株式会社スノウチ
*スノウチニュースは毎月1日発行です。
編集内容は [1] プロジェクト情報(鉄骨物件)、[2] 鉄骨市況(傾向分析)、[3]あれこれ(話題)等で構成します。
     
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「スノウチニュース」No.148
平成29年3月号

 
   
 

【鉄骨需要月別統計】
1月は43万2,900トン(前年同月比20.6%増)
16年4月〜1月累計433万6,650トン(前年同期比3.2%増)

 
     
 

 国土交通省が2月28日発表した「建築物着工統計調査」の2017年1月着工総面積合計は11,071千平方メ―トル(前年同月比19.8%増)の前年同月比で6ヵ月連続増となり、1千万平方メートルを維持した。▽建築主別では、公共建築物が580千平方メートル(同15.6%増)の同2ヵ月連続増となった。民間建築物は10,491千平方メートル(同20.0%増)と同6ヵ月連続増で、1ヵ月で1千万平方メートル台に回復した。
 ▽用途別では、居住建築物(マンション・住宅など)は6,853千平方メートル(同18.5%増)の同7ヵ月連続増。非居住建築物(ビル・工場・店舗など)は4,218千平方メートル(同21.9%増)と同3ヵ月連続増加となった。
 ▽構造別では、鉄骨系のS造が4,265千平方メートル(同21.9%増)と同6ヵ月連続増。SRC造は128千平方メートル(同30.5%減)となり、4ヵ月連続減。一方、RC造は2,634平方メートル(同61.5%増)の大幅増で、同5ヵ月連続増。W造は4,005千平方メートル(同3.3%増)の同13ヵ月連続増で推移している。
 ▽鉄骨需要換算では、S造が42万6,500トン、SRC造は6,400トンの計43万2,900トン(前年同月比20.6%増)の6ヵ月連続で40万トン台を維持し、前月対比でも4.0%の増加となった。
 16年度(4月〜1月)累計では433万6,650トン(前年同期比3.2増)となっている。S造は425万6,000トン(同3.8%増)、SRC造は7万9,650トン(同23.7%減)となった。

16年1月−17年1月 鉄骨需要量の推移

年/月S造前年比SRC造前年比鉄骨造合計
16/1 349,900 ‐6.3 9,150 ‐9.8 359,050
2 386,100 ‐9.9 17,350 108.5 403,450
3 345,800 -3.2 14,700 -10.1 360,500
4 355,900 −17.9 10,400 ‐60.4 366,300
5 467,400 14.6 17,450 348.6 484,850
6 455,700 1.0 9,550 96.1 465,250
7 391,000 -13.4 4,350 ‐82.3 395,350
8 495,400 18.4 2,400 ‐60.7 497,800
9 439,900 7.4 9,000 92.5 448,900
10 401,400 0.2 5,700 -61.0 407,100
11 415,400 4.5 3,250 -15.7 418,650
12 407,600 7.6 8,700 -41.0 416,300
17/1 426,500 21.9 6,400 -30.5 432,900
(国土交通省調べ)
 
   
 

【鉄骨業界展望】

 
     
 

国交省の討論会で建設多能工論
鉄骨ファブは多能工・複合技術集団

 国土交通省は、「働き方改革」の一環として建設専門検討会で多能工(複合資格)育成などの調査を開始した。建設産業(建築・土木)は下請け孫請け、多業種となる重層産業だけに賛否両論があり、難しい課題でもあるが、多能工の推進が人手不足に対するひとつの切り札でもある。
 多能工、複合資格者でいえば、建設業法に基づく建設工事業(28業種)の「鋼構造物工事業」から「鉄骨工事」へと独立をめざす鉄骨ファブリケーター(鉄骨ファブ)業界では極当たり前の職能になっている。鉄骨製作工程では、さまざまな専門資格が求められるため、ひとりの技能者が複数資格を取得しなくてはならないのである。それは、大臣認定工場(グレード取得・更新・昇格)の必須基準として、生産能力に応じた技能者・技術者確保のために欠かせない資格取得の経緯から必然に多能工化し、そのための教育・育成に力を注いできた。
 しかし、多能工育成には若年層の確保が必要である。中小ファブ(M・R・Jグレード)にとって、難しいのが若年層の雇用と育成(入職や定着)で、工場規模が小さくなるほどベテランの多能工(複合資格)に負うところが大きく、若年層の指導や育成に手が回らないなど切実な問題もある。資格取得は日常業務と並行して講習や受験に応じるため事業者側にも大きな負担となる。なかでも、鉄骨ファブで重視される職能は溶接技能者と検査技術者であるが、このような資格は技量経験が必要であるだけでなく、実技・学科試験が伴うため実技訓練や学科講習を受けないと取得できなく、本人のやる気とかなりの時間と諸経費がかかるのである。

 鉄骨溶接の技能資格は「JISセルフ シールドアーク半自動溶接」と「被覆アーク溶接」(JIS基本級・専門級)である。セルフシールドアーク半自動溶接でも、鉄骨溶接の大半を占めるCO2(炭酸ガス)シールドにソリッドワイヤによる半自動溶接となる。「溶接管理技術者(WES)」2級〜特級も必要で、この資格認定は一般社団法人日本溶接協会(JWES)が行っている。また、鉄骨溶接部の社内検査にはJIS超音波探傷検査(UT)や浸透探傷検査(PT)1種〜特級資格者が求められている。資格認定は(同)日本非破壊検査協会(JSNDI)が行っている。
 上記JWES・JSNDIの資格認証をベースにファブ団体(同)全国鉄構工業協会、(同)鉄骨建設業協会は、鉄骨溶接・検査資格者を対象に「鉄骨製作管理技術者(1、2級)」、「建築鉄骨検査技術者(製品検査、超音波検査)」資格を必須条件とし、資格者数(ソフト)や工場規模(ハード)の点数によって認定工場グレードとなっている。
 鉄骨ファブ業界では工場規模にかかわらず多能工・複合技術者によって成り立っている。なかでもS・Hグレードで働く溶接技能者は、さらに「AW検定資格者」(AW検定協議会認定)を資格が求められる。高層建築や大規模工事に従事するゼネコンからはAW資格がなければ受注できない仕組みになっているのである。

 国交省の建設専門検討会の多能工論について、建設専門業の事業者からすれば「(多能工は専門工に比べ)技能の質やレベルは低く、作業効率も悪い」と危惧する。また、働く技能者からすれば、複数工程に対応できる技能資格を身に付けたとしても、それによって給料や待遇が上昇するといった具体的なメリットがなければモチベーションが上がらない、「苦労して多能工になる意味がない」というのも本音だ。だが、事業者にとっては「諸経費負担をし、資格取得した後に辞められては教育・育成投資がムダになる」と双方に疑問が残るのである。
 この待遇問題や辞めていく問題では、鉄骨ファブ業界も深刻な課題になっている。小規模工場のなかでは資格認証を事業者側で管理し、退職を防ぐことまでしているが労基法抵触する行為である。鉄骨製作の一連の工程をこなす多能工が離職すればグレード維持や受注条件に大きく影響する。そのため待遇改善がされてきたものの、まだ満足した水準とは言えない。
 ある大手ゼネコンが1次協力会社の建築技術者の評価・育成も含め「マイスターCE(チーフエンジニア)」と「シニアマイスターCE」制度を設け、モチベーションやボトムアップの支援に乗りだしている。団塊世代が離職し、ベテラン職人や技能者が減って人手不足が続いていることにも起因した制度だ。技能伝承にも若年技能者がいなければAI(人工知能)やロボット化による無人化システムで対応することで研究されている。鉄骨ファブ業界は自動化・ロボット化が進んだとはいえ、まだまだ多能工・複合技術者の育成と支援制度は継続でなければならない。

東京鉄骨橋梁は4月1日付「日本ファブテック」に
片山ストラテックと経営統合

 東京鉄骨橋梁は、4月1日付で社名を「日本ファブテック」に変更する。片山ストラテックとの経営統合の最終段階と位置付けており、統合の効果を最大限発揮し、企業価値の向上を目指す方針だ。
 新社名の「ファブテック」は、ファブリケーター(製造・加工業)とテクノロジー(技術)を組み合わせた造語。鉄骨ファブ(Fab)と橋梁(Frame and Bridge)という事業の2本柱を表現する意図も込めているという。
 東京鉄骨橋梁は15年12月、清水建設の連結子会社として橋梁・鉄骨事業を共に担った片山ストラテックと、経営資源の集約による競争力・収益力強化を目的に吸収分割契約を締結。片山ストラテックの橋梁事業を16年4月、鉄骨事業を同10月に東京鉄骨橋梁に継承した。今回の社名変更が統合の仕上げとなる。

 
   
 

【建築関連統計】

 
     
 

日建連1月受注額8,853.6億円(前年同月比3.1%減)
16年4月〜1月累計は11兆6,845億円(前年比2.8%増)

 日本建設業連合会(日建連)が2月27日に発表した会員企業97社の2017年1月受注工事総額は8,853億5,500万円(前年同月比3.1%減)となり、1兆円を大きく下回った。うち民間工事は6,226億5,200万円(同7.4%増)と4ヵ月連続増となり、官公庁工事は2,359億5,100万円(同9.8%減)の1ヵ月で減少に転じた。
 国内工事の受注が8,660億3,100万円(同3.0%増)のうち、民間工事は6,226億5,200万円で、うち▽製造業が1,064億8,100万円(同21.7%増)と1ヵ月で大幅増に転じた。▽非製造業が5,161億7,100万円(同4.9%増)と4ヵ月連続増となった。
 官公庁工事は2,359億5,100万円で、うち▽国機関が1,480億9,600万円(同6.0%減)の減少に転じた。▽地方機関が878億5,500万円(同15.6%増)と大幅減となった。▽その他は74億2,800万円(9,302.5%増)の大幅増となる。なお▽海外工事は193億2,400万円(同73.4%減)の3ヵ月連続の大幅減となった。
 なお、16年4月〜17年1月の累計受注額は11兆6,849億9,800万円(前年同期比2.8%増)となった。うち国内受注は11兆4,871億5,300万円(同5.7%増)で、▽民間受注は8兆0,134億4,300万円(同4.4%増)、▽官公庁受注は3兆4,467億1,400万円(同9.1%増)となった。海外受注は1,978億4,500万円(同61.0%減)となっている。
 また、16年12月の地域ブロック別では、▽北海道308億7,800万円(前年同月比146.9%増)▽東北782億4,600万円(同20.2%減)▽関東4,334億2,200万円(同21.2%増)▽北陸479億2,000万円(同42.9%増)▽中部577億6,900万円(同20.7%減)▽近畿1,167億3,900万円(同5.9%減)▽中国275億7,600万円(同30.4%減)▽四国82億5,400万円(同48.9%減)▽九州652億1,700万円(同25.0%減)となった。 地域9ブロックにおいて前年同月比増は北海道、関東、北陸の3ブロックのみ。

1月粗鋼生産900.2万トン(前年同月比2.7%増)
16年4〜年1月累計は8,793.7万トン(前年同期比0.9%増)
12月普通鋼鋼材建築用は57万0,723トン(同12.2%増)

 日本鉄鋼連盟が2月20日に発表した2017年1月の鉄鋼生産は、銑鉄、粗鋼、熱間圧延鋼材のいずれも前月比、前年同月比とも増加した。銑鉄生産は692.1万トン(前年同月比では0.5%増)と、前年同月比では5ヵ月ぶりに増加となった。16年4月〜17年1月では6,704.3万トン(前年同期比0.5%減)となった。粗鋼生産は900.2万トン(同2.7%増)となり、同2ヵ月連続増となった。16年4月〜17年1月では8,793.7万トン(同0.9%増)となった。
 炉別生産をみると、▽転炉鋼は704.4万トン(同1.4%増)で、2ヵ月連続増となり、▽電炉鋼も195.8万トン(同7.6%増)となり、同4ヵ月連続増加となった。鋼種別生産では、▽普通鋼が693.7万トン(同2.4%増)と2ヵ月連続増となり、▽特殊鋼も206.5万トン(同3.5%増)となり、同9ヵ月連続増となった。
 熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)生産は789.3万トン(同3.3%増)となり、6ヵ月連続増となった。普通鋼熱間圧延鋼材の生産は625.3万トン(同3.4%増)と2ヵ月ぶりに増加となった。品種別では、▽条鋼類は151.9万トン(同5.6%増)で、同4ヵ月連続増となった。▽鋼板類は470.0万トン(同2.7%増)となり、同3ヵ月ぶりに増加となった。
 主要品種の生産内訳をみると、▽広幅帯鋼が386.4万トン(同4.9%増)と、同3ヵ月ぶりの増加となった。▽厚板は77.8万トン(同6.8%減)と、同2ヵ月連続減となった。一方、条鋼類では▽小形棒鋼が67.1万トン(同4.4%増)と、同2ヵ月連続増となった。▽H形鋼は31.8万トン(同3.8%増)と同2ヵ月連続増で、▽大形形鋼は6.9万トン(同1.4%減)と同9ヵ月連続減となった。▽中小形形鋼は8.6万トン(同7.4%増)と同4ヵ月連続増となった。特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は164.0万トン(同3.1%増)と9ヵ月連続増となった。
 一方、建築12月の普通鋼鋼材用途別受注量による建築用は57万0,9723トン(同12.2%増)で、うち非住宅用は39万4,931トン(同11.5%増)。住宅用は17万5,792トン(同11.8%増)となった。
 なお、16暦年(1月〜12月)の建築用は651万6,603トン(前年同比0.4%増)で、非住宅用は444万5,576トン(同2.8%減)。住宅用は207万1,027トン(同8.0%増)となった。

12月溶接材料、出荷高2万0,763トン(前年同月比1.8%減)
16暦年出荷高は24万0,345トン(前年比6.6%減)

 日本溶接材料工業会がまとめた2016年12月の溶接材料生産・出荷・輸出実績によると、生産高は前年同月比7.0%減の1万9,420トンと18ヵ月連続減となった。一方、出荷高は同1.8%減の2万0,763トンと1ヵ月で減少に転じた。また、在庫高は7.0%減の1万9,489トンとなった。16年の生産高は前年比7.7%減の23万8,876トンとしなり、出荷高は同6.6%減の24万0,345トンとなった。
 12月の主要品種の生産高をみると、▽ソリッドワイヤは7,299トン(前年同月比6.5%減)で、同10ヵ月連続減少。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,903トン(同7.1%減)で、同4ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒は2,405トン(同5.5%減)と、同1ヵ月で減少した。その他を含む生産高は1万9,7420トン(同7.0%減)である。
 一方、出荷高は、▽ソリッドワイヤが8,232トン(同5.2%増)で、同2ヵ月連続増となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は7,115トン(同2.2%減)と、同7ヵ月連続減。▽被覆アーク溶接棒は2,522トン(同12.0%減)と、同1ヵ月で減少となった。その他を含む出荷高は2万0,763トン(同1.8%減)となった。
 在庫高は、▽ソリッドワイヤは7,132トン(同7.2%減)となった。▽フラックス入りワイヤ(FCW)は6,536トン(同5.0%減)。▽被覆アーク溶接棒は3,180トン(同26.0%減)となった。 その他を含む合計在庫高は1万9,489トン(同7.0%減)となった。

 
   
 

【建築プロジェクト】

 
     
 

日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画
B地区病院・教育施設、C地区ツインタワーマンション

 日本医科大学武蔵小杉キャンパス再開発計画(川崎市中原区小杉1−304−2、小杉町2−298-1ほか)は、JR横須賀線・南武線、東急東横線がクロスする武蔵小杉駅北側に位置する。駅周辺は都心サラリーマン向けの超高層マンションが林立し、同じ多摩川沿いの二子玉川地区と並ぶ人気のベットタウンである。
 小杉町、新丸子町は大規模工場跡地の再開発地区であり、すでに住居・商業・教育・医療施設が備わり都心へのアクセスが良いため開発が進んでいく地域。同再開発は日本医科大学(本部・文京区)の武蔵小杉キャンパス、同大学病院および医科大学のグラウンドを移転するもの。
 同病院を北側のグラウンドに移転させ、病院建て替えに合わせて医科大学看護学部を整備するとともに、病院跡地には三菱地所レジデンスによる地上50階建てのツインタワーマンション、商業施設、高齢者施設などを建設する。さらに大学キャンパスは武蔵野市に移転を予定しており、その跡地には新設の川崎市立小学校施設と約3,100平方メートルの公園が整備される計画となっている。
 再開発は▽A地区(大学施設跡地)に公園・小学校施設(再開発の対象外)を設ける。▽B地区(グラウンド跡地)の敷地面積は約1万3,890平方メートルに、S造・RC造、地下2階・地上9階建て、延べ床面積約6万8,000平方メートル(建物高さ41メートル)。この建物は日本医科大学武蔵小杉病院棟と看護学部棟となる。▽C地区(病院跡地)は三菱地所レジデンスによって計画され、敷地面積は約2万0,120平方メートル▽建物規模はRC造・S造、地下1階・地上50階・塔屋1層建て、延べ床面積約16万3,500平方メートル(同188メートル)のツインタワーマンションに1,500戸(高齢者向け住居含まず)と高齢者向け福祉、高齢者向け住居となり、低層部には健康増進、飲食・物販など複合施設となる。
 同再開発は、当初計画では17年3月着工、23年8月完成の予定が建設需要増や工事費高騰などから2年半遅らせ19年夏着工。25年度完成となった。

 
   
 

【雑論・正論】
新卒者の就活事情

 
     
 

 今春の大卒・高卒者の就職率は昨年並みに推移する。ちなみに昨年の就職率は大卒者が97.3%で、調査を始めた1997年以来最高だった。高卒者は97.7%と6年連続で増加している(文部科学省・厚生労働省発表)。
 ある工学系大学生は「3期生の夏から本格的な就活になる。大学院に進む予定だったが19年度以降は不況による求人率が悪くなるから大学院を止め就職する」という。彼はバブル崩壊後の氷河期(93〜05年)再来を予測し、就職すると決めた。また、今春卒業の高校生は「担任と相談し進学を断念し、製造業に内定を頂いた。国公立や有名私大に入れないのであれば、その4年間を企業内で技能を磨く」と語る生真面目さ。入社する工場は「1年間の研修制度があって、技能取得も可能」という厚遇もあって、4年後の大卒より高卒で実務を磨く道を選んだ。
 両親のアドバイスや学生同士の情報交換で、大学生はもとより高校生でも<20年不況説>が浸透している。誰しもが19年10月実施の消費税10%で内需減や、20年の東京五輪・パラリンピック反動による不況を想定している。政府は25年大阪万博誘致などの起爆剤的施策で景気浮揚を模索しているが、どうやら20年不況説は避けられそうにない。学生が就職事情を先取りし、進学を諦めて安定した企業への正社員を目指す時代なのである。
 この風潮はここ数年前から徐々に浸透している。その要因は正社員と非正規との格差にある。政府は労組に先んじて財界に<賃上げ要請>や、働き方改革で<同一労働同一賃金>を提唱するものの、企業は内部保留を優先し、ベースアップに消極的。ましてや非正規やパートタイマーの賃金改定などはとても難しい問題となっている。
 この現状を学生らは見ている。前述の大学生は「僕は電気工学科。就職先は趣味が鉄道なので私鉄、JRを希望しているが狭き門となっている。先輩からは、希望した企業に入っても半年、1年で辞める人が多いと聞くので、必ずしも希望する職種でなくとも安定した会社で、職場環境が良ければいい。人生設計ができる」と健気な答えが返ってきた。高校生は「機械科卒で、電子機器をつくる工場で働く。担任の教師は、まず人間関係が大事だというが2年間コンビニ店でアルバイトをし、大人の社会(温かさ、醜さ)を体験した。いい経験をした」という18歳である。
 この二人は特別な学生でなく、社会の変化や風潮によって培われた知恵や見識である。政治や社会の動きを冷静沈着に見ているのである。学生運動の激しかった時代では人生設計など考えていた学生は少なかった。昨今、卒業後に奨学金返済が待っているし、無為な学生時代を過ごすより実利的な方向を選ぶ学生たちが増えている。

【加藤 文雄】

 

 
     
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