スノウチニュース<№170>平成30年12月

【鉄骨需要月別統計】
10月鉄骨需要45万0,150トン(前年同月比6.5%増)
18年度(4~10月)315万4,400トン(前年同期比0.3%減)

国土交通省が11月30日発表した「建築物着工統計調査」の2018年10月着工総面積は1万1,604千平方メ―トル(前年同月比0.0%)の前年同月比で同じになった。1千万平方メートルは7ヵ月連続となる。

▽建築主別は、公共建築物が608千平方メートル(同22.0%減)となり、同7ヵ月連続減となる。民間建築物は1万0,996千平方メートル(同1.6%増)となり、微増ながら同3ヵ月ぶりに増加した。1千万平方メートルは同7ヵ月連続となる。

▽用途別は、居住建築物は7,002千平方メートル(同2.3%増)となり、同16ヵ月ぶりに増加した。非居住建築物は4,602千平方メートル(同3.2%減)となり、同3ヵ月連続減となった。

▽構造別は、鉄骨建築のS造は4,402千平方メートル(同7.3%増)となり、同3ヵ月ぶりに増加した。SRC造は199千平方メートル(同19.1%減)となり、同3ヵ月連続減。RC造は1,792千平方メートル(同16.4%減)となり、同8ヵ月連続減。木造は5,124千平方メートル(同1.6%増)となり、微増ながら同17ヵ月ぶりに増加した。

▽鉄骨需要換算では、S造は44万0,200トンとなり、7ヵ月連続で40万トン台を確保した。SRC造は9,950トンとなった。鉄骨建築計では前年同月比6.5%増の45万0,150トンとなり、前月比4.4%増となり、10ヵ月連続で40万トン台を維持した。

なお、18年度(4-10月)のS造は310万7,400トン(前年同期比0.4%増)、SRC造は4万7,000トン(同35.5%減)となり、鉄骨合計では315万4,400トン(同0.3%減)となった。

17年10月-18年10月 鉄骨需要量の推移

S 造 前年比 SRC造 前年比 鉄骨造合計
10 410,300 2.2 12,300 116.8 422,600
11 452,700 9.0 12,900 296.5 465,600
12 365,200 -10.4 6,350 -27.4 371,550
18/1 396,000 -7.1 5,900 -7.7 401,900
2 369,500 -7.6 34,050 44.9 403,550
3 391,600 15.5 10,600  94.6 402,200
4 432,300 -0.7 6,650 -31.6 438,950
5 427,500 -1.9 8,200 -6.8 435,700
6    471,200 -1.7 1,800   -80.9 473,000
7    472,400 8.8 13,000    20.3 485,400
8    438,500 -4.6 1,500   -84.5 440,000
9    425,300 -3.6 5,900   -33.2 431,200
10 440,200 7.3 9,950 -19.1 450,150

(国土交通省調べ)


【建築関連統計】

建築鉄骨5団体が「鉄骨技術者教育センター」を設立
「鉄骨製作管理技術者」など3資格を一元管理・運営へ

建築鉄骨製作の「全国鉄構工業協会」「鉄骨建設業協会」、建築構造設計者の「日本建築構造技術者協会」、鉄骨製作工場評価機関の「全国鉄骨評価機構(全構協系)」「日本鉄骨評価センター(鉄建協系)」の鉄骨関連5団体は、「一般社団法人鉄骨技術者教育センター」を共同で設立した。理事長に甲津功夫大阪大名誉教授が就いた。

鉄骨製作に複数の機関が運営している「鉄骨製作管理技術者」「建築鉄骨製品検査技術者」「建築鉄骨超音波検査技術者」の3資格を2019年4月1日から同センターが一元管理・運営する。また、人材確保・育成に向けた広報活動や技能者、技術者教育にも力を入れる。

鉄骨関連の3資格は、国土交通大臣が認定する鉄骨製作工場の性能評価における資格要件として配置が求められているほか、建築工事の設計事務所やゼネコン(元請け施工者)も鉄骨受入検査のために検査技術者を抱えている。3資格の運営は、全構協と鉄建協を中心に複数の団体が担ってきている。

新たにスタートする鉄骨技術者教育センターには、設立時の5団体のほか、「建築研究所」「日本建設業連合会」「日本建築士連合会」「日本鉄鋼連盟」「日本非破壊検査協会」「日本溶接協会」「AW検定協議会」「CIW検査業協会」も会員として参加した。

現在、3資格は全国で、▽鉄骨製作管理技術者が1万7,055人▽建築鉄骨製品検査技術者が9,419人▽建築鉄骨超音波検査技術者が3,796人。今後、これらの全資格者に対し、認定登録機関変更のお知らせと、19年度からの新しい登録証を送付される。

また、同センターの案内パンフレットを12月中に作成して会員団体や建築行政機関に配布する。19年度の試験は、例年通り、6月と10月の2回実施し、試験内容や継続講習なども変更しない。

全構協と鉄建協の2団体が歩み寄り、同センターを設立した背景には「今でも鉄骨ファブ業界は人材不足をしているし、将来はもっと不足する。業界が結束し、技能・技術者の教育に重点を置いて、鉄骨の魅力を社会に発信していく」(全構協幹部)とし、技能者、技術者の不足に対する強い危機感があるとみられている。

 

日建連10月受注額約9,308億円(前年同月比11.1%減)
民間工事額約6,644億円(前年同期比7.7%減)

日本建設業連合会(日建連)が11月28日に発表した会員企業97社の2018年10月受注工事総額は9,308億2,900万円(前年同月比11.1%減)の大幅な減少となり、前年同月比で2ヵ月連続減となった。うち民間工事は6,643億6,200万円(同7.7%減)となり、同3ヵ月目で減少に転じた。官公庁工事は2,271億9,000万円(同24.0%減)となり、同2ヵ月連続減となった。

国内工事は8,988億6,100万円(同11.8%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続となった。民間工事の6,643億6,200万円のうち、▽製造業が1,320億8,000万円(同14.9%増)となり、同6ヵ月連続での2桁増が続いた。▽非製造業は5,322億8,200万円(同11.9%減)の大幅減となり、同6ヵ月連続減となった。

官公庁工事の2,271億9,000万円のうち、▽国の機関が1,080億3,100万円(同36.6%減)の大幅減となり、同2ヵ月連続減となった。▽地方の機関は1,191億5,900万円(同7.3%減)となり、同1ヵ月で減少に転じた。▽その他が73億0,900万円(同1,051.0%増)となり、同1ヵ月で増加となった。なお▽海外工事は319億6,800万円(同13.5%増)となり、同1ヵ月で増加となった。

18年度(4~10月)の受注工事総額は7兆7,159億8,600万円(前年同期比5,7%減)、国内工事は7兆4,022億6,400万円(同6.5%減)、民間工事は5兆5,434億4,800万円(同2.4%減)、官公庁工事1兆8,314億0,600万円(同17.5%減)、海外工事は3,137億2,200万円(同17.7%増)となった。

一方、10月分地域ブロック別の受注工事額は、▽北海道410億2,400万円(前年同月比0.8%増)となり、前年同期比では3ヵ月ぶりの増加となった。▽東北732億2,800万円(同29.1%減)の大幅減となり、同3ヵ月ぶりの減少となる。▽関東3,613億4,700万円(同26.9%減)の大幅減となり、同1ヵ月で減少に転じた。▽北陸298億3,000万円(同3.0%増)の微増となり、同2ヵ月連続増となった。

▽中部885億8,100万円(同21.8%増)の大幅増となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽近畿1,559億1,500万円(同2.3%増)となり、同1ヵ月で増加に転じた。▽中国483億2,400万円(同31.9%増)となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。▽四国221億8,700万円(同64.5%増)の大幅増となり、同3ヵ月ぶりの増加となる。▽九州784億0,800万円(同2.2%増)の微増となり、同3ヵ月連続増となった。

10月粗鋼生産856.4万トン(前年同月比4.5%減)
普通鋼鋼材9月建築用52.6万トン(前年同月比4.7%減)

日本鉄鋼連盟が11月21日に発表した2018年10月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼は、前月比では増加したものの、前年同月比では減少した。熱間圧延鋼材は前月比、前年同月比とも増加した。

▽銑鉄生産は628.1万トン(前年同月比4.4%減)となり、前年同月比では2ヵ月連続減となった。▽粗鋼生産は856.4万トン(同4.5%減)となり、同2ヵ月連続減となり、1~10月累計では8,718.8万トン(前年同期比0.1%減)となった。

炉別生産では、▽転炉鋼が631.0万トン(同5.8%減)の同2ヵ月連続減、▽電炉鋼が225.4万トン(同0.9%減となり、同2ヵ月連続減となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が642.9万トン(同6.3%減)の同2ヵ月連続減、▽特殊鋼が213.5万トン(同1.0%増)となり、同2ヵ月ぶりに増加となった。

▽熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は787.8万トン(同0.1%増)となり、同4ヵ月ぶりの増加となった。▽普通鋼熱間圧延鋼材の生産は609.5万トン(同0.5%減)となり、同4ヵ月連続減となった。▽特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は178.3万トン(同2.2%増)となり、同2ヵ月ぶりの増加となった。

9月の普通鋼鋼材用途別受注量による▽建築用が52万5,662トン(前年同月比4.7%減)となった。うち▽非住宅用が36万1,538トン(同7.8%減)、▽住宅用が16万4,124トン(同3.0%増)となった。

2018年上期(4~9月)では、▽建築用が332万1,226トン(前年同期比5.5%増)となり、▽非住宅用が236万1,544トン(同7.4%増)、▽住宅用が95万9,682トン(同1.0%増)となった。

9月溶接材料の出荷量2万0,148トン(前年同月比2.6%減)
18年度上期(4~9月)の出荷量11万9,842トン(前年同期比5.5%減)

日本溶接材料工業会が発表した2018年9月の溶接材料生産・出荷・在庫実績によると、生産量は前年同月比で3.9%減の2万0,392トンの5ヵ月連続減となった。出荷量も同2.6%減の2万0,148トンとなり、9ヵ月連続減となっている。在庫量は1.4%減の1万7,359トンとなった。18年上期(4-9月)の前年同期比では、生産量が5.5%減の11万9,578トン、出荷量が同5.5%減の11万9,842トンとなった。

9月の生産量は、▽ソリッドワイヤ(SW)は8,241トン(前年同月比4.1%減)の同5ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,759トン(同10.7%減)となり、同1ヵ月で大幅減。▽被覆アーク溶接棒は2,451トン(同4.7%増)となり、同6ヵ月ぶりに増加した。その他を含む生産量計は2万0,392トン(同3.9%減)となり、前年同期比で5ヵ月連続減となった。

出荷量は、▽ソリッドワイヤ(SW)が7,805トン(同8.0%減)となり、同8ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,860トン(同4.2%減)となり、同9ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒は2,520トン(同5.0%増)となり、同14ヵ月ぶりの増加。その他を含む出荷量計は2万0,148トン(同2.6%減)の7ヵ月連続減となった。

在庫量は、▽ソリッドワイヤ(SW)が4,540トン(同14.3%減)となり、同20ヵ月連続減。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,557トン(同9.3%増)となり、同11ヵ月連続増。▽被覆アーク溶接棒は3,271トン(同0.1%増)となり、同14ヵ月連続増。その他を含む出荷量計は1万7,359トン(同1.4%減)の同1ヵ月で減少した。

 

【建築プロジェクト】
千日前に移転する新市民会館「岡山芸術創造劇場」
SRC・RC・S造、地下2階地上6階建て、延床面積2万平米

「岡山市表町3丁目地区再開発」に伴い、新市民会館「岡山芸術創造劇場(仮称)」(再開発組合松井宏倫理事長/岡山市)は、2019年3月に実施設計をまとめ、19年4月着工、22年3月の完成をめざし、 22年秋のオープンを予定している。実施設計は竹中工務店が担当し、施工は竹中工務店・荒木組・小倉組・穴吹工務店JVとなる。

同事業の建設地は、市の中心に当たる千日前地区の約8,630平方メートル。市内の中心地でありながら、老朽建築物、空き店舗・事務所、未利用地など歩行者も少なくいとから、都市機能の更新、街のにぎわいを取り戻すことからの再開発計画。

事業推進コーディネーターに都市問題経営研究所、事業協力者にフジャースコーポレーション、特定業務代行者に竹中工務店、荒木組、小倉組、参加組合員として大京、穴吹工務店が参画。再開発事業は劇場を核に店舗、事務所、住宅などで構成され、地下1階・地上27階建て、延べ床面積約2万3,000平方メートルの複合ビル、立体駐車場棟を含み、延べ床面積約3万7,000平方メートルを建設する

岡山市の保留床する劇場規模は、SRC造・一部RC造・S造、地下2階・地上6階建て、延べ床面積約1万9,663平方メートル。1,750席程度の大ホール、800席程度の中ホールのほか、創造支援室(大スタジオ、大練習室、中小練習室、工房、ギャラリー等)、地下駐車場などを備える。保留床取得費は当初よりも70億円高い約235億円となる見込みで、財源は合併特例債の活用などを想定している。

 

【雑論・正論】
甦る「日本橋」の空

東京のシンボル的な名橋「日本橋」は、中央区の日本橋川に架かる石造りの橋。この橋は1911年(明治44)に造られ、長さ49・幅27メートルの2連アーチ橋。橋の中央柱に羽ばたく麒麟、橋詰の親柱は獅子と東京市章が飾られ、橋は<日本の道路元標>になっている。国の重要文化財だが無粋に橋の真上を首都高速道路が走る。

日本橋を覆ったのは1964年東京オリンピックの開催で、羽田空港と都心を結ぶ高速道路網(首都高1号線)完成のため日本橋川に橋脚を建て、日本橋の上空を鋼製橋梁が架けられてから。この当時、<シールド工法>が開発されておらず、短期開通が至上命題ため高速道路地下化にいたらなかった。東海道新幹線の建設や都心部は建築ラッシュで、昼夜問わずの突貫工事が続いた。新聞の紙面は「建設の槌音高く」などの大見出しが躍った。

日本橋は、江戸幕府を開いた1603年(慶長8)に架けられたと伝えられる。東海道、中山道、甲州街道、奥州街道、日光街道の起点のため日本橋界隈は、夏は花火打上げで江戸っ子を沸かせる<華のお江戸>の中心地。魚河岸(市場)も日本橋にあった。関東大震災で壊滅し、芝浦を経て1935年(昭和10)に築地に移転してきた。

現在の日本橋界隈は、橋を挟んで北に「三越」、南に「髙島屋」の百貨店を控え、どちらも超高層ビルが林立するビジネス街に変貌しつつあるものの、江戸時代からの老舗も多く混在し、商店主に江戸っ子の気質も残っている。その地元商店街団体による「日本橋保存会」が国や東京都に対して、<首都高速地下化>の陳情を展開したが工事費の問題などで頓挫していたが、ここにきて国土交通省は20年東京五輪後の着工することで具体化した。

そのきっかけは日本橋周辺で計画している大型再開発事業にあると思われる。再開発とは、「日本橋1丁目中地区」「八重洲1丁目北地区」「日本橋室町地区」「日本橋1丁目1・2番」「日本橋1丁目東地区」である。既存ビルの老朽化と非耐震性を再開発による<住・商・業の一体化>の高層複合化とインフラなど地域環境整備により、日本橋周辺の景観を妨げない形で首都高地下化を実現し、かつ水辺を生かした新たな観光施設も想定している。

国交省の首都高地下化計画は、再開発地区の建築構造体と道路が一体となる<立体道路制度>を活用し、地下化区間を竹橋JCT~江戸橋JCTの約2.9キロとする日本橋川を緩やかなSの字で縫う形で.地下化を図る。

建設期間は最短でも10年以上と長期となり、総事業費は約3,200億円ともそれ以上とも言われている。すでに東京都や首都高会社と本格的な協議に入っているが、再開発事業者の理解と資金協力が大きなカギになる。

【加藤 文雄】