スノウチニュース<№224> 令和5年6月
【鉄骨需要月別統計】
4月鉄骨需要量は39万9,100トン(前年同月比4.5%減)
23暦年(1~4月)需要量134万2,800トン(前年同期比8.8%減)
国土交通省が5月31日発表した「建築物着工統計調査」の2023年4月着工総面積は10,298千平方メ―トル(前年同月比8.6%減)となり、前年同月比では3ヵ月連続減となった。10,000千平方メートル台は2022年8月の10,428千平方メートル以降途切れていた。
建築主別は、▽公共建築物が561千平方メートル(同31.6%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽民間建築物は9,737千平方メートル(同10.2%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
用途別は、▽居住建築物は5,494千平方メートル(同14.1%減)となり、同8ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は4,804千平方メートル(同1.3%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
構造別は、鉄骨建築の▽鉄骨造(S造)が3,912千平方メートル(同3.0%減)となり、同2ヵ月連続減少となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が158千平方メートル(同46.6%減)と減少に転じた。
一方、▽鉄筋コンクリート造(RC造)が2,284千平方メートル(同15.0%減)となり、同2ヵ月連続減少となった。▽木造(W造)が3,882千平方メートル(同6.9%減)となり、同16ヵ月連続減となった。
鉄骨需要換算では、▽S造は39万1,200トン(前年同月比3.0%減)となり、同2ヵ月連続減少となった。▽SRC造は7,900トン(同46.3%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少に転じた。鉄骨造の合計では前月比43.3%増の39万9,100トン(前年同月比4.5%減)となった。
23暦年(1~4月)の需要量は、▽S造が130万600トン(前年同期比9.3%減)、▽SRC造が4万2,200トン(同9.6%増)となり、鉄骨造の合計では134万2,800トン(同8.8%減)となった
22年4月-23年4月 鉄骨需要量の推移
年/月 | S造(TON) | 前年比(%) | SRC造(TON) | 前年比(%) | 鉄骨造計(TON) | 前年比(%) |
4 | 403,100 | 4.0 | 14,700 | 144.8 | 417,800 | -6.1 |
5 | 341,400 | -11.9 | 15,050 | 178.2 | 356,450 | 6.1 |
6 | 424,700 | 3.0 | 6,500 | -25.6 | 431,200 | -9.3 |
7 | 434,900 | 17.5 | 12,300 | 126.0 | 447,200 | 2.4 |
8 | 350,100 | 8.6 | 6,350 | 73 | 356,450 | 19.1 |
9 | 321,600 | -6.1 | 3,700 | -58.7 | 325,300 | -7.5 |
10 | 345,200 | -35.0 | 10,700 | -2.5 | 355,900 | -34.3 |
11 | 345,600 | -0.2 | 8,000 | 13.4 | 353,600 | 0.1 |
12 | 318,600 | -25.5 | 7,150 | -60.6 | 325,750 | -26.9 |
2023/1 | 299,000 | -14.0 | 20,150 | 178.8 | 319,150 | -10.0 |
2 | 343,200 | 3.5 | 2,900 | -74.7 | 346,100 | 0.9 |
3 | 267,200 | -23.9 | 11,250 | 123.3 | 278,450 | -21.9 |
4 | 391,200 | -3.0 | 7,900 | -46.3 | 399,100 | -4.5 |
暦年計(23/1~4) | 1,300,600 | -9.3 | 42,200 | 9.6 | 1,342,800 | -8.8 |
年度計(23/4) | 391,200 | -3.0 | 7,900 | -46.3 | 399,100 | -4.5 |
(国土交通省調べ)
【建築関連統計】
日建連4月総受注額1兆1,194億円(前年同月比20.3%増)
民間工事8,399億1,800万円(同27.1%増)
日本建設業連合会(日建連)が5月29日に発表した会員企業93社の2023年4月分の受注工事総額は1兆1,194億9,400万円(前年同月比20.3%増)となり、1兆円台になり、前年同月比では20.3%の増加となった。うち民間工事が8,399億1,800万円(同27.1%増)となり、大幅な増加となった。官公庁工事が2,627億2,400万円(同0.5%増)となり、前年同月比横ばいとなった。
国内工事が1兆1,085億9,900万円(同20.1%増)となり、大幅な増加となった。民間工事の8,399億1,800万円のうち、▽製造業が1,794億7,500万円(同10.0%減)となり、同3ヵ月連続減となった。▽非製造業が6,604億4,300万円(同43.2%増)となり、大幅な増加となった。
官公庁工事の2,627億2,400万円のうち、▽国の機関が1,546億5,600万円(同16.1%減)となり、3ヶ月ぶりの減少となった。▽地方の機関が1,080億6,800万円(同40.1%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽その他が59億5,700万円(同876.6%増)の大幅増となり、同2ヶ月連続の大幅増加となった。▽海外工事が108億9,500万円(同38.1%増)となり、増加に転じた。
4月分の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が929億3,400万円(前年同月比111.6%増)となり、前年同月比では4ヵ月連続増となった。▽東北が747億3,600万円(同58.6%増)となり、増加に転じた。▽関東が4,251億2,800万円(同28.2%増)となり、同1ヵ月で増加となった。▽北陸が228億8,800万円(同19.9%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
▽中部が1,429億4,900万円(同19.1%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽近畿が1,775億8,500万円(同10.7%増)となり、同5ヵ月連続増となった。▽中国が645億9,700万円(同97.7%増)となり、増加に転じた。▽四国が120億3,100万円(同25.4%増)となり、9ヵ月ぶりに増加に転じた。▽九州が957億 4,400万円(同35.7%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
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4月の粗鋼生産723.9万トン(前年同月比3.1%減)
3月普通鋼建築用52.9万トン(前年同月比6.2%減)
日本鉄鋼連盟は5月22日に発表した2023年4月の銑鉄生産は519.2万トン(前年同月比2.5%減)となり、前年同月比で16ヵ月連続減。粗鋼生産は723.9万トン(同3.1%減)となり、同16ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が527.4万トン(同3.4%減)となり、同16ヵ月連続減、▽電炉鋼が196.5万トン(同2.4%減)となり、同9ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が568.8万トン(同1.6%減)となり、同16ヵ月連続減、▽特殊鋼が155.1万トン(同8.1%減)となり、同15ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は621.2万トン(同6.4%減)となり、同16ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は499.5万トン(同4.4%減)となり、同11ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は121.7万トン(同13.8%減)となり、同15ヵ月連続減となった。
一方、3月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が52万9,000トン(前年同月比6.2%減)。うち▽非住宅が35万0,000トン(同14.6%減)、▽住宅が17万9,000トン(同15.9%増)となった。
22年度(4~3月)の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用が566万2,000トン(前年同期比6.4%減)。うち▽非住宅が404万5,000トン(同9.4%減)となり、▽住宅が161万7,000トン(同2.3%増)となった。
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3月溶接材料の出荷量1万7,583トン(前年同月比3.7%減)
22年度の総出荷量20万8,414トン(前年同期比3.9%減)
日本溶接材料工業会が発表した2023年3月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)は、▽生産量が1万7,963トン(前年同月比10.4%減)となり、前年同月比では5ヵ月連続減。▽出荷量が1万7,583トン(同3.7%減)となり、同6ヵ月連続減。▽在庫量が1万7,848トン(同2.4%増)となり、同13ヵ月連続増となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,186トン(同14.2%減)となり、同5ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が6,274トン(同12.3%減)となり、同2ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,334トン(同0.2%減)となり、同1ヵ月で減少。その他を含む生産量計では1万7,963トン(同10.4%減)となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,091トン(同10.4%減)となり、同1ヵ月で減少。▽FCWが6,096トン(同0.9%減)となり、同8ヵ月連続減。▽溶接棒が2,281トン(同23.6%増)となり、同3ヵ月連続増。その他を含む出荷量計では1万7,583トン(同3.7%減)となった。
在庫量の主な品種は▽SWが6,734トン(同8.7%増)となり、同14ヵ月連続増。▽FCWが6,451トン(同11.0%増)となり、同8ヵ月連続増。▽溶接棒が2,703トン(同26.5%減)となり、同7ヵ月連続減。その他を含む在庫量計では1万7,848トン(同2.4%増)となった。
22年度(4~3月)の総生産量は20万8,399トン(前年同期比4.0%減)となり、総出荷量では20万8,034トン(同4.0%減)。一方、22暦年(1~3月)の総生産量は5万0,770トン(前年同期比7.7%減)となり、総出荷量では5万1,104トン(同3.9%減)。
なお、財務省の貿易統計による3月の輸出量は2,838トン(前年同月比18.5%減)となり、輸入量は6,271トン(同11.7%減)となった。
22年3月-23年3月 溶接材料月別実績表
生産量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
2022暦年 | 3 | 8,376 | 13.6 | 7,162 | 23.7 | 2,339 | 8.4 | 20,053 | 12.6 |
2022年度 | 4 | 7,017 | ▼5.5 | 5,910 | ▼2.3 | 1,839 | ▼14.3 | 16,997 | ▼7.1 |
5 | 7,022 | ▼4.2 | 5,245 | ▼1.1 | 1,648 | ▼17.4 | 16,178 | ▼4.4 | |
6 | 7,432 | ▼6.5 | 6,208 | ▼4.3 | 1,894 | ▼22.1 | 18,139 | ▼5.9 | |
7 | 7,347 | ▼4.4 | 5,451 | ▼7.0 | 1,994 | ▼10.1 | 17,444 | ▼3.0 | |
8 | 5,788 | ▼9.2 | 5,357 | 16.8 | 1,938 | ▼19.5 | 15,415 | 0.3 | |
9 | 7,657 | 1.9 | 5,777 | ▼5.8 | 2,155 | ▼10.4 | 18,202 | 0.3 | |
10 | 8,130 | 3.9 | 6,078 | ▼5.5 | 2,154 | ▼12.8 | 19,084 | 1.5 | |
11 | 7,734 | ▼2.4 | 6,364 | ▼0.4 | 2,268 | ▼6.2 | 18,896 | ▼1.3 | |
12 | 6,867 | ▼8.3 | 5,419 | ▼9.9 | 2,575 | 7.4 | 17,274 | ▼5.3 | |
2023暦年 | 1 | 6,420 | ▼9.0 | 5,186 | 6.5 | 2,095 | ▼2.1 | 15,800 | ▼4.6 |
2 | 7,090 | ▼6.6 | 5,241 | ▼12.8 | 2,533 | 13.2 | 17,007 | ▼7.5 | |
3 | 7,186 | ▼14.2 | 6,274 | ▼12.3 | 2,334 | ▼0.2 | 17,963 | ▼10.4 | |
2022年度(4~3月) | 計 | 85,690 | ▼5.4 | 68,510 | ▼3.9 | 25,427 | ▼7.9 | 208,399 | ▼4.0 |
2023暦年(1~3月) | 計 | 20,696 | ▼10.1 | 16,701 | ▼7.4 | 6,962 | 4 | 50,770 | ▼7.7 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
出荷量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
2022暦年 | 3 | 7,915 | 8.9 | 6,149 | 13.8 | 1,845 | ▼3.3 | 18,264 | 5.7 |
2022年度 | 4 | 7,190 | ▼20.1 | 5,633 | ▼14.1 | 1,883 | ▼24.6 | 16,806 | ▼14.7 |
5 | 6,796 | ▼2.0 | 5,521 | ▼5.9 | 1,881 | ▼12.3 | 16,289 | ▼4.3 | |
6 | 7,330 | ▼8.2 | 5,693 | ▼10.2 | 2,366 | 6.8 | 18,000 | ▼5.2 | |
7 | 6,903 | ▼6.1 | 5,984 | 7.7 | 1,977 | ▼5.9 | 17,498 | 1.9 | |
8 | 6,360 | ▼6.9 | 5,503 | ▼0.6 | 2,154 | ▼8.1 | 16,497 | ▼2.2 | |
9 | 8,005 | ▼2.7 | 5,948 | ▼1.9 | 2,372 | 10.1 | 18,991 | 0.9 | |
10 | 7,335 | ▼0.6 | 5,722 | ▼9.5 | 2,186 | 7.9 | 17,923 | ▼1.0 | |
11 | 7,630 | 2.3 | 5,821 | ▼1.9 | 2,378 | 3.6 | 18,250 | ▼0.2 | |
12 | 7,073 | ▼8.5 | 5,376 | ▼13.5 | 2,202 | ▼6.2 | 17,056 | ▼8.3 | |
2023暦年 | 1 | 6,282 | ▼13.6 | 5,306 | ▼4.2 | 2,382 | 15.1 | 16,180 | ▼6.9 |
2 | 7,156 | 1.7 | 5,330 | ▼10.4 | 2,340 | 10.3 | 16,961 | ▼3.3 | |
3 | 7,091 | ▼10.4 | 6,096 | ▼0.9 | 2,281 | 23.6 | 17,583 | ▼3.7 | |
2022年度(4~3月) | 計 | 85,151 | ▼5.5 | 67,933 | ▼5.7 | 26,402 | ▼0.4 | 208,034 | ▼4.0 |
2023暦年(1~3月) | 計 | 20,529 | ▼7.6 | 16,732 | ▼5.1 | 7,003 | 6 | 51,104 | ▼3.9 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
「内閣府新庁舎」は清水建設グループで着工
S造、地下2地上12階、延床2.4万平米
永田町の首相官邸から近い千代田区永田町1-6-1の敷地面積約1万7,409平方メートルに「内閣府新庁舎」が7月に建設される。この土地は霞が関官庁街の中心部にあり、<霞が関の最後の一等地>と言われていた場所。明治期に日本赤十字社を創設し、政治家としも名を馳せた佐野常民邸の跡地でもある。
「内閣府新庁舎整備等事業」によると、内閣府と国土交通省がPFI方式による民間事業者選定で、入札価格は約473.4億円で清水建設グループに決定した。PFI構成員は清水建設、太平ビルサービス、綜合警備保障、大新東、シダックス大新東ヒューマンサービス。協力企業に日建設計とニッコクトラストの構成。
新庁舎の規模は、S造(CFT柱)、地下2階・地上12階建て、延べ床面積約2万,647平方メートル。設計は清水建設・日建設計JVと、清水建設一級建築士事務所。施工は清水建設が担当。7月着工し、25年9月完成予定。
新庁舎に入居する官署は内閣官房と内閣府。専用部分床面積は、内閣府・内閣官房が約1万2,073平方メートル、共用部分が約1万1,608平方メートルとなる。
なお、同事業は「内閣府新庁舎」建設・施設整備業務及び維持管理・運営業務と「内閣府庁舎A棟」「中央合同庁舎第8号館」などの改修整備業務、維持管理・運営業務(BTO方式)を実施する。事業期間は契約締結日から2040年3月31日までの約19年間となる。
【建築プロジェクト】
八王子IC北A街区「複合商業施設」は4月着工
S造、地上6階、延床6.3万平米を大成建設が担当
イオンモール、イオンネクストは、東京都八王子市の八王子インターチェンジ北A街区(八王子市滝山町1-885-1ほか)「イオン複合商業施設」の建設を4月着工した。設計・施工は大成建設が担当。2025年春の完成を目指す。全体敷地は約10.2万平方メートルの北側をA街区、南側をB街区に分けて整備する。第1期工事をA街区から着手し、第2期工事(26年春完成)でB街区を整備する計画。B街区の着工や施設規模などは未定。
A街区の計画名称は「八王子インターチェンジ北A街区 複合商業施設」とし、イオンモールとグループのイオンネクストが計画する。中央道八王子ICから約500メートル、JR八王子駅から約3キロの場所に位置する。
施設規模は、S造、地上6階建て、延べ床面積約6万3,331平方メートル。イオンモール、イオンネクストによる物品販売店をはじめ、飲食店、オフィス、保育所、宿泊施設、駐車場・駐輪場などとなっている。特色は、イオンネクストが提案する次世代スーパーと位置付け、AIロボットなどの最先端技術を活用する。ネットショッピングや宅配サービスといった多様な購買ニーズを取り込むハイブリッド型の先進的な店舗形態となる。
また、シネマコンプレックスや障害者スポーツ施設、近隣にある「道の駅・滝山」との連携も構想している。八王子ICから近いという立地特性を生かし、多摩南西部など広域からの集客も期待する。
【時論・公論】
新生団体「鉄骨現場溶接協会」に期待
2021年4月に小規模ながらも一般社団法人「鉄骨現場溶接協会」が設立した。この6月9日に会員23社による第3回定時総会が開かれる。建設関係に携わる数多団体のある中、今なぜ<鉄骨現場溶接>の団体?と思われるが、工事現場という制約のある状況下での高度な溶接技量を要する作業だけに必要不可欠な組織である。
現場溶接での柱溶接は、建築用角形鋼管(BCP、BCR)や4面ボックス、円形鋼管などの閉鎖型柱となっており、その鋼種も板厚もさまざまのため高度な技量が要求される。レ型開先をCO2半自動溶接による多層盛り(パス数)となり、パス間温度の管理や超音波探傷検査(UT検査)の判定、工事日程の厳守。溶接技能者はJIS溶接とAW検定資格(AW検定協議会の「工事現場溶接資格」および「鋼管溶接資格」)を有する技能者に限定されている。
ここで、鉄骨現場溶接協会(現溶協)の原博之会長(原産業・会長)に設立の経緯を聞くと、「ゼネコンによる工事毎に溶接技能者の<技量付加試験制度>が、AW検定協議会による<AW検定資格者>に置き換わるなど情勢が変わると共に柱鋼種の多様化やロボット溶接の導入化などもあり、個々の企業だけでは対応が難しくなった。各方面からの発注先の鉄骨ファブ筋からのアドバイスなどもあり、20年より設立に動き出し、やっとこぎ着けた」。
「今のところ会員23社で、AW検定技能者は290人を超えた。設立時は、ゼネコン筋からは『団体をつくって何をしようとしている。工事単価の話し合いか!』などの声もあったが、請負業務のわれわれには単価の統一などできるはずもない。まずはJIS溶接資格やAW検定資格などの人材確保、資格取得と後継者養成に尽きる」と語る。
鉄骨ファブ工場での溶接ロボット導入化が進んでいる一方、昨今はゼネコンとロボットメーカー共同開発による現場柱溶接ロボットによる省人化も顕著の問いに、原会長は「どの現場溶接ロボットも一長一短ある。その要因は工場内ロボットの延長線上のため、風速3メートルを超えると使えない。半自動溶接ならシールドガスを調整すれば8メートルまで可能だし、UT検査欠陥率でも格段に勝る」と言い、AW検定技能者はロボットを凌ぐと自負する。
溶接技能者は慢性的に不足しており、鉄骨ファブをはじめ造船や橋梁業界でもベトナムなど外国人実習生らで補完してきた。鉄骨現場溶接技能者においても人材確保や育成は喫緊の課題。原会長は「溶接部の品質確保は技能者の技量に負うため、その人材確保とAW資格者育成にかかっている。当面は<現溶協>の基盤づくりと技能者育成が課題」と語り、定時総会では「後期高齢者の私は、最後のご奉公と思って対応したい」と含みを残した。
【加藤 文雄】