増)、▽海外工事が4,620億0,400万円(同52.1%増)となった。
2024年度(4~7月)の受注総工事額が5兆3,977億9,200万円(前年同期比13.5%増)となった。▽民間工事が3兆9,794億5,800万円(同19.2%増)、▽官公庁工事が1兆1,706億3,100万円(同3.4%減)、▽海外工事が2,375億5,800万円(同29.4%増)となった。
一方、7月の地域ブロック別受注工事額は、▽北海道が419億3,800万円(前年同月比15.1%減)となり、前年同月比では1ヵ月で減少。▽東北が857億2,100万円(同79.0%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽関東が6,614億0,300万円(同77.0%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加。▽北陸が627億6,300万円(同332.5%増)の超大幅増となり、同1ヵ月で増加となった。
▽中部が1,238億0,300万円(同18.4%増)となり、同1ヵ月で増加。▽近畿が3,560億3,000万円(同130.5%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加。▽中国が463億6,600万円(同107.6%増)の超大幅増となり、同3ヵ月連続増。▽四国が258億8,300万円(同63.0%増)の大幅増となり、同3ヵ月連続増。▽九州が1,582億7,300万円(同12.7%減)となり、同3ヵ月連続減となった。



7月の粗鋼生産量は710万トン(前年同月比3.8%減)
6月の普通鋼建築用受注量40万トン(前年同月比9.3%減)

日本鉄鋼連盟は8月22日に発表した2024年7月の 銑鉄生産は514.1万トン(前年同月比6.3%減)となり、前年同月比では5ヵ月連続減。粗鋼生産は710.0万トン(同3.8%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が522.5万トン(同6.9%減)となり、同5ヵ月連続減。▽電炉鋼が187.5万トン(同6.0%増)となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が548.0万トン(同2.8%減)となり、同5ヵ月連続減。▽特殊鋼が162.0万トン(同7.1%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は630.8万トン(同5.1%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は495.2万トン(同5.9%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽ 特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は135.6万トン(同2.1%減)となり、同5ヵ月連続減となった。
なお、6月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が39万9,561トン(前年同月比9.3%減)。うち▽非住宅が28万1,550トン(同10.0%減)となり、▽住宅が11万8,011トン(同7.8%減)となった。
24年度(4~6月)の用途別受注量では、▽建築用が122万8,542トン(前年同期比4.5%減)。うち▽非住宅が84万8,825万トン(同8.5%減)。▽住宅が37万9,717トン(同5.8%増)となった。
23暦年(1~6月)上期の用途別受注量では、▽建築用が249万1,295トン(前年上期比5.6%減)。うち▽非住宅が171万6,866万トン(同6.1%減)。▽住宅が77万4,429トン(同4.2%減)となった。



6月の溶接材料出荷量1万7,740トン(前年同月比13.4%減)
24暦年(1~6月)上期の総出荷量9万9,546トン(前年度比1.4%減)

日本溶接材料工業会が発表した2024年6月溶接材料の出荷量が1万5,363トン(前年同月比13.4%減)の大幅減となり、前年同月比では3ヵ月連続減となった。
出荷量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,546トン(同0.1%減)となり、同1ヵ月で減少した。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,156トン(同12.2%減)となり、同3ヵ月連続減。▽被覆溶接棒が1,290トン(同38.5%減)の大幅減となり、同11ヵ月連続減。その他を含む出荷量計では1万5,363トン(同13.4%減)となった。
24暦年(1月~6月)上期の出荷量は、▽SWが3万1,539トン(前年同期比0.6%増)、▽FCWが3万3,481トン(同1.2%減)、▽溶接棒が9,772トン(同24.2%減)となり、総出荷量は9万9,546トン(同1.4%減)。
24年度(4月~6月)の出荷量は、▽SWが1万9,812トン(前年同期比4.5%減)、▽FCWが1万6,017トン(同6.5%減)、▽溶接棒が4,566トン(同22.4%減)となり、総出荷量は4万8,904トン(同2.6%減)。
財務省の貿易統計による6月の▽輸出量は1,964トン(同30.6%減)の大幅減となり、同2ヵ月で減少。▽輸入量は4,433トン(同8.7%減)となり、同9ヵ月連続減となった。なお、24暦年(1~6月)上期の輸出量は1万4,288トン(前年同期比13.5%減)、輸入量は2万8,883トン(同11.5%減)となった。

23年6月-24年6月 溶接材料月別実績表

出荷量 単位/トン
年/年度 ソリッドワイヤ 前年比
フラックス入りワイヤ 前年比
被 覆
溶接棒
前年比
合 計 前年比
2023年度 6 7554 3.1 5873 3.2 2099 ▼11.3 17740 ▼1.4
7 7322 6.1 5403 ▼9.7 2131 7.8 17151 ▼2.0
8 7199 13.2 5331 ▼3.1 1910 ▼11.3 16726 1.4
9 7608 ▼5.0 5906 ▼0.7 2085 ▼12.1 17802 ▼6.3
10 7443 1.5 5639 ▼1.5 1723 ▼21.2 17083 ▼4.7
11 7416 ▼2.8 5782 ▼0.7 1738 ▼26.9 17071 ▼6.5
12 7395 4.6 5702 6.1 1712 ▼22.3 16722 ▼2.0
2024年 1 6643 5.7 5348 0.8 1698 ▼28.7 16020 ▼1.0
2 7228 1.0 5816 9.1 1779 ▼24.0 16746 ▼1.3
3 7856 10.8 6300 3.3 1729 ▼24.2 17876 1.7
4 6410 ▼4.7 5464 ▼3.5 1503 ▼17.0 15384 ▼6.0
5 6605 2.1 5397 ▼3.7 1773 ▼10.0 15780 ▼2.1
6 7546 ▼0.1 5156 ▼12.2 1290 ▼38.5 15363 ▼13.4
2024暦年(1~6月) 42288 2.4 33481 ▼1.2 9772 ▼24.2 97169 ▼3.7
2024年度(4~6月) 20561 ▼0.9 16017 ▼6.5 4566 ▼22.4 46527 ▼7.4

注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。

日本溶接材料工業会

 

【建築プロジェクト】
三菱地所の「N3-5計画」は矢作建設工業で着工
S造・一部SRC造、地下1階・13階建、延床2.4万平米

三菱地所が建設する「N3-5計画」(名古屋市中区錦3-503-1ほか)は、地下鉄名城線・桜通線「久屋大通」駅すぐ、東側を久屋大通、北側を桜通に面した場所に建っていた商業ビルの東急ハンズアネックス店や無印良品などが入っていた「セントラルパークアネックス」と「桜錦ビル」の跡地に建設されるオフィスビル建設プロジェクト。
同計画の建築規模は、敷地面積約2,236平方メートル、建築面積約1,800平方メートルに、S造(CFT柱)・一部SRC造、地下1階・地上13階建て、延べ床面積約2万4,123平方メートル(高さ約60メートル)。設計は三菱地所設計で、施工は矢作建設工業で、2024年10月着工し、26年11月完成予定。



第一三共 品川研究開発センター・研究M棟
S造、地上8階、塔屋1層建て、6.3万平米は清水建設

第一三共の東京・品川研究開発センター(品川区広町1-2-58)は、JR品川駅と大井町駅、大崎駅のほぼ中間に位置し、大崎駅周辺地は高層ビジネス街になっている。
同社の研究開発の中心としてさまざまな革新的な新薬を生み出す医療研究開発の拠点。ここに新たに「研究M棟」を建設する。完成後は、抗体薬物複合体(ADC)や新分野の研究・開発を担うことになる。
同センターの総敷地面積は6万7,201平方メートル。研究M棟の建築面積は8,970平方メートル、建築規模はS造、地上8階・塔屋1層建て、延べ床面積約6万3,378平方メートル(高さ約50メートル)。設計・施工とも清水建設が担当し、2024年11月着工、27年12月完成予定。


【時論・公論】
庁舎建替え・耐震改修は喫緊課題

阪神淡路、東日本大地震、熊本、能登半島地震などで自治体庁舎が倒壊・損壊し、庁舎建て替えが行われる一方、耐震性能不足による耐震化が喫緊の課題。だが、財政難や建設費高騰で躊躇する自治体も多いようだ。
自治体庁舎には大正15年に建てられた大阪府庁舎、昭和3年の神奈川県庁舎、昭和10年の愛知県庁舎など古き現役庁舎もある。庁舎建設により、旧庁舎が登録有形文化財や郷土館などに活用されているケースもある。
庁舎の多くは1980年代の経済成長期に建てられ、老朽化や庁舎分散、耐震不足などからこの十数年建て替えてきた。新庁舎建設に当たっては、財政負担や財源不足から先送りされ▽公立校舎や市立病院、図書館、市民交流館、ごみ焼却場など公共施設優先▽庁舎建て替えより耐震改修を検討している、などの問題に分類される。建設計画が決まっていても、建設資材や工事費高騰もあり、規模の縮小や着工の先送りなどで苦慮している。
全国の市町村自治体は99年~05年の<平成の大合併>により、全国2,093市町村のうち、合併した588市町村と、合併をしなかった1,139市町村に都道府県、政令指定都市区(行政区)を合わせ1,950自治体になる。本庁舎や第二庁舎、議会庁舎、国・県合同庁舎、防災庁舎、下水道庁舎など含めると約9,200庁舎棟を数える。合併時に建て替えや耐震補強をしたため全国の自治体庁舎の耐震率は約8割(総務省調べ)に達している。
新庁舎の躯体構造は、規模が大きいほど鉄骨系(S造、SRC造)が7割超を占める。直近の新庁舎建設では、▽品川区がS造・一部RC造、地下2階・地上14階、延べ床面積6万1,000平方メートル▽仙台市がS造・一部RC造・SRC造、地下2階・地上15階、同5万,875平方メートル▽知多市がS造、地上5階、同1万0,730平方メートル▽明石市はS造・SRC造、地上7階、同2万0,545平方メートル▽八千代市がS造、地上5階、同1万3,089平方メートル▽小金井市がS造、地下1階・地上6階、同1万8,896平方メートル▽湖南市がS造、地上4階、同1万1,000平方メートル▽山口市がS造・一部SRC造、地下1階・地上6階、同2万4,277平方メートル。
なお、鉄骨系新庁舎のこの10年での完成・建設中・計画は、北海道が8棟▽東北地区が31棟▽関東地区が55棟▽中部地区が21棟▽近畿地区が42棟▽四国地区が15棟▽中国地区が14棟▽九州地区が21棟である。
いつどこで大地震や大災害が起き庁舎が倒壊・損壊し、行政拠点がなくなれば機能がマヒし、自治体が被災住民をサポートできない。もはや財政難・工費高騰で先送りできない。建て替え、耐震化を優先する議論が必要だ。

【加藤 敏雄】