スノウチニュース<№202> 令和3年8月
【鉄骨需要月別統計】
6月鉄骨需要量は42万1,150トン(前年同月比14.1%増)
21年1~6月は222万8,650トン(前年同月比8.8%増)
国土交通省が7月30日発表した「建築物着工統計調査」の2021年6月着工総面積は10,850千平方メ―トル(前年同月比9.3%増)となり、前年同月比で4ヵ月連続増となった。10,000千平方メートル超えも4ヵ月連続となった。
▽建築主別は、▽公共建築物が298千平方メートル(同46.1%減)となり、同6ヵ月ぶりの減少となった。▽民間建築物は10,552千平方メートル(同12.6%増)となり、同4ヵ月連続増となった。
▽用途別は、▽居住建築物は6,575千平方メートル(同7.3%増)となり、同4ヵ月連続増となった。▽非居住建築物は4,275千平方メートル(同12.6%増)となり、同4ヵ月連続増となった。
▽構造別は、▽鉄骨建築のS造が4,124千平方メートル(同13.0%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽SRC造が175千平方メートル(同106.2%増)の大幅増となり、同6ヵ月ぶりの増加となった。
一方、▽RC造が1,613千平方メートル(同4.1%減)となり、同1ヵ月で減少となった。▽W造が4,862千平方メートル(同9.5%増)となり、同3ヵ月で連続増となった。
▽鉄骨需要換算では、S造は41万2,400トン(前年同月比13.0%増)となり、同6ヵ月連続増となった。SRC造は8,750トン(同106.2%増)の大幅増となり、同6ヵ月ぶりの増加となった。鉄骨造計では前月比7.2%増の42万1,150トン(前年同月比14.1%増)となった。
なお、21年(1~6月)では、S造が219万0,900トン(前年同期比9.6%増)、SRC造が3万7,800トン(同22.5%減)となり、鉄骨造合計では222万8,650トン(同8.8%増)となった。
20年6月-21年6月 鉄骨需要量の推移
年/月 | S造(TON) | 前年比(%) | SRC造(TON) | 前年比(%) | 鉄骨造計(TON) | 前年比(%) |
6 | 364,800 | -14.8 | 4,250 | 12.9 | 369,050 | -14.6 |
7 | 354,300 | -25.5 | 2,100 | -67.8 | 356,400 | -26.1 |
8 | 291,400 | -30.8 | 2,700 | 7.8 | 294,100 | -30.6 |
9 | 336,800 | -3.3 | 12,550 | 64.8 | 349,350 | -1.8 |
10 | 328,400 | -10.7 | 5,350 | -2.9 | 333,750 | -1.8 |
11 | 300,000 | -14.5 | 14,300 | 208.6 | 314,300 | -11.6 |
12 | 338,000 | -16.1 | 11,300 | 109.7 | 349,300 | -14.4 |
2021/1 | 318,300 | 19.6 | 4,800 | -10.0 | 323,100 | 19.0 |
2 | 308,300 | 2.8 | 9,900 | -4.9 | 318,200 | 2.5 |
3 | 376,700 | 3.6 | 2,900 | -41.4 | 379,600 | 2.9 |
4 | 387,600 | 8.3 | 6,000 | -39.7 | 393,600 | 8.5 |
5 | 387,600 | 10.1 | 5,400 | -62.6 | 393,000 | 7.4 |
6 | 412,400 | 13.0 | 8,750 | 106.2 | 421,150 | 14.1 |
暦年計(21/1~6) | 2,190,900 | 9.6 | 37,750 | -22.5 | 2,228,650 | 8.8 |
年度計(21/4~6) | 1,187,600 | 10.5 | 20,200 | -29.6 | 1,207,800 | 10.0 |
(国土交通省調べ)
【建築関連統計】
日建連6月総受注額約1兆3,640.2億円(前年同月比33.8%増)
民間工事は9,001億4,800万円(前年同月比34.1%増)
日本建設業連合会(日建連)が7月29日に発表した会員企業95社の2021年6月受注工事総額は1兆3,640億1,800万円(前年同月比33.8%増)となり、前年同月比で6ヵ月連続増となった。うち民間工事が9,001億4,800万円(同34.1%増)となり、同6ヵ月連続増となった。官公庁工事が4,031億9,400万円(同21.3%増)となり、同10ヵ月連続増となった。
国内工事が1兆3,096億3,000万円(同30.4%増)となり、同9ヵ月連続増となった。民間工事の9,001億4,800万円のうち、▽製造業が1,467億1,000万円(同69.9%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽非製造業が7,534億3,800万円(同28.9%増)となり、同6ヵ月連続増となった。
官公庁工事の4,031億9,400万円のうち、▽国の機関が2,235億9,900万円(同20.8%増)となり、同13ヵ月連続増となった。▽地方の機関が1,795億9,500万円(同21.9%増)となり、同1ヵ月で増加となった。▽その他が62億8,800万円(同793.2%増)となり、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽海外工事が543億8,800万円(同245.3%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。
21年度4~6月の受注工事総額が2兆8,462億9,200万円(前年同期比21.2%増)となり、▽民間工事額が18,656億9,400万円(同20.2%増)、▽官公庁工事が8,964億3,100万円(同19.1%増)、▽海外工事が754億5,000万円(同193.9%増)となった。
一方、6月の地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道が678億6,600万円(前年同月比6.0%増)となり、前年同期比で4ヵ月ぶりの増加となった。▽東北が1,083億7,000万円(同6.8%減)となり、同2ヵ月連続減となった。▽関東が4,881億5,000万円(同10.1%増)となり、同6ヵ月連続増となった。▽北陸が396億6,400万円(同17.8%減)となり、同2ヵ月連続減となった。
▽中部が1,360億6,200万円(同56.3%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽近畿が2,389億7,300万円(同126.3%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽中国が997億8,100万円(同124.8%増)となり、同2ヵ月連続大幅増となった。▽四国が193億4,100万円(同7.3%増)となり、同2ヵ月連続増となった。▽九州が1,114億3,800万円(同44.6%増)の大幅増となり、同2ヵ月連続増となった。
*
6月粗鋼生産810.8万トン(前年同月比44.4%増)
1~6月粗鋼生産4,806万トン(前年同期比13.8%増)
5月普通鋼建築用50.6万トン(前年同月比20.9%増)
日本鉄鋼連盟は7月21日に発表した2021年6月の銑鉄生産は582.3万トン(前年同月比39.1%増)となり、前年同月比で4ヵ月連続増。21年1~6月で3,522.3万トン(前年同期比10.4%増)となった。粗鋼生産は810.8万トン(同44.4%増)となり、同4ヵ月連続増。1~6月で4,805.7万トン(同13.8%増)となった。
炉別生産 では、▽転炉鋼が600.4万トン(前年同月比47.4%増)となり、同4ヵ月連続増。▽電炉鋼が210.4万トン(同36.4%増)となり、同4ヵ月連続増となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が627.1万トン(同36.3%増)となり、同4ヵ月連続増。▽特殊鋼が183.7万トン(同81.0%増)となり、同4カ月連続増となった。
▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産711.3万トン(同40.8%増)となり、同4ヵ月連続増となった。1~6月で4,189.2万トン(同12.8%増)となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は553.9万トン(同31.1%増)となり、同4ヵ月連続増となった。1~6月で3,255.2万トン(同8.7%増)となった。
▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は157.4万トン(同90.9%増)となり、同6ヵ月連続増となった。1~6月で933.9万トン(同29.8%増)となった。
一方、5月の普通鋼鋼材用途別受注量では、▽建築用は50万6,133トン(同20.9%増)となった。うち▽非住宅が39万6,489トン(同32.5%増)となり、▽住宅が10万9,644トン(同8.9%減)となった。
なお、21年1~5月の建築用は218万1,551トン(前年同期比12.0%増)となった。うち▽非住宅が155万5,610トン(同16.9%増)となり、▽住宅が62万5,830トン(同0.0%)となった。
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5月溶接材料の出荷量1万7,016トン(前年同月比6.7%増)
21年(1~5月)の出荷量8万7,891トン(前年度比1.0%減)
日本溶接材料工業会が発表した2021年5月の溶接材料実績(生産・出荷・在庫)では、生産量は1万6,917トン(前年同月比14.7%増)の前年同期比17ヵ月ぶりの増加。出荷量は1万7,016トン(同6.7%増)の同2ヵ月連続増。在庫量は1万5,511トン(同25.7%減)となり、同7ヵ月連続減となった。
生産量の主な品種は▽ソリッドワイヤ(SW)が7,329トン(同32.8%増)の同2ヵ月連続増。▽フラックス入りワイヤ(FCW)が5,302トン(同0.7%減)の同17ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒が1,994トン(同15.5%減)となった。その他を含む生産量計では1万6,917トン(同14.7%増)となり、同17ヵ月ぶりの増加となった。
出荷量の主な品種は▽SWが6,937トン(同24.6%増)となり、同2ヵ月連続増。▽FCWが5,865トン(同2.8%増)の同2ヵ月連続増。▽溶接棒が2,146トン(同6.0%増)の同2ヵ月連続増となった。その他を含む出荷量計では1万7,016トン(同6.7%増)の同2ヵ月連続増となった。
在庫量の主な品種は▽SWが5,611トン(同28.5%減)の同5ヵ月連続減。▽FCWが5,475トン(同21.0%減)の同6ヵ月連続減。▽溶接棒が2,084トン(同34.6%減)の同9ヵ月連続減となった。その他を含む在庫量計では1万5,511トン(同25.7%減)の同7ヵ月連続減となった。
21年(1~5月)の生産量は8万5,327トン(前年同期比5.4%減)となり、出荷量は8万7,891トン(同1.0%減)となった。
20年5月-21年5月 溶接材料月別実績表
生産量 | |||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比% | フラックス入りワイヤ | 前年比% | 被覆溶接棒 | 前年比% | 合 計 | 前年比% |
2020年 | 5 | 5,519 | ▼29.1 | 5,340 | ▼28.0 | 1,726 | ▼28.7 | 14,746 | ▼28.7 |
6 | 5,008 | ▼44.6 | 6,744 | ▼3.8 | 2,121 | ▼14.6 | 16,417 | ▼21.8 | |
7 | 5,091 | ▼48.7 | 6,212 | ▼26.0 | 2,227 | ▼3.8 | 16,173 | ▼31.5 | |
8 | 5,064 | ▼31.4 | 4,921 | ▼17.6 | 1,615 | ▼24.6 | 13,828 | ▼24.6 | |
9 | 57,17 | ▼36.6 | 6180 | ▼22.4 | 1775 | ▼26.7 | 15,740 | ▼29.6 | |
10 | 6,997 | ▼22.9 | 5,829 | ▼27.9 | 1,728 | ▼25.6 | 17,120 | ▼23.5 | |
11 | 7,528 | ▼16.6 | 5,855 | ▼20.3 | 1,845 | ▼9.2 | 17,429 | ▼17.8 | |
12 | 6,637 | ▼24.1 | 5,297 | ▼27.1 | 1,660 | ▼30.0 | 16,014 | ▼25.3 | |
2021年 | 1 | 6,028 | ▼18.5 | 5,346 | ▼20.2 | 1,803 | ▼13.5 | 15,419 | ▼17.9 |
2 | 6,781 | ▼8.1 | 5,644 | ▼16.9 | 1,982 | 2.2 | 16,888 | ▼8.0 | |
3 | 7,372 | ▼3.6 | 5,788 | ▼20.2 | 2,157 | ▼7.0 | 17,809 | ▼9.2 | |
2021年度 | 4 | 7,426 | 4.2 | 6,047 | ▼10.7 | 2,145 | 0.0 | 18,294 | ▼2.3 |
5 | 7,329 | 32.8 | 5,302 | ▼0.7 | 1,994 | 15.5 | 16,917 | 14.7 | |
2021年度(4~5月) | 計 | 14,755 | 14.2 | 11,349 | ▼6.3 | 4,139 | 6.9 | 35,211 | 5.2 |
2021年(1-5月) | 計 | 34,936 | ▼1.1 | 28,127 | ▼14.2 | 10,081 | ▼1.3 | 85,327 | ▼5.4 |
単位/トン
出荷量 | |||||||||
年/年度 | 月 | ソリッドワイヤ | 前年比% | フラックス入りワイヤ | 前年比% | 被覆溶接棒 | 前年比% | 合 計 | 前年比% |
2020年 | 5 | 5,569 | ▼33.1 | 6,037 | ▼17.5 | 2,024 | ▼13.0 | 15,949 | ▼23.5 |
6 | 5,581 | ▼35.3 | 6,525 | ▼12.3 | 2,162 | ▼10.8 | 16,863 | ▼20.2 | |
7 | 4,948 | ▼48.2 | 5,948 | ▼26.9 | 2,044 | ▼11.1 | 15,937 | ▼31.0 | |
8 | 5,306 | ▼31.7 | 5,363 | ▼17.6 | 1,914 | ▼11.6 | 15,027 | ▼22.7 | |
9 | 6,374 | ▼28.3 | 6,089 | ▼19.5 | 2,028 | ▼14.3 | 16,579 | ▼23.2 | |
10 | 6,710 | ▼21.2 | 5,757 | ▼26.1 | 1,900 | ▼11.0 | 16,897 | ▼23.2 | |
11 | 7,171 | ▼10.5 | 5,929 | ▼18.9 | 1,814 | ▼11.7 | 17,209 | ▼15.0 | |
12 | 7,143 | ▼16.9 | 5,615 | ▼25.1 | 1,918 | ▼23.9 | 17,022 | ▼21.3 | |
2021年 | 1 | 6,932 | ▼1.0 | 5,878 | ▼15.3 | 1,838 | ▼17.4 | 17,053 | ▼9.1 |
2 | 6,847 | ▼1.1 | 5,689 | ▼12.7 | 1,988 | ▼2.2 | 16,851 | ▼5.4 | |
3 | 7,266 | ▼1.5 | 5,404 | ▼21.8 | 1,907 | ▼10.4 | 17,271 | ▼8.0 | |
2021年度 | 4 | 7,996 | 20.7 | 6,561 | 1.4 | 2,497 | 32.5 | 19,700 | 12.6 |
5 | 6,937 | 24.6 | 5,865 | 2.8 | 2,146 | 6.0 | 17,016 | 6.7 | |
2021年度(4~5月) | 計 | 14,933 | 22.4 | 12,426 | ▼0.6 | 4,643 | 18.8 | 36,716 | 9.8 |
2021年(1-5月) | 計 | 35,978 | 7.4 | 29,397 | ▼10.6 | 10,376 | 0.8 | 87,891 | ▼1.0 |
単位/トン
日本溶接材料工業会
【建築プロジェクト】
中之島の未来医療国際拠点開発「未来医療R&Dセンター」
S造・17階建て、延床5.8万平米、大林・フジタJV
大阪市は北区中之島の再生医療を中心とした未来医療の国際拠点となる「中之島4丁目未来医療国際拠点開発」の「未来医療R&Dセンター」の事業体を日本生命保険、京阪ホールディング、関電不動産開発に決めた。
複合研究施設となる「未来医療R&Dセンター」と隣接する医療・健診施設の「未来医療MEDセンター」との2棟構成となり、両棟の1、2階部分がつながっている部分が交流施設の「中之島国際フォーラム」となる。
「未来医療R&Dセンター」の建設地は北区中之島4-32-12、敷地面積約8,600平方メートル。建築規模は地上17階建て、延べ床面積約5万8,000平方メートル。設計は大林組、施工は大林組・フジタJV。8月に着工し、24年1月完成の予定。
同R&Dセンターは、▽オフィスが約1万4,600平方メートル▽研究開発支援施設が約4,100平方メートル▽交流促進施設約500平方メートルとなり、オフィスには未来医療国際拠点の活動と関わりのある企業や研究機関などの入居を想定している。研究開発支援施設の部分は、治験関連施設やインキュベートスペース、産学医連携のためのスモールオフィスやコワークスペースなどを備える。
隣接するMEDセンターは、先端医療や治験を通じた未来医療の実践の場で、▽病院施設(約170床)が約1万2,000平方メートル▽クリニックが約3,600平方メートルとなり、最新の検査機器や高度な健診技術を活用した高精度の健診サービスの高度健診センターで構成する。
国際フォーラムは、イベントや国際学会、国際会議の場として活用するスペースで、コミュニティーカフェや企業ショールームなどの▽交流促進施設が約1,200平方メートル▽カンファレンスセンターが約1,700平方メートルとなる。周辺の施設や街区とつながる緑道やデッキ、施設内を通り抜けできる通路を設け、歩行者の利便性向上や交流と賑わいの創出にも配慮した施設計画となっている。
東急不動産ら/札幌すすきの駅前複合開発
S造18階、5万平米は竹中工務店で着工
東急不動産は、竹中工務店、イトーヨーカ堂、アインファーマシーズ、キタデンとの共同プロジェクトによる「札幌すすきの駅前複合開発計画」(札幌市中央区南4条西4-1-1、ススキノラフィラ跡地)で大型複合施設工事を竹中工務店の設計・施工で着手し、23年秋の完成予定。
同開発の建設は、敷地面積約5,157平方メートルに建築面積約4,725平方メートル。建築規模は、S造・一部RC造、地下2階・地上18階建て、延べ床面積約5万3,378平方メートル、高さ78メートルの規模となる。地下2階~地上4階を商業施設、シネマコンプレックス(複合映画館)を5~7階に設ける。7~18階が約470室のホテルになる。駐車台数は71台。
また、1階に路線バス待合所を設け、すすきの交差点に面する2、3階に屋内外広場を整備するほか、地下部分は札幌市営地下鉄すすきの駅に直結する通路などを設ける。建物上層部の外壁にはガラスカーテンウォールを採用し、街並みの景観に馴染む大型ビルボードも設置する。
連載/あの人、この人(16)
大手ゼネコン副社長のUさん
構造設計者がゼネコンの役員に上り詰める人は稀である。大手ゼネコンでは大阪時代お世話になったT工務店のH氏(2007年4月死去)が構造設計部長から常務取締役に就任した。私が知る限り構造設計の技術者が大手ゼネコンの副社長までになった人はO組のUさんのみだった。そのUさん、今年の役員改選で副社長を退任し、取締役顧問として建築部門をサポートすることになったようだ。
O組のUさんと親しくなるきっかけは、94年12月デベロッパーのMビル設計部建築技術グループ構造担当のⅠ課長と同社応接室にいると、甲高い声と笑い声が聴こえた。Ⅰ課長が「O組のUさんが来ている。Uさん知っているよね。エ~よく知らない、じゃあ後で紹介する」が、Uさんとの出会い。当時のUさんの肩書は<O組・東京本社(文京区本郷)設計本部設計第十二部課長>だった。
それまでUさんとは、JASCA(日本建築構造技術者協会)やAW検定委員会などの新年会や会合、技術講習会などの会場で会う程度だったが、MビルⅠ課長の紹介以来、お互いに気さくな話し合いができた。その後、Mビルの応接フロアーでちょくちょく会い親密度を増した。95年4月にMビルⅠ課長の呼びかけで、Uさんと愛知県ファブのT専務、検査会社のM社長とによる韓国・巨済島のS重工業・海洋鉄構事業部の鉄構工場視察を通し、探求心旺盛で社交的なUさんの人柄にも惚れ込んだ。
ある時、Uさんが私に、「実は、まだ正式に決まったわけではないが、建築営業に異動する話があって迷っている。構造の技術屋が営業できるか~」と、唐突な人事異動の話に驚いた。何でもテキパキとこなす豪放磊落なUさんが門外漢の私に吐露するとは相当悩んでいると思うと同時に、大手企業の人事異動で技術職から営業職への異動とは珍しくもあった。この時のUさんは既に設計本部第十二部副部長職にあった。将来、設計本部を担うことになると思っていたが、営業部門とは意外な話だった。
だが、体育会系で実直さと行動力のあるUさんのこと、構造設計の専門知識を活用すれば以外に性に合っていると思った。そこで、「昨今、コンピューターの営業は技術知識を持ったセールスエンジニアが主流だし、デパート美術部の学芸員が外商部門に移って売上業績を挙げた例もある。技術力を持つ建築営業マンなら<鬼に金棒>ですよ。迷わないで決断した方がいいかも」と答えた。Uさんは「あなたも、そう思うかね。構造設計にも思い入れがあるが、心機一転営業で頑張ってみるか」と納得したようだ。その後、どんな経緯になったか定かでないが、Uさんは営業部門に転じた。
前述のMビルは、2000年3月から六本木6丁目再開発に着手し、メインの超高層ビル「Mタワー」が大径CFT柱によるS造・SRC造、地下6階・地上54階・塔屋2層建て、延べ床面積約38万平方メートルの施工をO組・K建設JVが担当し、03年3月竣工した。この一大プロジェクトをUさんらによるセールスエンジニアリグが奏効したことは間違いない。
建築営業幹部となったUさんの話題は、MビルのⅠ副部長によれば、「大手ゼネコンのプレゼンテーションでは、T建設の提案内容が一番素晴らしい。だが、最も信頼できるプレゼンはO組となる。コストや納期の明確さ、さらに下請け業者を含めた技術提案(現在のECI方式)に説得力があり、当社役員もO組の評価は高い」と、Uさんらのプレゼンの実績や施工の功績を認めているようだった。
一方、建設省(現・国土交通省)大臣官房官庁営繕部のⅠ課長が定年2年後、O組に転職した。そのⅠ氏との会話の中でも「Uさん、あの人のバイタリティは人一倍。率先垂範で、しかも部下の面倒見が良く、評価が高い。将来嘱望間違いない」と太鼓判を押していた。
功成り名遂げた人は、母校からの講演要請がありますが、Uさんも母校・長崎県立上五島高校在校生の前でOB講演をしている。同校HPによると、<(原文のまま)13年11月19日、本校第15回卒業生のU様により「東京スカイツリーの建設~世界一の高さへの挑戦~」の表題にて講演いただきました。U様はO組の専務執行役員を務めていらっしゃいます>と記述している。因みに、東京スカイツリーはN設計の設計、O組の単独施工で08年7月着工、12年2月完成。塔の高さ634メートル、鋼管による鉄骨量は約3万6,000トン。鉄骨製作を受注したのは大手ファブリケーター4社の幹事会社と著名ファブ15工場による共同製作となった。
同母校のHPは更に、<(同)東京スカイツリー建設の一部始終のお話で、映像とともに数々のエピソードを織り交ぜ、解りやすく講演いただきました。歴史に残る壮大な事業を、総指揮を執られたご本人の口から思いを込めて語っていただき、講演が進むにつれて生徒の心に大先輩への尊敬の念と自分の将来への希望と勇気が湧いてくるのが手に取るようにわかりました。(中略)、母校のために時間を割いてご来校くださり、後輩に希望の灯を与えてくださいましたU様には、深く感謝致します>と結んでいる。Uさんの建築功績が在校生へ夢を与えたと讃えている。母校後輩の前で語ったUさんにとっても男冥利のひと時だったと思う。
最後に、Uさんの経歴紹介。1950年9月長崎県の生まれ、長崎県立上五島高校から73年3月日大理工学部建築学科卒、同4月O組入社し、設計本部の構造設計担当。課長、副部長を経て04年東京建築事業部統括部長、07年執行役員副事業部長、10年常務執行役員副事業部長、12年専務執行役員建築事業部長、15年同東京本店長、21年代表取締役副社長、21年取締役顧問。02年「角川書店新本社ビル」で日本免震構造協会賞を受賞など。
O組は一部上場企業▽資本金577.5億円▽創業1892(明治25)年1月(129周年)▽社員9,000人▽売上高2兆円▽うち建築部門1.5兆円▽関連企業120社▽海外拠点21都市▽代表取締役は会長・社長・副社長(2名)の4名のみの頂点。
大手ゼネコンの頂点に達したUさん、あの社交的で豪放磊落の気質をもって、これからも建築部門のご意見番として大いに活躍することを期待する。
【中井 勇】