スノウチニュース<№221> 令和5年3月
【鉄骨需要月別統計】
23年1月鉄骨需要量は31万9,150トン(前年同月比10.0%)
22年度(4~1月)は369万1,900トン(前年同期比6.7%減)
国土交通省が2月28日発表した「建築物着工統計調査」の2023年1月着工総面積は9,278千平方メ―トル(前年同月比7.6%増)となり、前年同月比では5ヵ月ぶりの増加となった。10,000千平方メートル割れは5ヵ月連続となった。
建築主別は、▽公共建築物が326千平方メートル(同6.2%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽民間建築物は8,952千平方メートル(同8.2%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。
用途別は、▽居住建築物は5,380千平方メートル(同0.1%減)の微減となり、同5ヵ月連続減となった。▽非居住建築物は3,898千平方メートル(同20.4%増)となり、同5ヵ月ぶりの増加となった。
構造別は、鉄骨建築の▽鉄骨造(S造)が2,990千平方メートル(同14.0%減)となり、同5ヵ月連続減となった。▽鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が403千平方メートル(同178.8%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。
一方、▽鉄筋コンクリート造(RC造)が2,504千平方メートル(同71.5%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。▽木造(W造)が3,296千平方メートル(同5.7%減)となり、同13ヵ月連続減となった。
鉄骨需要換算では、▽S造は29万9,000トン(前年同月比14.0%減)となり、同5ヵ月連続減となった。S造の30万トン割れは20年8月の29万1,400トン以来の低水準となった。▽SRC造は2万0,150トン(同178.8%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。鉄骨造の合計では前月比2.0%減少の31万9,150トン(前年同月比10.0%減)となった。
22年度(4~23年1月)の需要量は、▽S造が358万7,100トン(前年同期比7.4%減)、▽SRC造が10万4,800トン(同28.2%増)となり、鉄骨造の合計では369万1,900トン(同6.7%減)となった。
22年1月-23年1月 鉄骨需要量の推移
年/月 | S造(TON) | 前年比(%) | SRC造(TON) | 前年比(%) | 鉄骨造計(TON) | 前年比(%) |
2022/1 | 347,700 | 9.2 | 7,250 | 50.6 | 354,950 | 27.6 |
2 | 331,400 | 7.5 | 11,500 | 15.9 | 342,900 | 9.9 |
3 | 351,300 | -6.7 | 5,050 | 73.2 | 356,350 | 7.8 |
4 | 403,100 | 4.0 | 14,700 | 144.8 | 417,800 | -6.1 |
5 | 341,400 | -11.9 | 15,050 | 178.2 | 356,450 | 6.1 |
6 | 424,700 | 3.0 | 6,500 | -25.6 | 431,200 | -9.3 |
7 | 434,900 | 17.5 | 12,300 | 126.0 | 447,200 | 2.4 |
8 | 350,100 | 8.6 | 6,350 | 73 | 356,450 | 19.1 |
9 | 321,600 | -6.1 | 3,700 | -58.7 | 325,300 | -7.5 |
10 | 345,200 | -35.0 | 10,700 | -2.5 | 355,900 | -34.3 |
11 | 345,600 | -0.2 | 8,000 | 13.4 | 353,600 | 0.1 |
12 | 318,600 | -25.5 | 7,150 | -60.6 | 325,750 | -26.9 |
2023/1 | 299,000 | -14.0 | 20,150 | 178.8 | 319,150 | -10.0 |
暦年計(23/1) | 299,000 | -14.0 | 20,150 | 178.8 | 319,150 | -10.0 |
年度計(22/4~(23/1) | 3,587,100 | -7.4 | 104,800 | 28.2 | 3,691,900 | -6.7 |
(国土交通省調べ)
【建築関連統計】
日建連23年1月総受注額9,697億円(前年同月比16.5%減)
民間工事6,896億6,950万円(前年同月比11.7%減)
日本建設業連合会(日建連)が2月27日に発表した会員企業94社の2023年1月分の受注工事総額は9,697億2,000万円(前年同月比16.5%減)となり、1ヵ月で1兆円台を割った。前年同月比でも1ヵ月で減少となった。うち民間工事が6,896億6,950万円(同11.7%減)となり、同1ヵ月で減少となった。官公庁工事が2,550億9,000万円(同22.5%減)となり、同1ヵ月で減少となった。
国内工事が9,450億4,200万円(同15.1%減)となり、同1ヵ月で減少となった。民間工事の6,896億9,500万円のうち、▽製造業が1,433億2,800万円(同12.8%増)となり、同3ヵ月連続増となった。▽非製造業が5,463億6,700万円(同16.5%減)となり、同3ヵ月連続減となった。
官公庁工事の2,550億9,000万円のうち、▽国の機関が1,926億8,400万円(同13.5%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽地方の機関が624億0,600万円(同41.2%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽その他が2億5,700万円(同88.7%減)の大幅減となり、同5ヵ月ぶりの減少となった。▽海外工事が246億7,800万円(同49.4%減)の大幅減となり、同3ヵ月連続減となった。
22年度(4~1月)の受注工事総額が12兆4,341億0,600万円(前年同期比11.4%増)となり、うち▽民間工事額が8兆9,625億0,300万円(同12.8%増)、▽官公庁工事が2兆8,534億2,700万円(同1.9%減)、▽海外工事が5,570億6,800万円(同96.8%増)となった。
1月分の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が446億7,900万円(前年同月比28.5%増)となり、前年同月比では3ヵ月ぶりの増加となった。▽東北が484億9,200万円(同16.0%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽関東が3,177億6,300万円(同43.6%減)となり、同6ヵ月ぶりの減少となった。▽北陸が493億7,000万円(同156.5%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
▽中部が1,098億2,100万円(同20.8%減)となり、同3ヵ月ぶりの減少となった。▽近畿が2,160億8,800万円(同17.4%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽中国が620億8,000万円(同247.9%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。▽四国が188億9,100万円(同8.0%減)となり、同6ヵ月連続減となった。▽九州が778億5,300万円(同1.6%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。
*
23年1月粗鋼生産722.2万トン(前年同月比6.9%減)
12月普通鋼建築用44.4万トン(前年同月比5.7%減)
22暦年普通鋼建築用受注量584万7,415トン(前年比1.4%減)
日本鉄鋼連盟は2月22日に発表した2023年1月の銑鉄生産532.6万トン(前年同月比8.2%減)となり、前年同月比で13ヵ月連続減となった。粗鋼生産は722.2万トン(同6.9%減)となり、同13ヵ月連続減となった。
炉別生産では、▽転炉鋼が543.1万トン(同6.9%減)となり、同13ヵ月連続減。▽電炉鋼が179.1万トン(同6.9%減)となり、同6ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が560.2万トン(同5.0%減)となり、同13ヵ月連続減。▽特殊鋼が162.0万トン(同12.9%減)となり、同12ヵ月連続減となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は627.3万トン(同6.5%減)となり、同13ヵ月連続減となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は495.0万トン(同5.2%減)となり、同8ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は132.3万トン(同11.0%減)となり、同12ヵ月連続減となった。
一方、12月の普通鋼鋼材用途別受注量は、▽建築用が44万4,184トン(前年同月比5.7%減)。うち▽非住宅が32万5,099トン(同11.1%減)、▽住宅が11万9,085トン(同12.9%増)となった。
22年度(4~12月)の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用が431万0,289トン(前年同期比4.4%減)。うち▽非住宅が314万3,126トン(同5.4%減)となり、▽住宅が116万7,163トン(同1.8%減)となった。
22暦年(1~12月)の用途別受注量では、▽建築用が584万7,415トン(前年同期比1.4%減)。うち▽非住宅が428万7,978トン(同2.1%減)となり、▽住宅が155万9,437トン(同0.4%増)となった。
*
12月溶接材料の出荷量1万7,056トン(前年同月比8.3%減)
22暦年(1~12月)総出荷量21万0,505トン(前年同期比2.0%減)
日本溶接材料工業会が発表した2022年12月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)は、▽生産量が1万7,274トン(前年同月比5.3%減)となり、前年同月比では2ヵ月連続減。▽出荷量が1万7,056トン(同8.3%減)となり、同3ヵ月連続減。▽在庫量が1万7,679トン(同13.2%増)となり、同10ヵ月連続増となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が6,867トン(同8.3%減)となり、同2ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,419トン(同9.9%減)となり、同4ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が2,575トン(同7.4%増)となり、同9ヵ月ぶりの増加。その他を含む生産量計では1万7,274トン(同5.3%減)となった。
出荷量の主な品種は▽SWが7,073トン(同8.5%減)となり、同1ヵ月で減少。▽FCWが5,376トン(同13.5%減)となり、同5ヵ月連続減。▽溶接棒が2,202トン(同6.2%減)となり、同4ヵ月ぶりの減少。その他を含む出荷量計では1万7,056トン(同8.3%減)となった。
在庫量の主な品種は▽SWが6,507トン(同20.7%増)となり、同11ヵ月連続増。▽FCWが6,421トン(同18.6%増)となり、同5ヵ月連続増。▽溶接棒が2,744トン(同8.4%減)となり、同4ヵ月連続減。その他を含む在庫量計では1万7,679トン(同13.2%増)となった。
22年度(4~12月)の総生産量は15万7,629トン(前年同期比2.8%減)となり、総出荷量では15万7,310トン(同3.8%減)。一方、22暦年(1~12月)の総生産量は21万2,637トン(前年同期比0.2%増)となり、総出荷量は21万0,505トン(同2.0%減)となった。
なお、財務省の貿易統計による12月の輸出量は2,737トン(前年同月比7.5%減)となり、輸入量は5,5
02トン(同11.6%減)となった。
21年12月-22年12月 溶接材料月別実績表
生産量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
12 | 7,490 | 12.9 | 6,017 | 13.6 | 2,396 | 44.3 | 18,249 | 14.0 | |
2022暦年 | 1 | 7,060 | 17.1 | 4,866 | ▼9.0 | 2,141 | 18.7 | 16,564 | 7.4 |
2 | 7,592 | 12.0 | 6,011 | 6.5 | 2,236 | 12.8 | 18,387 | 8.9 | |
3 | 8,376 | 13.6 | 7,162 | 23.7 | 2,339 | 8.4 | 20,053 | 12.6 | |
2022年度 | 4 | 7,017 | ▼5.5 | 5,910 | ▼2.3 | 1,839 | ▼14.3 | 16,997 | ▼7.1 |
5 | 7,022 | ▼4.2 | 5,245 | ▼1.1 | 1,648 | ▼17.4 | 16,178 | ▼4.4 | |
6 | 7,432 | ▼6.5 | 6,208 | ▼4.3 | 1,894 | ▼22.1 | 18,139 | ▼5.9 | |
7 | 7,347 | ▼4.4 | 5,451 | ▼7.0 | 1,994 | ▼10.1 | 17,444 | ▼3.0 | |
8 | 5,788 | ▼9.2 | 5,357 | 16.8 | 1,938 | ▼19.5 | 15,415 | 0.3 | |
9 | 7,657 | 1.9 | 5,777 | ▼5.8 | 2,155 | ▼10.4 | 18,202 | 0.3 | |
10 | 8,130 | 3.9 | 6,078 | ▼5.5 | 2,154 | ▼12.8 | 19,084 | 1.5 | |
11 | 7,734 | ▼2.4 | 6,364 | ▼0.4 | 2,268 | ▼6.2 | 18,896 | ▼1.3 | |
12 | 6,867 | ▼8.3 | 5,419 | ▼9.9 | 2,575 | 7.4 | 17,274 | ▼5.3 | |
2022年度 (4~12月) |
計 | 64,994 | ▼3.7 | 51,809 | ▼2.7 | 18,465 | ▼11.6 | 157,629 | ▼2.8 |
2022暦年 (1~12月) |
計 | 88,022 | 0.4 | 69,848 | ▼0.3 | 25,181 | ▼6.1 | 212,637 | 0.2 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
出荷量 | 単位/トン | ||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比 % |
フラックス入りワイヤ | 前年比 % |
被 覆 溶接棒 |
前年比 % |
合 計 | 前年比 % |
12 | 7,738 | 8.3 | 6,220 | 10.8 | 2,348 | 22.4 | 18,614 | 9.4 | |
2022暦年 | 1 | 7,271 | 4.9 | 5,540 | ▼5.8 | 2,069 | 12.6 | 17,387 | 2.0 |
2 | 7,039 | 2.8 | 5,951 | 4.6 | 2,121 | 6.7 | 17,544 | 4.1 | |
3 | 7,915 | 8.9 | 6,149 | 13.8 | 1,845 | ▼3.3 | 18,264 | 5.7 | |
2022年度 | 4 | 7,190 | ▼20.1 | 5,633 | ▼14.1 | 1,883 | ▼24.6 | 16,806 | ▼14.7 |
5 | 6,796 | ▼2.0 | 5,521 | ▼5.9 | 1,881 | ▼12.3 | 16,289 | ▼4.3 | |
6 | 7,330 | ▼8.2 | 5,693 | ▼10.2 | 2,366 | 6.8 | 18,000 | ▼5.2 | |
7 | 6,903 | ▼6.1 | 5,984 | 7.7 | 1,977 | ▼5.9 | 17,498 | 1.9 | |
8 | 6,360 | ▼6.9 | 5,503 | ▼0.6 | 2,154 | ▼8.1 | 16,497 | ▼2.2 | |
9 | 8,005 | ▼2.7 | 5,948 | ▼1.9 | 2,372 | 10.1 | 18,991 | 0.9 | |
10 | 7,335 | ▼0.6 | 5,722 | ▼9.5 | 2,186 | 7.9 | 17,923 | ▼1.0 | |
11 | 7,630 | 2.3 | 5,821 | ▼1.9 | 2,378 | 3.6 | 18,250 | ▼0.2 | |
12 | 7,073 | ▼8.5 | 5,376 | ▼13.5 | 2,202 | ▼6.2 | 17,056 | ▼8.3 | |
2022年度 (4~12月) |
計 | 64,622 | ▼4.8 | 51,201 | ▼5.9 | 19,399 | ▼5.3 | 157,310 | ▼3.8 |
2022暦年 (1~12月) |
計 | 86,847 | ▼2.4 | 68,841 | ▼3.5 | 25,434 | ▼3.0 | 210,505 | ▼2.0 |
注:合計はその他の溶接材料を含めたもの。
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
山口市新庁舎は清水建設JVが担当
S造一部SRC造・6階、延床2.4万平米
亀山の麓に建つ山口市新庁舎の建設が2月に着工した。施工者は清水建設・シマダ・鴻城土建工業JVが担当し、2025年3月完成となる。建設地は山口市亀山町2-1(敷地面積約2万1,497平方メートル)となる。新本庁舎完成後の2期工事には市民交流棟と立体駐車場が建設され、全体完成は3棟構成となる。
建築の全体概要は、▽新庁舎棟はS造・一部SRC造、地下1階・地上6階建て、延べ床面積約2万4,277平方メートル。▽市民交流棟はS造・一部RC造、地下1階・地上2階建て、同2,969平方メートル。▽立体駐車場はS造、地上4階建て、同9,039平方メートルとなっている。設計は石本建築事務所が担当。
山口市のHPによると、新庁舎の基本理念を「ひとに、まちに、未来にやさしい」をテーマとし、設計コンセプトは「新しい市役所はあらゆる人々の生活のよりどころになる<市民の丘>」としている。
新本庁舎の配置は、地下1階はエントランスと駐車場、地上1階~3階は各執務エリア、4階は市長室・秘書室、災害対策関連諸室、執務エリア、5階は消防本部・指令室など消防エリア、執務エリア、6階は議会場、議会関連諸室となっている。構造的には、執務エリアは大空間を確保するためロングスパン架構とし、柱の数を最小限にし、構造ブレース(筋交い)を建物コア周りに集中配置し、建物全体の堅牢性を確保している。
本庁舎外観は、各階に設けた庇(ひさし)が重層しているため、市内香山公園内の国宝「瑠璃光寺五重塔」の屋根を想起させ、建物に重厚感を与えている。また、庇が紫外線や雨の影響を受け難く、メンテナンスの役割も持たせ、定期的な点検補修が行いやすく、建物の長寿命化を図るとしている。
本庁舎に隣接する市民交流棟の配置は、地下1階はエントランスと多目的スペース、地上1階はメインエントランス、市民交流ラウンジとコンビニエンスストア、2階も市民交流ラウンジとカフェ店舗となっている。
【時論・公論】
「全構協」の創成期を偲ぶ
鉄骨ファブリケーター(鉄骨ファブ)の一般社団法人全国鉄構工業協会(全構協)は7月2日に設立50周年を迎える。全構協、前身の全国鉄構工業連合会(全構連)は1973年に設立し、81年に建設省・通産省共管の社団法人化となる。後に全構協と改組し、13年に一般社団法人になる。ここ数年の会員数2,200社前後で推移する。
鉄骨建築は67年にH形鋼が生産され、鉄骨の柱・梁材に多用されると鉄骨ディテールや製作工程が一変する。リベット接合から溶接と高力ボルト接合となり、鉄骨製作は穴あけ・切断の加工ラインと自動化溶接へと変貌する。
未組織だった鉄骨ファブが、66年の熊本県や埼玉県で協同組合の設立を皮切りに福岡市や福井県など各地で組織化の動きとなる。この動きに川鉄建材工業の島田喜一郎社長が「川建協力会」の鉄骨ファブや新日本製鉄傘下らにも呼び掛け、各地域で大同団結の会合が開かれ、そのうねりが全国団体「全構連」の設立へとつながる。
79年に鉄骨ファブ業界を取材した時に、全構連共済活動に尽力した兵庫県鉄工建設業協同組合の足立金志事務局長は「島田社長が損得抜きで組織化に邁進したお陰で実現した。今は工場認定制度が定着する業界になった。兵庫県は新日鉄系も多く、川鉄系との商権争いもあって組合づくりにはしんどかった」と苦労話を吐露する。
また、全構連副会長を務めた大阪鉄構建設業協同組合の汲川圭司理事長は「1.5万社とも2万社とも言われた鉄骨ファブが5千社の全国団体をつくった。田中総理が<数は力だ>と言ったが、この数なら設計・ゼネコンとも対等にものが言える」と自負し、「下請けで甘んじていたが地位向上と適正価格への弾みになる」と強調していた。
工場認定制に貢献した愛知県鉄構工業協同組合の川原登志雄事務局長は「設立当時は鋼材不足で<鉄よこせ運動>や低単価期でもあり、不況対策から<自主工場認定>を実施したため多くが組合員なった。アウトサイダーも<大臣認定工場>から加入してきた。組員同士が交流すれば無駄な競争が無くなる」とも言っていた。
80年に全構連の専務理事に就任した笹倉徹氏(新日鉄出身)は「鉄骨業界は1兆円を超える規模の業界。これからは高層・超高層化する建築界にあって成長産業である。<工場認定制>と鉄骨ファブの技能者・技術者の育成が品質向上と適正価格の実現、業界発展と地位向上となる」と述べ、「私はミルとの橋渡し役を担う」と語った。
この半世紀、鉄骨業界は大きく変貌し全構協も確固たる実績を築いてきた。7月12日に開催する「創立50周年式典」が挙行される。これまで業界内外の先人たち残した<理念と政策を継承>し、益々の発展を祈願します。
【加藤 文雄】